不思議な話

まるま堂本舗

誘導瞑想を受けた話

 平凡な日常を送っているようで、生活していると何とも説明できない話を体験することがある。それが、「今思えば、不思議だよな」と思うのだが、他人に話すと大半の人が興味がなかったり信じなかったり。テレビや著名人が言うと信じるんだよ。変だよね、あれって。

 この「不思議な話」とタイトルを付けた作品には、ワタシが体験したことを連載していくが新たな体験をした場合、追加で書いていこうと思う。なので、一応、不定期連載。更新が数年先のことも十分ありえるわけで。



 初回は、こんな話。10数年前、知り合いのタイ式マッサージ店で「誘導瞑想モニター募集」があった。

 当時、マインドフルネスという今起きていることに集中して余計なことを考えないといった言葉が流行りそれには瞑想が効果的と言われていた。個人的に瞑想を試していたものの居眠りで終わったり、別手法の一定周波数の音響効果によりヘミシンクで瞑想状態や体外離脱から自己を見る?みたいなことを友人から聞いて試したことがあった。しかし、ヘミシンクはワタシは頭痛がひどく、友人は幻聴が続いたので合わないということでヘミシンクを聴くことは止めた。

 そもそも、なぜ瞑想といったことに興味を持ったかといえば、当時、ストレス過多から心身共に絶不調だったので、精神安定にはどういうことが自分自身に合うのだろう?と模索していたため。


 誘導瞑想を申し込んで、実際受けてみた。モニターなので、事前説明も確か長かったと思う。目的として過去世からの記憶が現在に影響を及ぼしているという考え方があるそうで、モニターは誘導瞑想から過去世を知ることが出来るか、またその風景映像が浮かぶのか等、試しながら、お店側は誘導の仕方を探り、実際に深層心理を知る、過去世の記憶がトラウマとして現在に影響しているのか、段階を経て調査する。

 なので、モニターの第一段階は、過去世にたどり着けるかという所だと思われる。


 誘導瞑想を受ける前の個人的な印象。半信半疑で、胡散臭さもあった。しかし、どうなるんだろうという興味や好奇心もあった。


 そして、始まる。言葉通り、誘導瞑想は言葉による誘導を受けながら、瞑想状態に入っていく。確か導入は少し背もたれが倒されたソファーにゆったり座り、足は台座に乗せる。その状態から、深呼吸を言われた通りに合わせていき、そこから、頭の中で思い浮かべる誘導が行われる。


 そよ風の吹く草原の丘に佇んでおり、その青空に大きなスクリーンが現れ、そこに過去世が映し出される。

 こんな感じだったと思う。言われたままの思い浮かぶ光景は、とても現実のようで色使いが鮮明だった。

 誘導されるまま、過去世とされるワタシの幼少期~成年期~晩年を思い出させられる。


 ワタシは、子供の頃、どこかに預けられる。託児所のような場所で、たくさんの子供たちがいた。同じ服装をさせられ、座って話を聞く。それから家に帰ることはなく、見知らぬ子供たちと生活をすることになった。

 ある程度成長し、鏡を見ると、丸坊主で黄色い袈裟を着ていた。「あ~出家したんだ」とこの時理解した。


 それから、誘導により年数を飛ばされる。


 10代半ば頃、お祝い儀式に参加する。ワタシは、柱から飾り付けが伸びる石畳の上で、おめでたいことのようで手を上げ拍手していた。周りの人々も花びらを撒いたり、太鼓やシンバルのような楽器が鳴り響き、中央台座には頭に円錐形に似た被り物をした男性が黄金のようなキラキラした服装をして、皆に手を振っていた。そこから、歓声が起こり、さらに歓迎の声が続く。


 さらに、年数を飛ばす。


 おそらく成年期。托鉢をしている。いつも良くしてくれるお宅に挨拶をする。そこでは、母娘が出迎えてくれ「いつもありがとうございます」といったやり取りがあった。


 いよいよ、死に際。


 死亡原因は分からないが、ワタシは林の中に土葬される。土が体にかけられる感覚が分かる。目は開かないが周囲には、同じ袈裟のお坊さんがたくさんいて、少し離れた高い木々の根本には出家したての子供たちが囲んでいた。


 それから、誘導により、手足の感覚をしっかり感じるよう意識させられ、ゆっくりと現実に戻った。誘導と言いつつ催眠のような効果なのかと思ったくらい、見ている景色や感触が現実のようだった。

 誘導瞑想最中は、チベット仏教のお坊さんと思っていたが、よくよく調べてみると、タイもしくはスリランカの袈裟と寺院だったのかなと思われる。この話からすると、今一番影響がある過去世は、お坊さんということらしい。

 まず、その後の誘導瞑想について述べれば、他のモニターされた方が幻聴や精神不安等の異常が続いたためそのお店では一切行われなくなった。


 で、さらに不思議な話。この誘導瞑想体験談って、話した所で信じてもらえないので、あまり話すことがない。しかし、霊能者として仕事にしていないが、霊感が鋭いという方2名が、ワタシが黄色の袈裟を着ている姿が前面に出ていると言われ、その方々には「よく分かりますね」と経緯を話したことがある。

 余談だけど、自ら霊感が強いと言う方に会った時、我が強い印象で具体的な霊視内容じゃないことが多かった。控えめで、周囲から感覚が鋭い方と紹介された人の方が、いろいろ見えている感じ。ワタシが霊が見えないので、その辺の感覚は分からないけどね、周囲に理解されなくて苦労されてるのは分かったのですよ。


 過去世を知って、何が変わったか?特に何もない。輪廻転生の考え方は、宗教や人それぞれで異なるだろう。ワタシが誘導瞑想で見せられた景色が、テレビ等、映像作品による記憶からつなぎ合わされたと言われたら「そうかもね」となるだろう。ただ、肯定・否定の両方とも証明しようがない。

 個人的には、他にはない面白い体験が出来た。その方が大事。見える世界が全てって面白くないでしょ。見えない事ってたくさんあるし。顕微鏡がなければ微生物は見えないし、研究と測定機器があるから大気という透明な物質が分析できた。

 もっと身近なことで言えば、人の言葉や思いは文字にしないと分からないし、心情は察しないと読み取れない。どんなことでも、見えないモノに敬意を払うことを忘れちゃいけないと思う。

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