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「おはよう」

 ネピルの声が耳元でして、僕は目をこすった。

「お、おはよう 」

 僕は起き上がり、やはりこのガラクタ置き場は薄暗いことを再確認した。

 昨日見た白い光の線は美しかった。 ネピルと、まだ寝ているプナキアを誘って、また見に行きたい。 場所は二人に聞かないと分からないけれど。

「プナキアは大丈夫? 」

「まだ起動していないよ 」

 ネピルは左の物陰を指さした。 プナキアが仰向けで寝ていた。

 僕はプナキアを起こさない様に注意しつつ、ネピルに囁いた。

「悪夢や寝言はもう止まったのかな? 」

 ネビルの声はどんどん遠ざかっていく。仕事の支度をしに行くのだろう。

「いや、まだだと思うよ 」

 僕はプナキアの側に腰を下ろした。 心配で、光のない目を覗き込む。 するとパッと目に赤い色が灯った。

 プナキアは、小さな音を出した。

「みんな、で・・・シチュー・・・食べ・・・」



 ネピルは困った顔をした。 その手には青いグローブがはめられている。

 彼はガラクタの中をまさぐっている最中だった。

「本当にそう言ったの? 」

 僕は頷いた。

「僕たちは直接にエネルギーを摂取しなくても、大丈夫なんだけど 」

 ネピルはゴミの中から黄色い塊を取り出した。

 液体状の物質を瞬時に固めて結晶にする。それがこのグローブだとさっき説明を受けた。 それはよほど使い古されているらしく、ボロボロで傷だらけだ。

 僕はネピルが作ったその結晶をいくつかの箱に分類して行く。 仕事の主な内容だ。

「折角ショートが治ったんだから、叶えてあげようよ」

 僕がそう言ってみるとネピルの表情が固まった。頬が引きつっている。 もしかして何か悪いことを言ったかと思い不安になる。

「シチューを知らないよね? 」

「えっ、知らないよ、どうして? 」

 首を傾げた僕に、ネピルは目を逸らした。


資源の屑が分類されてカゴの中がいっぱいになった頃。 恥ずかしい音量で僕のお腹が鳴った。 ネピルがグローブを外す。今日はもう終わりらしい。

「ここって、ご飯はどうしてるの? そのシチューっての、みんなで食べない? 」

「・・・」

 僕はシチューというのを、その辺に生えている木の実だと思った。 色々な具材を煮込んでスープにしたものだと聞かされて、なおさら興味が湧いた。 ネピルはどうも乗り気ではなかったようだけど、必死に頼み込むと折れてくれた。

「じゃあ、材料を持ってくるから。あとは、そうだな、プナキアの主張だと、百合の花もいることになるのか」

 ネピルは「食料庫に行ってくる」と言った。

 ついていっていいかと交渉した。すぐに却下されて終了した。 僕の発言権は弱い・・・。


 僕はプナキアのもとへと向かった。 彼はもうすっかり元気になっていて、僕を見ると嬉しげにくるくると回った。

「ネピルが言っていたんだけど、百合っていうのはどういう花なの? 」

 僕は、問いかけた。

「白い綺麗な、綺麗な花です」

「へー、見たことないから楽しみだな 」

 それもネピルは外で摘んできてくれるだろう。早く見てみたいな。

「・・・ん?どうしたの、プナキア」

 プナキアが僕の顔を穴が開くほど見つめたのが、少し気がかりだった。少し不自然な感じがした。まだショートの後遺症が残っているのだろうか…。

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