第2話 時は金なり②

最初に目に入った色は紫色だった


普通森や木は綺麗な緑色をしているはずだが


俺の視界には霧と紫の木々だった


「…………………………」


人は本当に驚くと逆に声が出なくなるのだと初めて知った


ぽかんと開けた口をゆっくり閉じて落ち着こうとする


でもそんなのを世界は待ってくれなかった


この時からすでに俺の新しい人生が始まっていたんだ


誰も説明もしてくれないこの世界で


たった一人で生きていく


でも当時の俺はそんなことは考えていなかった


俺が今いる場所を調べようとしていた時に、人の声がした


それも叫び声だ


大きな山が見える今よりも深い森の中だ


俺は一人の恐怖よりも誰かに会いたいという思いでいっぱいだった


すぐさま走り出して声がしたであろう方向に向かう




「うぅ...ごっ...ごめん..なさ」


最初耳に入ったのはそんなセリフだったと思う


運のいいことに俺がいるその場所は3メートルはある崖の上だった


人間らしき人と見たことのない2足歩行の化け物がいた


そして悪臭が俺の鼻を強く歪ませた


「う……」


とっさに鼻をふさぎ臭いの侵入を防ぐ


だが目の前には悪臭よりひどい光景があった


化け物に人間が殺害され、女性らしき人物が犯されている


あったことも話したこともない女性だが可哀そうに思えた


だが今の俺には何もできない


よくその惨状を見てみると、女性以外に男がいない


すでに殺されたのだろうか


よく見ると人間の女性もコスプレしているように見える


奇抜な色をした服を身にまとっているし、杖や剣といったものが見える


まさかと思うがここは”そういう”世界なのか?


よくある全く次元が異なる世界に行くというあれか


この世界ついてだんだんわかってきたように感じたとき


ふと一匹の化け物が大量の財宝を運んでいるのが見えた


そいつが洞窟に入っていこうとしていた


この時何を思ったのか俺はその財宝が欲しくなった


自分でも自分のやろうとしていることの危険性に気づいていたのに


当時の自分は好奇心が勝ったんだ






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