ぼくは大人になりたくない
大波加 康成
ぼくは大人になりたくない。
――「なんでそんなことも出来ないの?」
「そのくらい我慢しろよ。子供じゃないんだから」――
(なんで?ぼく大人じゃないよ?まだ小学生なのに…)
《日記帳 3-2 川原
8月6日(水) 晴れ☀️
夏休み中にっきを書こうと思って書きはじめました。今日はぼくはともだちと公園で遊びました。知らないおじさんに、「お父さんかお母さんは?」って聞かれたので「もう3年生だからだいじょうぶ」ってこたえました。でも本当はすこしさみしかったです。
8月7日(木) くもり☁️
ぼくのパパとママはいつもけんかばっかりしています。よく、しねとかきえろとかいってるのと、いたいいたいってさけぶ声が聞こえてきてすこしこわいです。きょうもけんかしててパパがママのお気に入りのコップをわりました。なんで怒ってるの?ってパパに聞いたら今日のよるごはんにきらいなものがあったそうです。小さい子のだだみたいだなって思いました。
8月8日(金) くもり☁️
今日はパパがママをたたきました。そして、いっぱいいっぱい、けりました。ぼくはママを守ろうと思いましたが、こわくてうごけませんでした。ママはきゅうきゅうしゃで運ばれていきました。ママは頭から血が出てて、口からも血をはきました。ママがいなくなっちゃうんじゃないかって思うとすごくこわいです。
8月9日(土) 雨☔
今日は雨がふっています。ママが帰ってきません。パパは病院にしばらく住むんだって言ってました。なんでかな。ぼくとはすみたくないのかな。
8月10日(日) 雨☔
まだ雨が止みません。なんかぼくの心みたいです。ぼくの心もずっと悲しいし不安でいっぱいです。でも、ぼくが泣いたらパパが怒るからがんばってわらいます。
8月11日(月) 雨☔
ママに会いたいです。パパおこっててこわい。
8月12日(火) 雨☔
パパにたたかれました。ママ早く帰ってきて。
8月13日(水) 晴れ☀️
やっと雨が晴れました。だからぼくは自てん車で病院に行きました。ママいますかってかんごしさんにきいたら、しらないおじさんがでてきました。そのおじさんはママはもういないっていいました。ほんの少し前におそらのおほしさまになっちゃったそうです。ママはやっぱりぼくといたくなかったんだ…。
8月17日(日) くもり☁
ママのおつや?とかおそうしきとかで何日か書けませんでした。おそうしきではパパは泣いていました。でも家にかえってきてからはせいせいしたと言っています。人がいるところでだけつらそうにするパパを気持ち悪いと思いました。
8月18日(月) 晴れ☀️
お家におまわりさんが来ました。ママがいなくなっちゃったのはパパのせいだからって怒られてました。でもパパはその人たちにもっと怒っていました。
8月19日(火) 雨☔
パパがしらない人につれていかれました。
こわいです。ぼくは今日ママのおとうとののおじさんの家に泊まります。
8月20日(水) 晴れ☀️
朝起きたらおじさんはだれかとでんわしていました。なんの話だろうと思ってきいていると、「あんなガキがいたらいえに女がよべねぇ」とか「ムダに金かかんじゃんヤダよ」とか言っていました。めいわくかけてごめんなさい。かなしくなってまどからいえをでました。今日は公園のゆうぐの中でねます。
8月26(火) 晴れ☀️
ママに会いたい。
8月29日(金) くもり☁️
書くのを忘れてたけど、ぼくはようごしせつってとこに入ることになりました。そこにはぼくと同じでママとパパがいない子が50人ちょっといて、年れいはバラバラだけど、学校みたいで楽しいです。でもすこしでも先生にこうしてほしいとか言うと、「このくらいがまんしなさいよもう大人なんだから」とか「いいかげん大人になろ?」とか言ってるのをみます。すこしパパみたいだと思いました。
8月30日(土)
今日うまくボタンがとめられなくて、先生にてつだってって言ったらそのくらい自分でやりなさい、もう子どもじゃないでしょ?と言われました。でもぼくが見てきた大人はみんなこわかったです。ママはずっとやさしかったのにぼくをすてて行っちゃいました。パパはママをいじめました。そのうえそれをおこられたらぎゃくにもっとおこってて。おじさんはおんなのひとといたいからぼくとはいたくないっていってました。めいわくをかけたのはぼくだけど、あれが大人だとは思えませんでした。みんなじぶんかって。それが大人ならぼくは子どものままがいい。
8月31日(日) かい晴☀
僕も大きくなったらあんなになっちゃうのかなと思ったら怖くなりました。あんなになるのはすごくいやだ。だから僕は大人にならないことにしました。
――「本日午後5時頃,埼玉県にある○○山で小学生程度と見られる子供の遺体が――。
遺体は首を吊った状態で発見され、自殺と見られています――。」
ぼくは大人になりたくない 大波加 康成 @c6h8o7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます