ミッション・イン・オカメッシブル

「あれぇ、レッドは? なんか最近、あまり見かけないけど?」

 ブラウンが何とはなくそんなことを口にする。いつものオカメンジャー秘密基地。


「ああ、レッドならお仕事忙しいそうですよ」

 ゴールドの答えを、ブラウンが驚いた顔で見返す。


「ブラウンが今何を考えているか、私にはわかる。『え? レッドって仕事してるの? オカメンジャーなのに? パンツ穿いてないのに?』それに対してここにレッドがいたらこう答える。『パンツは穿いてますぅ! てか、仕事しなかったらご飯食べられないでしょうっ? 金がそこら辺から湧いて出てくるとでも思ってんですかっ?』ってね」

 長いセリフを間違わずに言えたブラックがドヤ顔をした。


「あ、ほんとそれよ。仕事してるんだね、レッドって」

 ブラウンがしみじみと呟く。

「そうですよぉ。で、今は出張中です」

 ゴールドの情報によると、レッドは大阪に出張しているらしい。


「大阪かぁ。オタフクソースでお好み焼き食べてるのかなぁ」

 それはそれで羨ましい気もする。


「そういえば…、」

 ブラウンがシャシャッと携帯を操り、ブラックとゴールドに画面を見せた。

「え?」

「これって…、」


「折角だからレッドには、ここに行ってもらいましょうか」



*****


 ブブブブ、


 携帯が震える。


 レッドの本能が告げる。

『読まない方がいい』

 と。


 しかし、ダメだやめておけと言われれば言われるほど、危険を冒したくなるのはなぜなのだろう?


「……見なきゃよかった」


 結果、そう呟く羽目になる。


 わかっているのに……


 さっき大阪に着いた。

 明日は仕事なのだ。

 美味しいものでも食べて、ホテルでゆっくり過ごせばいいじゃないか。せっかくオカメンジャーから解放されたのだから。


 それなのに……


「なんでこんな」

 オカメッター経由で送られてきたのは、大阪にある、とある店。


『名代おでん おかめ』


 大阪ではそこそこ有名なのか、美味しいと評判のおでん屋さんらしい。小さな店なので常に満席状態の人気店だそうな。


「どうしろってんだよ」

 レッドは大きく息を吐き出した。


 明日は仕事。

 ホテルはそこ。

 店は…、


「遠っ」


 10分やそこらで行けるならまだしも、これって…、


 頭の片隅で考える。

 こんなもの、無視してしまえばいいじゃないか、と主張する常識人な自分。それとは対照的に、ブラウンとブラックが送ってきたってことは、行けってことだよなぁ、マジかよダルッ、でもこれ、行ったらオイシイよなぁ、などと考えてしまうパーリーオカメな自分。


「……うん」

 レッドは、シェアサイクルを探した。





 小雨が降る。

 自転車を漕ぐ。


 酔っ払いたちが歩く見知らぬ街を、オカメを探してチャリを漕ぐ自分。

 一体俺って、何なんだろう? 時々ふっと浮かんでくる、疑問。

 しかし、自転車を漕ぐ。

 何のために? もう、そんなことすらわからない。ただ、オカメを目指す。


 だって俺、オカメンジャーだから……。


(美しい音楽と、過去のオカメンジャー映像が走馬灯のように流れる。自転車を漕ぐレッドの画と、オーバーラップ)




 小道を探すこと数分。

 その店はあった。

 小さな路地の、小さな店だ。


 レッドは邪魔にならないよう道端に自転車を停め、店の外観を写真に収めた。

「どうだこら、本当に来てやったぞ!!」

 早速オカメッターに記事をあげた。


 ……。


 反応はない。


 …………。


 反応はない。


 …………………。


 ない。


 ほんの数分だったかもしれないが、何かしらの反応がないかと、画面を見つめ、待ってみる。しかし、反応は、ない!!!


大阪出張!

〜緊急の仕事で出張した俺が、オカメに導かれておでん屋さんを見に行ったら梯子を外されていた件〜


 てなもんである。


 レッドは思った。


『めっちゃ寂しいやん』

 思わず大阪弁である。


「帰るか」

 いつまでもそこに佇んでいるわけにもいかず、自転車にまたがる。元来た道を戻るのだ。知らない街。知らない風景。爆走する自転車。流れてくる、美味しそうな匂い…、

「あ、たこ焼き買ってこ」

 通りすがりの店に立ち寄り、たこ焼きを購入する。



 こんな夜もいい。

 オカメは、やっぱりオカメなのだ……。




୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈


無茶振りを反省しつつ、大阪で頑張った花里さんにこの物語を贈る。

そして「いらんわ!」って言われるとこまでが今回のお話。( *´艸`)クスクス

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