終点のその先
電動かまぼこ
不思議なウワサ
「ねぇーサキは、終点の先はどうなってると思う?」
「どうしたのユイ?終点の先なんて電車の倉庫があるだけでしょ。」
「そうじゃなくて、最近話題になってるあの話の方だよー。そんな真面目な回答は求めてないの。」
私の高校では、最近話題になっている話がある。それは、とある電車乗っている時に寝てしまい終点まで着くと"その先"に連れて行かれてしまうと言うものだ。
"その先"については情報が曖昧なよう「"その先"は地獄で魂を取られる」だとかとか「"その先"はこの世のものとは思えないほど、ものすごく綺麗な花畑が広がっている」とか話している人によって違うようだ。
「で、サキはどうなってると思う"その先"」
「うーん」
「私はね、川の見えるお花畑がいいなー、そこで綺麗なドレスを着て踊ってみたい!!」
「花畑かぁ···花畑も良いけど、私は星空がいいかな」
「星空!!いいね星空、綺麗だろうなー」
学校が終わりいつもと変わらない放課後、ユイとくだらないことを話ながら駅のホームで別れるそんな日常。特に何も無いけれど幸せな日常。
「あれ...」
私は電車の中で眠ってしまっていたようだ、私が起きるとほぼ同時に電車が止まる。
「やばい!!」
私は急いで電車の場所を示す電光掲示板を見るが
「え?」
そこには"その先"と書かれていた。
なんとも言えない悪寒が走り全身に鳥肌が立った。
ここで降りちゃいけない。直感的にそう感じたが何分経っても電車が動く気配がしない。
スマホで親に連絡を取ろうとしたが充電が切れているようで動かない。
「降りなきゃダメなの?」
震える足をゆっくりと動かし電車の外に出る。木造の駅だった。古いが管理がしっかいと行き通っていて、歴史を感じる美しさがあった。
ふと時刻表が目に入る。
「帰りの電車とか書いてあれば良いんだけどな」
そう、小さく呟きながら私は時刻表を見た。
3分前-行き
27分後-帰り
6,832,800分後-終わり
と、だけ書いてあった
「良かった。帰りあるんだ。でも終わりってなんだろう」
少しの疑問を覚えながらも、帰りがあることか分かり、安心したのかフツフツと恐怖によって押し潰されていた好奇心が湧き上がってきた
「少しだけ、外に出てみるかな」
待合室を出て外へと向かったが人は居なかった。
外は森だったが、空を見てみると見渡す限りの満点の星空だった、私はスマホでこの星空を撮れないことに少し残念に思いながらも先に進むことにした。
15分程、星空を見ながら歩いていると、ふと少しずつ景色がタールのような黒い液体によって黒化していることに気が付いた。まるで少しずつ侵食しているかのように。
本能が警笛を鳴らす。少し前まで私を支配していた感情が私を再び支配する。私は急いで駅へと戻ろうとしたが、何かに左足を引っ張られ転んでしまった。
痛みに耐えながら足下を見ると、景色を侵食しているタールのような黒い液体が、まるで触手のように伸び、私の足に絡みつき更に奥へと引きずり込もうとしていた。
直感でわかった。引きずり込まれたら、死ぬよりも恐ろしいことになる。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、死にたくない、パパ、ママ助けて、神様助けて」
私は、恐怖で歪んだ顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにし、失禁しながらひたすらに助けを懇願した。
引きずり込もうとする力に抵抗するために指を地面にめり込ませるが、引きずり込む力の方が強い。
地面に溝ができ始める。中指の爪が剥がれ血が滲む。
いくら抵抗しても相手の力の方が強い。生きることを諦めようとしていた時、何かが抜ける感触と共に、私を引っ張っていた力が消えた。
何が起きたかは、分からなかったが私は後ろを振り返らず、駅に向かってがむしゃらに走った。
電車はもう到着しているようだ。
私はボーと、あの黒い液体によって侵食され滅亡したのであろう世界を見ながら電車に揺られていた。
すると不意に眠気が襲い、私の意識は途切れた。
次に目を覚ました時、私は家から最寄りの駅のベンチに座っていた。制服にあの黒い液体どころか土汚れすら残っていない。まるで悪夢でも見ていたかのようであった。
だが、右だけの靴と傷だらけの左足があれが現実だと告げていた。
終点のその先 電動かまぼこ @koha0711
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