サイエンス部員の狂行

ミンイチ

第1話

 とある梅雨の雷雨の日、窓から外を見ていた天才は思いました。


 雷で演奏したら楽しそうだな、と。


「と言うわけで後輩くん、一緒に雷で音楽を作ろう」


「何が『と言うわけで』ですか先輩。

 いつもみたいに装置を作ったとしてもどこでするんですか。

 あと、天才って誰なんですか」


「無論、ここ──つまり学校のグラウンドだ。

 そして、天才とはこの私のことだ。

 ついでに言うと、その装置もすでに完成している」


 先輩は後ろの物体にかけてある黒い布を一気に剥がそうとした。


「ふぎゃ」


 失敗した。


 機械は壊れなかったものの、先輩は布に引っ張られて倒れてしまった。


 先輩の身長では布を上から剥がせないので、布がどこかに引っかかったのだろう。


「こ、これが演奏用雷発生装置だ!」


 そんなことを気にしないで先輩は装置の説明を続ける。


「この装置を使えばこのグラウンドに大量の雷を降らせることができるのだ!」


「音階は?」


「そこはまぁ、動画の編集で…」


「じゃあ、動画を撮るために使う雷が近くに落ちても大丈夫なカメラは?」


「作る!」


「最後に、先生からの許可は?」


「とってくる!」


 そう言うと先輩は生徒指導部の部屋に行った。




「怒られた……」


 いつも通り、先輩は無許可で行おうとしていたことと昨日の夜の勝手に行なった実験のせいで怒られた。

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