素晴らしい世界
Lie街
1Welt 「ふわふわくん家」
不破君はどうやら明日世界を滅ぼすらしい。
「だから、君にはここにいてほしいのだ」
大きなおもちゃ箱を指さしながら、不破君は嬉々としてそう言った。
僕は不破君の話をなんとなく聞き流しながら、彼の指先とそこについている丸い爪を見つめていた。
彼は僕の背中をグイグイと押して、そのまま箱の中に詰め込んだ。こういう時の彼は何を言っても伝わらないし、聞き入れようとしないのだから、足掻くだけ無駄なことは昔から知っている。
僕は箱の中でただじっとしていた。箱の中は雑多でごみごみしていたから、じっとせざるをえなかった。
少女の人形と目があった。その少女は最初は無表情だったのに、だんだんと口角が上がっていっているように思えた。奇妙だった。
僕はとりあえずその少女の目を見たくなくて、目を瞑った。その内に眠いってしまったらしく、次に目を開けたときにはもう世界は終わっていた。
辺り一帯には、もう何もなかった。不破君が持ってきてくれたマットレスの上に座っていると、広大な食パンの上に座っているような感覚になった。
「どうだ、ヨウヘイ」
「まぁ、うん」
特に感想はなかった。偶に見ていたバラエティー番組が、いつの間にか放送終了していた時と同じ気持ちだった。
僕は大きく息を吸った。肺が空気で満たされていき、それが限界に達したとき、勢いよく吐き出した。それを3度繰り返した。そして、空気は前よりもおいしいよと言った。
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