統一日本は新世界で名を挙げる
広瀬妟子
第1話 接触
新暦1025年8月16日 モルキア亜大陸北東部海域
空と同様に広がる海洋の上、ガレオン船に酷似した木造帆船の甲板上で、ベルリア王国海軍軍人のマフマド提督は、やや茫然とした様子で真正面を見据えていた。
「何と巨大な船なのか…まるで城だ」
彼の呟きに対して賛同の意を示す者は多かった。目前には全身を灰色で彩った、1隻の巨大な船が浮かんでおり、彼らの常識で計り知れるものではなかったからだ。
事の発端は先日に遡る。陸地の大半を砂漠と荒野で覆われた地であるモルキア亜大陸の東端に位置するベルリア王国は、ミディア海を挟んで北に位置するイベリシア亜大陸の国々より技術を取り入れつつ、大規模な灌漑を行う事で農地を確保。そして内陸部の鉱山より産出される鉱石を輸出する事によって国家経済を支えていた。
そのベルリアの有力な港湾都市シータの上空に、巨大な白い怪鳥が現れ、市民を混乱に陥れさせた時、マフマドの内心は穏やかではなかった。近年のイベリシア亜大陸諸国との関係は良好とは言えず、ベルリア王国の知らぬ新しい装備や戦術で侵攻の下準備を試みた可能性があるからである。
そうして警戒を強化していたその時、マフマド率いる王国海軍巡航艦隊は、本土に向けて接近しつつある1隻の巨大船と遭遇。5隻のガレオン船で包囲しつつ、臨検を試みたのだ。
言語が通じたのは奇跡と言うしかなかったが、無用な損害と対立を回避できたのは最大の成果と言えよう。
「提督、迎えの船が来ました」
「う、うむ…」
相手より派遣されてきた小船にマフマドたちは乗り込み、目前の巨大船へと向かう。そして乗り込むと、乗員の案内の下に、操船を行う場所であろうところに至った。
「どうも始めまして、私は本艦の艦長を務める
艦長を務める男に出迎えられ、マフマドは話し始める。
「ベルリア王国海軍第2巡航艦隊指揮官のマフマドだ。貴船は我が国の領海に侵入しようとしたため、臨検の対象となった。それを受け入れた事には感謝する」
「はい、承知しております。その件につきましては謝罪致します。それよりも我が艦の属する日本国は現在、外交交渉を受け入れてくれる国を探しております。それの仲介をお願いできますでしょうか?」
佐々木からの要求に対し、マフマドは逡巡する。が、流石に断るわけにもいくまい。
「では、本艦隊に従い、シータに入港願います。幾つか聴取を行いますので、よろしくお願いします」
「分かりました」
斯くして、海上自衛隊第6護衛隊群に属する護衛艦「はつはる」は、5隻の帆船に取り囲まれながら西進を開始。接触した事実を日本本国へ連絡したのである。
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