虹色の雨

その雨は 最期まで

虹の色をしておりました


分厚い雲の胎内に生まれ

硬い地の上に叩きつけられ

そして 透明に砕け散る

ただそれだけの

本当に ただそれだけの

孤独な運命なのに


その雨は どこまでも

虹の色をしておりました


きっと 知っていたからです

地を潤すことの意味を


きっと 知っていたからです

恵みとなることの喜びを


  上を向いた私の

  少しやつれた頬の辺り

  単純なみちを泳ぐ

  涙になった夢の群れ……


ああ そのとき

いびつに渇いた私の顔に

慈愛に濡れて柔らかい雨のうた

……ああ

なんと優しく なんと朗らかに!

(哀しみの辿ったわだち

 もう一回り大きな哀しみで

 そっと 拭い去るように ───)


その雨は しとやかに

虹の色をしておりました


その雨は いつまでも

虹の色をしておりました


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