可愛ければどうでも良くなってしまった件。

七星北斗(化物)

1.入学式

 俺こと真時芽尚まときめなおは、今日から青羽琉アオハル高校一年生だ。


 幼馴染みのカワイカサ、略してサワも、同じ学校のクラスメートだ。


 そういえばコイツ、俺以外と喋ってるとこ見たことないな。


 俺以外の友達がいないんだろうか?まあ、性格に難ありだから仕方ないか。


 僕、川井傘せんしょうかさは、幼馴染みのマジメナオ。略してマメオと、晴れて高校生になる。


 どうしてあだ名が、マメオなのか気になることだろう。大した理由ではないんだけど。


 この間まで、僕よりもちっこかったからそう呼んでいた。しかし僕をすぐに追い抜き、チビッ子扱いしてくるんだ。本当に忌々しい。


 今日は、入学式。隣で寝ているサワを横目で見ながら、校長のずらがズレていることに気づき、それが気になってしまい。話がまったく頭に入らない。


 あ、、、、ズラが落ちた。校長は、絶望的な表情をしていたが。しかし式辞を中断させることなく、述べる。この人、プロだ。


 腹の底から失笑が込み上げるのを抑え、心から称賛する。


「クッ、ふふふ」


 誰だ、今笑った奴。隣を見れば、サワが、ケラケラと笑っていた。何て、失礼な奴なんだ。


 起きるタイミング最悪だし、もう少し寝てろよ。


 校長は、真っ赤な顔をして、逃げるように壇上から去った。後ろ姿が切ないぜ。


「帰り、Nバーガー寄ろうぜー」


「サワのせいで、俺まで怒られたじゃないか。疲れた、帰る」


「怒るなよ~。奢るからさ。マメオの好きなトッピングしていいんだぜ」


「ソンナモノで、俺が釣られると思うなよ」


 はい、すいません。釣られました。


「おい、マメオのクセに店員の胸ばっか見てんじゃね~よ」


「見てねーし。あんまりそういうこと大声で言うな、視線が痛いんだよ」


「そういうことって何だよ。マメオは万年発情期の助平だな」


「うるせー、バーカ、バーカ」


「他のお客様のご迷惑になりますので、もう少しお静かにお願い致します」


「はい、すいません」


「怒られてやんの、草」


 くそ、腹立つ。


「うわぁー、あの娘可愛い」


「一緒にいる人、彼氏かな?」


「チッ」


 またか、コイツと一緒にいると、いつもこうだ。


「マメオ君、怒らないでよ。ほら、あーんしてやるからさ」


 サワの細い指には、フライドポテトが一本。グイグイと顔に押し付けられた。


 コイツ、男だぞ。たぶん。


 しかしサワは、女子の制服を身に付けており、ショートカットの美少女にしか見えない。


 だからこそ、タチが悪い。せめてこの煽り癖さえなければ、見てる分には悪くないんだが。


 両親同士の付き合いがあり、ずるずると腐れ縁が続いている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る