ダンジョン配信を切り忘れた有名配信者を助けたら、伝説の探索者としてバズりはじめた ~陰キャの俺、謎スキルだと思っていた《ルール無視》でうっかり無双
どまどま
陰キャの日常
ここ月島高等学校で、俺の名前を知らない生徒はほとんどいないだろう。
貧相な身体つき。明らかに非モテだとわかる顔。対人経験の薄さゆえの、挙動不審とも思える言動や仕草。
しかもよっぽど陰湿な雰囲気があるのか、同じ二年生にはもちろん、一年生にさえ蔑まれている始末。男には暴力を振るわれ、そして女には陰口を叩かれる。そんな日々がもう長いこと続いている。
だからこの高校で、俺の名前を知らない生徒はほぼいないだろう。今日も今日とて、俺は大勢の生徒たちを前に、大胆にいじめられているのだから。
――二年三組。その教室にて。
「おらよ、もう一発!」
「くうっ……!」
右肩に強烈なパンチを見舞われ、俺は思わずその場にうずくまってしまう。
「あっははははははは! たった一発で倒れてやんの‼ なっさけねーな!」
「よえー! クソザコじゃん‼」
「クスクスクス……」
同クラスの郷山が高らかに笑うと、それにつられるようにして、周囲の生徒たちも馬鹿にしたような視線を注いでくる。
痛みも引かぬままにまた殴打されてしまっては、さすがに片膝をつかざるをえなかった。
――
俺を徹底的にいたぶってくるこいつは、もちろん、俺とは違って圧倒的な陽キャ。
学業成績はそこそこながらも、所属しているサッカー部では大きな成績を収めているようだし、そして何よりもイケメンだ。彼女はもちろんのこと、いわゆるセフレ的な相手も何人もいるらしい。
対する俺は、学業も底辺、部活にも所属していない、そして自他ともに認める不細工。
いじめの標的となりうるのも、自然っちゃ自然のことだった。
もちろん……初めは怒る気持ちもあった。
俺だって人間だからな。馬鹿にされれば当然ムカつくし、反論の一つや二つは言いたくなる。
けれど、それは全部無駄だと悟った。
いくら理屈で正しいことを言っても、それは全然関係ないんだ。多少無理のある発言でも、カースト上位の奴が言うだけで正論に思われてしまう。逆に俺みたいな最底辺の人間がなにを言ったとしても、その内容に関わらずまったく聞き入れてもらえない。
だから――抵抗してもなんの意味もない。
ただただこうして、殴られ続けるに留める。それが一番賢い選択であると、俺は身をもって学んだのだ。
「おい霧島、なんか言えよ」
俺の前髪を掴み上げながら、郷山が顔を近づけてくる。
「土下座して謝罪さえすりゃあ、今回は見逃してやってもいいぜ? 許してください郷山様……ってな! ははははははははは‼」
「…………」
俺は何も悪いことをしていないのに、なにを謝る必要があるのか。
そういう《正論》は、ここでは通用しない。いかに突拍子もない発言であったとしても、郷山がそれを発せば正しいことになるのだから。
「……許してください、郷山様」
すべてのプライドをかなぐり捨てて、俺は両手のひらを地面につけ、額を頭にこすりつける。視界がうっすら滲んできてしまっているが、ここで泣くことだけは絶対に避けたかった。みっともないいじめられっ子である俺の、ささやかな抵抗とでもいうべきか。
「あっはっはっはっは‼ マジかよ! マジで土下座してやがる! だっせぇ~‼」
「はははははははははは……!」
「うっわ、ほんとキモ」
……本音を言えば、こんなクソみたいな学校、今すぐに辞めてやりたい。
面倒なことに関わりたくないのか、教師も見てみぬフリを決めやがってるしな。
こんなふうに罵詈雑言を毎日浴びせられているようじゃ、俺のメンタルがもたない。
でもそんなとき、いつも女手一人で育ててくれた母親の顔が浮かぶのだ。
父が他界してしまってから、うちの家計は著しく
それでもせめて――高校だけは出してあげたい。
母はそう言って、二つの仕事を同時にこなしてくれている。毎日眠そうにしながらも、一生懸命に弁当を作ってくれている姿を……俺は知っている。
だから、退学するわけにはいかなかった。
これ以上、母を悲しませるわけにはいかないのだ。
「ひゃはははははは! おまえの土下座に免じて、今日は許してやるよ! 寛大な俺様に感謝するんだな‼」
そう言って最後に俺の胸部を押しのけると、郷山は自分の席につくのだった。
――このときは、まるで思いもしなかったんだ。
俺には隠された才能があって、後々、この郷山が土下座をしてくるようになるなんて。
―――
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