30
30どきりとした。
自分の名前も、なんでここにいるのかもわからないだなんて正直に言ったら・・・怪しまれるに決まっている。
「…あ、えっと、す、好きに呼んでほしいなぁ、なんて…」
苦し紛れのごまかしだったが、ネピルはあっさりとした態度だった。
「じゃあ、ステラって呼んでもいい?」
こうして僕は、ステラになった。
わからないことが多すぎるので、まずはネピルからいろいろと情報を聞き出すことから始めた。
「あのさ、ここはどこなの? 」
ネピルはゆっくりと歩き始めた。 案内をしてくれるのだろうかと思い、僕はついて行く。
「うん、一言で言うのは難しいんだけどね・・・まあ一言で言えばガラクタ置き場だよ」
「一言で言ってるじゃないか」
見ればわかるし。
「じゃあ質問を変えるよ。ネピルはここで何をしてるの? 」
聞くとネピルは苦笑いした。
どこもかしこもガラクタだらけだが、 ネピルは、その小さな隙間をうまいこと通り抜けていく。 僕は体のそこらじゅうをガラクタにぶつけて、後を追うので精一杯だ。
「簡単に言うと、仕事をしてる」
どんな仕事なのかと聞くと呆れられた。
「君も仕事をしに来たんでしょ? 何言ってるの 」
僕は仕事をしに来たのだろうか?
僕らは出会ったところからずいぶん遠くまで来ていた。
もう白い光はどこにもない。ぼんやりした霧のような闇が、べったりと空気中にまとわりついているだけだ。ネピルが小さく、今日はやけに暗い・・・と呟くのが聞こえた。
僕は、何かもっと聞くべきことがあるような焦りに駆られて、多くのことを質問した。 仕事の内容、ネピルのこと、プナキアのこと、この場所のこと。ネピルは、一つ一つの質問に、丁寧すぎるほど丁寧に答えてくれた。
まず、ここはゴミの整理所であるらしい。
別の星で出たゴミがここに送られてくる。 しかし、そのゴミの中にはまだ使える資源が挟まっていたり詰まっている時がある。
「ゼリー、ドロップ、それと、もう滅多にないけど、石油の結晶とかね」
ネピルが言う。
「僕とプナキアは、そういった、まだ使えるものをゴミの中から取り出して、元の星に送り返すんだ」
ちなみに、ゼリー、ドロップというのは、固体状のエネルギーらしい。僕はネピルの足音を追いながら、必死に後を追っていた。
「君、もしゼリーがガラクタの隙間に挟まってても、供給してはいけないよ」
「そんなことしないよ」
ネピルは、僕をどう思っているのだろう。
「それで・・・この場所の外はどうなってるの?」
僕は何気ない様子で尋ねた。するとネピルは低い声で答えた。
「いいかい?君はここに仕事をしにきた身なんだ。この場所の外なんて、知る必要がないことだ」
僕は、ネピルの目が鋭く尖ったのを見た。それには有無を言わさぬ力があった。なんとなく怖くて、質問を諦めた時、左方面で爆発音がした。
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