取材記録2

【翌日】


 2週間後、電話がかかってきました。役所や公的資料の確認、検査などが終わったようで、あの子は私の子ではないことがわかりました。

 ただ、また奇妙な事実が見つかったとのことで再び聴取を受けました。早速署に向かいます。


「捜査の結果、あなたの供述が概ね事実であるとの確認が取れました。瓶からはあなたの指紋も採取できなかったため、疑いは晴れそうです」


「それはよかったです」


「ただちょっと奇妙なことがね……。電話でも少し触れられたかとは思いますが」


「なんですか?」


「DNA鑑定の結果、あなたとあの赤ちゃんは血縁関係でした」


「え」


「いつかはわかりませんが、お母様はもう1人お子さんを産んでいたんです。これについて聞いたことは?」


「いえ、全く。でも、なら出生届とかは役所に届けられると思うんですが……」


「それがどうもわからない。というより出てこないんですね。こっちでも結構入念に捜査したんですが」


「その子は今社会的にどういう身分になってますか?」


「無戸籍に当たります。日本にだいたい1万人くらいいます。親の怠慢や環境の不遇など様々に原因はありますが、何よる困るのはそのお子さんです。その子は諸々の控除、保証から外されます。例えば口座が作れませんので真っ当な仕事には就けません。ほとんどは苦難の人生を歩みます。といっても今回は死亡という例ですが」


「死産とか中絶とかの届出は出てますか?」


「そちらの書類も現状、確認できないままでいます。よって現状その赤ちゃんが死産か中絶で亡くなったのかすらわかりません。国はその子が産まれたことも亡くなったことも知らないのですね。悲しいことに」


「捜査は今どういう状況ですか」


「瓶からはお母様の指紋のみが採取できました。もう少し詳しく調べて疑いがなければ、あなたのお母様は遺体遺棄の被疑者となります。ただし遺体遺棄の公訴時効は通常3年で、この場合争点となるのは――」


 それからの会話はよく覚えていません。すみません。

 話半分、私は呆けるばかりでとりあえずその日はまたホテルに戻りました。

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