第72話 ドライアド誕生(上)
【子供に関する設定を改稿してあります。エルフと子供を作るのではなく、主人公が一人で産んだことになっています。改稿部分についてはしるしがしてあります。】
◆
ある日のことだ。
なんだか俺の根っこのほうが、むずむずする。
まるでくしゃみでも我慢しているかのような、そんな感覚だ。
もしくは、足がつったときのような感覚、あるいは、足がしびれたときのような感覚。
とにかく、普通じゃないような痛みが俺の根っこを襲う。
「うわああああ!」
蒸れた靴下で、足がかゆくなったときのような感覚でもある。
俺はまるで蒸れた靴下を脱ぎ捨てるかのように、あるいは、寝起きに大きくあくびと伸びをするような気持ちで、根っこを地面の中からずぼっと出した。
根っこはこれから焼かれるタコのように暴れる。もはや俺でも制御不能だった。
すると、だんだんと根っこが膨らんでいくような感覚があった。
根っこは大根のように膨らんでいく。
おいおい……どうなってしまうんだよ俺の身体……。
すると、エルフたちがやってきて、俺に思いがけない言葉を放った。
「セカイ様、おめでとうございます!」
「はぁ……!? なにが……!?」
「セカイ様、ご懐妊でございます!」
「えぇ……!?どういうこと……!?俺、ママになるの……!?」
「そうです。セカイ様はママになるんですよ!」
「えぇ!?マジで……!?」
ちょっと言っている意味がよくわからない。
だけど、俺の根っこはどんどん膨張していき、まるで妊婦の腹のようにぱつぱつに張っていた。
ママになるっていう言い方にも少し納得ができる。
これ……どうなるんだ……?
すると今度は、とかげが尻尾を切るように、俺の根っこがちぎれてしまった。
「えぇ……!?」
ちぎれて地面に落ちた、その膨張した根っこは、こんどは自力で立ち上がり、歩き出した。
根っこの膨張した部分から、べつの細い根っこが手足のように生えている。
そして、根っこは二足歩行で俺のもとへ歩いてくる。
俺は、気持ちよく排泄をしたあとのようなすがすがしい気持ちと、脱力感に襲われる。
さっきのは、なんだったんだ?
自立した根っこをよくみると、目と口、それから鼻のようなものまでついている。
これは……?
しばらくすると、さっきまで木彫りの人形みたいな見た目だった、ドライアドが、光を帯びて、変化しはじめる。
無機質だった木の肌質が、まるで人間みたいに作り替わる。
ドライアドは、あっという間に人間の少女のような見た目に成り代わった。
どことなく、エルフに似た感じもあるけど、人間形態の俺の顔にそっくりだった。
ドライアドは二匹いて、まるで双子のように似ている。
「セカイ様、おめでとうございます!お子さんがお生まれになりましたね!」
「えぇ……!? これ俺の子供なの!?」
「そうです、世界樹の中に魔力が大幅に溜まったことで、ドライアドが誕生しました」
「これがドライアド……」
どうやらエルフの話によると、俺の中に魔力が溜まったおかげで、子供が誕生したそうだ。
ここ最近、俺は魔力をチャージするために、世界樹の身体に戻っていた。
そのせいで、ドライアドが誕生したというわけか。
あ、じゃあ俺はもう人間の身体を作り出せるということかな?
俺はさっそく、人間の身体に戻ろうとした。
魔力で分身を作り出し、俺は人間の肉体に戻る。
「うん、久しぶりだけど、やっぱりこのほうが落ち着くな」
人間の肉体は前世からの付き合いだ。
世界樹の身体も悪くはないけど、やはり俺は人間のほうが生きてるって感じがするし好きだ。
世界樹の身体は大きすぎて、自他境界もあいまいになるような感じがする。独立した個というよりは、世界の一部、大自然に取り込まれたような感覚になるのだ。それはそれで、一種の瞑想状態というか、すごく達観した、さらに上の次元の思考を得られるのだが……。人間の身体は、等身大の俺自身、個という感じがするから、こっちのほうが好きだった。
さっそく人間の身体になった俺のもとへ、生まれたてのドライアドたちが駆け寄ってくる。
ドライアドは二人いて、どちらも俺の膝丈くらいの大きさだ。
二人はまるであんよをする赤子のように、俺の元へ駆け寄ってきた。
「「ママー」」
「おお……!? ママって、俺のことだよな……。おお、よしよし」
俺はドライアドたちを優しく撫でる。
なんだか自分に似ていることもあってか、すごくかわいらしい。
「セカイ様、さっそくお二人にお名前をつけてはどうですか?」
「名前か、そうだなぁ……。じゃあ、セツナとココロにしよう」
「セツナー!」「ココロー!」
二人はそれぞれ、うれしそうに自分の名前を呼んだ。
俺はそれから、二人を街のいろんなところへ連れていって、一緒にすごした。
「それにしても、この俺がママか……。まだ童貞なのにな……トホホ……」
でも、この二人の少女には、とても深い愛情を感じる。
これから、この国とともに、この二人の可愛い子供を守っていこうと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます