SS ポコット村の顛末
※ この話は4話の直後の時系列です(三人称視点)
◆
あるところに、いたずら好きなインプがいた。
インプは森の中である少年を見かけた。
少年の名はジル――近くの村の子供だった。
ジルはなにやら不思議な首飾りをしていた。
インプは、その首飾りに一目ぼれしてしまった。
どうにかあの首飾りを自分のものにできないだろうか、そう思ったのである。
インプは、少年が一人になるのを待った。
ジルは森の中で一人、剣の素振りをしていた。
そこにインプが現れた。
インプは首飾りを奪い取ろうと、ジルに襲い掛かった!
「キキキ……!」
「わ……!?」
しかし、ジルにはなにか不思議な力が宿っていた。
インプの攻撃は、その不思議な力によって阻まれてしまう。
そう、ジルには親であるアルトから受け継いだ世界樹の加護があった。
「この……!」
「キ!?」
ジルは剣でインプに反撃した。
インプはたまらず逃げ出した。
「キィ……」
首飾りを得られずに、落胆するインプ。
しかし、いつかはチャンスがあるのではないかと、目を光らせるインプなのだった。
◆
あるところに、世界樹であるセカイを斬ろうとした村人がいた。
「よし、じゃあ斬るか」
しかし、彼が世界樹を切ろうとしたそのときである。
森の奥から、どこからともなく狼たちがやってきた。
そして狼たちは木こりに立ちはだかる。
「ガルルルルル……!!!!」
「い、いったいなんなんだ……。わかったよぉ……この木は切らないから……許してくれええ!」
木こりはしぶしぶ、世界樹を切ることをあきらめた。
そして、あてもなく森の中へ消えていった。
「くそう……あの木は丈夫そうだから、ずっと育つのを狙っていたのにな……。いったいなんなんだあの狼たちは……」
その一部始終を見ていた者があった。
それは、いたずら好きの魔物――インプだった。
インプはいたずらを思いついて、木こりのおじさんの前に現れた。
「キキキ……!」
「わ……!? なんだ……!?」
インプは驚くおじさんに向かって、手招きをする。
「ついて来いっていってるのか……?」
「キキキ……!」
「よくわからんが……ついていってみよう……」
おじさんは不審に思いながらも、インプのあとを追った。
するとそこには、目を見張るほど大きな木があった。
とても丈夫で、良質な木だ。
「おお……! これは……! さっきの木ほどじゃないが、この木もなかなかだな……。お前さんはこれを教えにきてくれたのか?」
「キキキ……!」
「ありがとうなぁ……。いやぁ、魔物にも親切なやつがいるもんだ。どれ……さっそく切るか」
木こりは木に向かって、思い切り斧を振り下ろした。
そのときだった。
木はいきなり振り向いて、木こりに牙を剥いた。
それは木ではなく、木の形をした魔物――トレントだったのだ!
「ゴオオオオオ!!!!」
「わああああ……!? トレント……!? ひぃ……くそあのインプめ……! 騙したな……! にげないと……!」
木こりは村まで逃げた。
村にはたくさんの手練れがいたから、なんとか助けてもらおうと思ったのだ。
とくに、村には英雄とうたわれたアルトがいる。
だが……。
トレントは思ったより数が多かった。
怒ったトレントは手が付けられない。
大木ほどの大きさの魔物が暴れるのだから、それはもう酷いありさまだ。
村は一瞬で壊滅状態に陥った。
アルトも戦ったが、もはや村を放棄するしかなかった。
「っく……このままでは……いけない……!」
アルトはジルを連れて、村人たちを集めた。
村人たちを保護して、逃げることにしたのだ。
村を守るよりも、村人たちの命を優先した。
「村なら破壊されても、またやりなおせる……。だから今は逃げよう……! このままでは人的被害が拡大してしまう……!」
村長は最後まで反対したが、なくなく村をあきらめた。
逃げるとき、ジルはこけてしまう。
なんとあのインプがこっそりと、足をひっかけたのだ。
その拍子に、ジルの首飾りのひもが切れて、地面に落ちてしまった。
「あ……! 首飾りが……!」
「なにをやってるんだジル……! はやく逃げないと……!」
「う、うん……!」
ジルは首飾りをあきらめて、そのまま去っていった。
残ったインプは、作戦成功とばかりにその首飾りを拾ったのだった。
================
【あとがき】
カクヨムコンように新連載をはじめました
もしよかったら読みに来て応援してもらえるとうれしいです
マイクラみたいなスローライフクラフトものです
↓
過労死した社畜OL、ゲーム内のエルフに転生して無限の寿命とチートクラフトを手に入れたので今度こそ自由に生きたい!~趣味にものつくりに、のんびり森で【もふもふ】と【スローライフ】な日常を希望します~
https://kakuyomu.jp/works/16817330667619768385/episodes/16817330667620006444
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます