セミの一生を超ドラマチックにしてみた。

与野高校文芸部

セミの一生を超ドラマチックにしてみた。

 みんなは夏といえばなにが思い浮かぶだろう? 夏祭りやかき氷等々……でも僕が一番に思い浮かぶのはこれだ。

『セミ』

 断言してそう思う。だが、みんなは『ミンミン鳴くうるさいやつ。』とか、『死んだと思ったら生きてて心臓止まりそうになったやつ。』などそんなところだろう

 だが、実際のセミはどんな気持ちでやかましい音を出し、どんな気分で死んだふりをしているのだろうか?

 この物語は僕なりにセミの一生をドラマチック(自称)に書いたものである。


 現在は、2月の半ばあたり……ところどころに雪があり、冷たい風が吹いていたころ……。




 やぁ、みんな! 僕はただのセミ! 「名前ないの?」とか聞かれるけどないものはないんだ。誰から生まれたのかも知らないよ。みんなそんなものだもん。だって、気が付いたころには地面の中だし今だって右も左も上も下も土に覆われているしね。


「はぁ……窮屈だなぁ……。」


 この通り、地面の下の生活はとてもじゃないけど窮屈。え? 「外に出ればいいじゃん。」とか思ってるでしょ。出たら、寒くてたぶん死ぬね。実際、真冬に出たとかいう馬鹿がいたらしいね。まぁ、彼はいいやつだったよ(笑)。


「あと7ヵ月くらいかぁ……暇だなぁ。」

「外の世界ってどんななんだろう。」


 地面に隙間なんてほとんどないから僕は外の世界の景色を全く知らない。隙間風が何度か吹いてくるけれど、肌寒く感じるものだけで全然気持ちいいものとかではなかった。


「いつまで此処にいればいいんだろう……寒いなぁ……寂しいなぁ……。」


 僕はそんなことをたびたび呟いていた。当然だ。肌寒いなかでたった一人地面の下のちょっとした空間にいるのだ。そして、僕はまた寝た。

 やぁ、みんな! あれから、5か月半くらいの月日が経ったよ! 周りの空気はもう暖かくなって気分サイコー! 地面を通じて感じた変な重み……多分、雪っていうやつなのかな? あれが消えたからもう外に出れると思う!


「お、掘れる掘れる!」

「見えた! て暗っ⁈」


 外は真っ暗闇。こういうときに気をつけなきゃいけないのが鳥だ。鳥に襲われたら最後……死しか待ってない。だから、気をつけなきゃいけないんだけれど僕たち遅いからなぁ……死んだらまぁ、ドンマイってことで(笑)。


「よぉ、同志!」

「あ、君は! 外に出ようとしたけど地面が固すぎて出るのに時間が掛かった君!」

「なんだよその名前⁈ まあ、いいや。精々喰われないように頑張ってくれよ!」


 友達はそこら中にいるんだ! 彼は僕の近くに偶々いたんだ! これが最後の会話になるかもしれないけれど僕たちセミはこういうことが当たり前と考えて生きているんだよ。

 木まで登るのに他の虫や動物に食べられたりしたらそこで終わり……そういう人生……いや、虫生か。


「さて、さっさと登ろ。」


 やぁ、みんな! 木の上に何事もなく登りきれたよ! そして今は人間が言う羽化ってのをやっているよ! 夜中だからちょっとはわかりずらいけど食べられちゃう仲間もいるんだ……。そして、こう話している間に無事出れました! でも、出れたばかりだと翅はとっても短いの。だから、しばらく待つ‼


「また暇だなぁ。」

「仲間たちも僕と同じ気持ちなのかなぁ……?」


 そしている間にだいたい一時間ぐらいが経ちました。そして!


「おっ、翅伸びた!」

「て、もう飛んでる仲間がいる! 僕も早く飛び立ちたいなぁ……。」

 そうして朝日が昇ってきたころには僕のボディは自分で言うのもあれなんだけれど、とてもきれいな焦げ茶色の翅になり、体の部分は炭のような黒色に変色したよ。

 今の姿の僕を人間たちは『アブラゼミ』って言うらしいね。


「さて……それじゃあ相手を探しに…………。」

「僕っ! いっきま~す‼」


 やぁ、みんな! 今僕は、さっき羽化した木からちょっと離れた場所の木につかまっているよ! え、なんで場所を変えたって? それはね……。


「俺のビートを聞けエェェェェェ‼」

「てめぇの雑音かき消したらアァァァァァ‼」

「喧嘩上等! あんたの音を消してやるぜエェェェ! イエェェェェェイ!」


 まぁ、こんな感じ(笑)。


 僕を含めたセミたちは雌をゲットするのに命かけてるからね。これくらいはふつうなんだよね……。人間たちからは五月蠅いだとか言われてるけど仕方ないんだよね……。


「ま、五月蠅い奴らはほっといて僕だけで音出しとくかぁ……。」

「あの……。」

「ん、どうかしました?」

「そ、その……好きです!」


「……ゑ?」


 やぁ……みんな……いきなりで悪いけれど僕もう死にかけ! え、彼女はどうしたのかって? まぁ……ヤルことヤッて僕たちの子供たちを産んだらもう向こうの世界に行っちゃったよ……。


「ああ……僕ももう死んじゃうのか。」

「あの娘、とってもやさしかったなぁ……。」


「次に会うのはあの世だけどね……。」


 僕のお父さんやお母さんも同じ気持ちだったのかなぁ……? この一か月……長いようで短かったな。人間たちも同じなのかな……にしてもきれいだったなぁ。


「人間たちと出会えたのがたった一か月くらいだなんて……また、寂しくなりそうだなぁ……。」

「そろそろ……寝るか……子どものころみたいに……。」


 じゃあね……人間たち……一か月くらいの短い間だけだけれど、ちょっと楽しかった。人間たちが創ったものをみるの面白かったなぁ……にしても、あいつ大丈夫かな……?


 外に出ようとしたけど地面が固すぎて出るのに時間が掛かった君……。






 やぁ、みんな! 僕はただのセミ! 「名前ないの?」とか聞かれるけどないものはないんだ。誰から生まれたのかも知らないよ。みんなそんなものだもん。だって、気が付いたころには地面の中だし今だって右も左も上も下も土に覆われているしね。


「はぁ……窮屈だなぁ……。」


 この通り、地面の下の生活はとてもじゃないけど窮屈。え? 「外に出ればいいじゃん。」とか思ってるでしょ。出たら、寒くてたぶん死ぬね。実際、真冬に出たとかいう馬鹿がいたらしいね。まぁ、彼はいいやつだったよ(笑)。


「あと7ヵ月くらいかぁ……暇だなぁ。」

「外の世界ってどんななんだろう。」


 地面に隙間なんてほとんどないから僕は外の世界の景色を全く知らない。隙間風が何度か吹いてくるけれど、肌寒く感じるものだけで全然気持ちいいものとかではなかった。


「いつまで此処にいればいいんだろう……寒いなぁ……寂しいなぁ……。」


 僕はそんなことをたびたび呟いていた。当然だ。肌寒いなかでたった一人地面の下のちょっとした空間にいるのだ。

そして、僕はまた寝た。

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