ユア

隊列はぴったり整っている。俺たちは市場のパトロールに来ていた。

 そんなに飲んでいなかったはずなのに、アルコールがまだ抜けない。

元々人間の孤独を解消するために作られた種類の俺は、人間と共に楽しい時間が過ごせるように、酔うことができる作りになっている。それだけは人間に感謝したい。酔うと、嫌なことは束の間忘れられる。

 ふと動物の気配を感じた。思わず振り向くと、うずうずした興奮が蘇ってきた。三人で暮らしていた頃は、よくデルタと狩猟をしたものだ。そう、まだあの頃はデルタも俺を邪険にはしなかった。

 デルタの背中をチラッと見た。俺はこっそり隊を抜け出し、動物の気配のする方へと歩きだした。

 かつて人間達によって栄えていた市場は、ボリジンのための街へと変わりつつある。といっても屋台などの元々のつくりはあまり変化していない。風景で変わったのは、屋台の中にビルが混じったことぐらいか。街は、まあまあ長い森を抜けた先にある。ボリジンの住む世界だ。

 金属でできた頭の持ち主たちが、強さと金のために生きる街。決して望んでいなかったはずなのに、人間のようになってしまった連中の集まり。俺は入り口の看板の後ろで、待ち伏せに身を潜める。動物の気配がどんどん強くなってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る