とくべつ

夕雨 夏杞

とくべつ


むかし こどものころ

わたしはとくべつだと思ってた

だからいつか だれにもできないような

なにか とてもすごいことが

できるようになるって思ってた


でも、そんな日はやってこなかった


(なぜキョロキョロしてるのかって…?

(…×××に見つからないようにだよ。


わかったのは

とくべつっていうのは

"こども"であることそのものだったということ

大人になってしまった私は

むしろ皆よりできないことの方が多かった


(なぜヒソヒソ話すのかって…?

(だから…×××に気づかれないためだってば。


怖かった

とくべつじゃないから

捨てられるんじゃないかって


(…?!、なんだ…風の音か。びっくりした…。


…前に読んだ絵本に

「特別だから好きになるわけじゃない」

って書いてあったけど


わたしはあんまり信じられなかった

ずっと不安だった…

いまでも


(×××はたまにわたしのこと叩いてくるの。

(心が安定していないみたい。

(でも、×××にはわたししかいないから…


いつかは愛してくれるのかな


(あっ…そろそろいかなきゃ。

(バレたら今度は殴られるかもしれない…

(だからね、このことは秘密だよ。

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とくべつ 夕雨 夏杞 @yuusame_natuki

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