擱筆記

井蛙

蝅食

現場が近かったので、昼休憩の時とかによくそのコンビニに車停めて弁当食べたり昼寝したりしてました。いちばん端の駐車スペースはいつも日陰で、灰皿も近くて穴場なんすよ。そんなことはどうでもいいんすけど。んである時ね、昼寝から目が覚めてふと隣の車を見てみたら、車内がなんか白っぽいんすよ。窓ちゃんと開けないで中で煙草吸ったみたいに。んでそん時はあまり気にしなかったんすけど、その日から毎日ずっとその車は同じ場所に停まってて、しかも見かけるたびに白くなってくんすよ。車内が。もうその時点で結構不気味なんすけど、ある時偶然、初めて見た時から1ヶ月経ったかどうかって時に、その車の横しか空いてなかったからそこに停めて、何買おうかなあとか思いながら車降りて、ついでにちょっとその車の中を覗いたんすよ。そん時にはもう車内は真っ白だったんすけど、そこで初めて気づきました。それ煙とかじゃなくて、糸だったんですよ。蜘蛛の糸みたいのが車の中でみちみちになってて、それがもう、今思い出しても鳥肌もんなんすけど、ほんとに気持ち悪くて。それで、あ、はい。え。羽化の瞬間すか。それは見てないすね。あれやっぱ蛹だったんすか。監視カメラの映像観たいです。これ。えっと、どれどれ。あ、車の、屋根が、うわ。うわうわ。まさにもぞもぞもぞって感じっすね。這い出てきて、そんで、う、おえ。はあ。でもまあなんとなくこうなるだろうなあとは思ってましたよ。えだって窓から中覗き込んだ時、目合いましたし。え、はい。糸の隙間から手ってか脚?が伸びてきて、がってかき分けてこっちを見てきたんです。そんでそん時にはもうほぼできてたんでしょうね。脳とか体とか。なんで、あれっすよ。顔覚えられちゃったらしくて、んでなんか怒ってるんすよ。育ってる邪魔しちゃったからすかね。うち3階なんすけど、あいつら空飛べるじゃないですか。なんでもう夜通し部屋のすぐ外でうるさくて。窓もばんばん叩くし。

















なんでもうこれ以上あいつらのことニュースとかネットとかで言わないでくれませんか。あいつら、全部おれのせいだと思ってるんで。

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