1-31 便意


タイヤに纏わりつき、有刺鉄線のように混ぜられた金具が引っかかった網を取り外していたエイキチ。


乾燥した土地の粉っぽい煙のせいで、車から少し離れて咳をした、その時、身の毛がよだつ音が耳元でした。


キュィブーーーーーーン


ミニガンッ!


そう、焼けて冷やされてを繰り返して、砂利砂利な黒色をした六段砲身が伸び、けたゝましく回転して、毎秒60発を打ち込む。

相手は肉片すら残らず、ただ地面に焼けこげた穴が残る。

人間の身で使うことができる最恐の兵器。

そんな具体的なビジョンが見えた瞬間、俺は遮蔽に隠れた。


だが、

「グアァ!」

衝撃が一切緩和できていない、いや緩和はできている。そうじゃなきゃエイキチの体は一瞬のうちに消し炭になっている。


それでも緩和できていないとしか考えられないくらいクソオメェ、俺と同じくらいの打撃を喰らってる感覚だ。そしてやっぱり

「近づけねえ!!」


遮蔽は完全に破壊への一本路線を、特急で進んでる。

すでに遮蔽物の壁の8割は壊れて、

残りの寿命が数秒で終わる。


今この状況に限っては、俺の寿命は数秒しか残っていない。


無防備に縛り付けられた心臓に、全方位から子供の持つエアガンで既に何十発と撃たれているような、極限状況の中エイキチの体が勝手に動く自分の胸元を触り、胸ポケットに閉まった落ちてた片手銃を揺らす。


カチンコ。


「俺、銃下手なんだよ!、」

この状況を打破出来る何かは、コレしかないと理解わからさられて、強引に服から取り出した。


今もなお、とてつもない威力で壁は破壊されている。コレが壁を抜けて、一発でも頭に当たったら、と考えると血の気が引くが、


「テメェ、入ってんだろうな!」

エイキチは銃のスライドを確認する暇もなく、銃に脅しをかける、有っててくれと。



光点が輝き、乱れ流れていく流星群みたいな銃声じゅうせいの手中、エイキチは壁から顔を出して、銃身を向ける、星の出口に向かって引き金を引く。


銃の引き金を引くのは久しぶりで、思っていたより軽かった。


片手中に収まっていた、一発が発射され、

たくさんの欠片の中、最後の一発が一閃刺す、


エイキチの弾は、虚しくも空を切ったが、同時に銃声も止まる。


ハウンドの一人、レッドベレー帽の作戦科、やつれた顔で弾の先を追っていた、勿論エイキチのはなった弾の先を、見ていた。


「お前かよ。」


昔を懐かしむ顔で、


レッドベレーがサイト内から目を離した時、エイキチも不思議がった。

目の前で黄昏れる奴は、今の今までヒャッハーしてたのに、何をやってるんだと。


棒になった遮蔽物から、飛び出して走ったエイキチが、ハウンドのレッドベレーをぶん殴る。


顔面に入った拳は、レッドベレーを空中で大回転させて。

華麗にエイキチが着地した。



数十分後、レッドベレーが目を覚ました。

両手両足を縛られもせず放置されていることにさらに混乱した。

だが一眼で理解する、それらよりももっと力を持つ番獣が目の前にいることに。


近くの石に座り、両手の指先を合わせたポーズで迎えるエイキチ。

「ボスに伝えとけ、俺たち部隊は、メチャつえぇ、一般人にやられたってな」


「もうボスなんて、言える人いねぇよ。そこに倒れてんのが、ソイツだよ」

倒れたままのレッドベレーは、遠くに倒れているボスを、顎の動きだけで伝える。


「お前ら窃盗団のパシリじゃねーのか、なるほどな…お前らが本山ハウンドだな。」


「ああ、」

「なら、単独廃団たんどくはいだんの通り別動隊がいるだろ。」

※単独廃団とは、

人数不足の盗賊集団が、両者に利があり、用途にもよるが、近隣盗賊集団から、人員を借りて行うことができる、かなりマイナーなルールだ。


(野球用語である単独廃校と言うルールを盗賊集団に当てはめた時の、作中の造語です。)



その用語を口にした瞬間、この機器的状況でも、ボスを見続けていたレッドベレーの目に動きがあった。


「…あんたまさかッ、同」

ソレを言い切る前に、エイキチが鋭い一言で止める。

「お前は俺の質問にだけ答えろ。」


ヘルメットも外れている今なら、簡単に殺すことができる。

エイキチは重みを理解させるために、強い口調で言った。


「い、スー…待て同業者なら話は別だ。襲ってすまなかった。盗品を分けてやる金もだ、だから見逃せっ」

それなのに、レッドベレーは止めた話を続けるどころか、傷だらけの体を起き上げて、膝を立てると、まるで対等かのように交渉をし出したのだ。


「は?」


「ルールだよ。お前が持ち出した話だろうが、単独廃団とかマイナーなルール知ってんなら分かるだろ。

同業者同士の抗争は控えるべしってルールだよ、ルール…イッテテ、」

2回目、ルールを強調して大きく言うと、口を大きく開けすぎたのか頬をを抑えると、止血をし出した。

「それに、同業者なら俺たちを殺すより、恩を売っておく方が、得策だと思うぜ。」


こいつの掲げた物は、自分が属している組織の名前からくる自信、だった。


体にダイナマイトを巻いてるとかではなく、

少し安心したと同時に、


ただのそれだけで、交渉をしようと言うのか?と吐き出したくなる怒りが、エイキチの心の中に溜まってきた。


「同じ仕事してるから同業者か、そうか…でも、俺はお前らみたいなのに、同業者って言われんのがきにくわねぇ、」



今まで目を向けないようにしていた、

コイツらの作り上げた惨状を見る。


何台もの車に書かれた罵詈雑言、破裂したタイヤ、

新しく買った銃の、試し撃ちでもしたんだろう、本物の藁を巻きつけただけの人形。


間近で受けた本人だからこそわかる、わざと手足や末端を狙っていたぶって、

血が垂れて、最後の最後まで、苦しんで生きていた死体、底には血色の土地を作ってる。


遺跡の影からはみ出す、女の冷たくなった足には、白濁とした粘液の乾いた跡が、


遺跡の女達が覆い被さっている箱の中からは金品財宝、酒タバコ。


そこに灰皿は無い。


「汚ねぇ仕事だよ。銃で脅して小せぇ物盗んで、人間一人の壊して、それでそこに何んかホコリでも落ちてたかよ!」


拳の中には何も無い、

血も汗も、空気も、手の力で消え失せる。


ただココにある、力を握りしめた。


「身勝手だよこの世界の全員! 俺もだ、だけどな!見せしめにしねぇ、荒さねぇ、

過去に縋ってるだけの、お前らとは何もかもが違ッげぇんだよぉお!」


腕に渦巻いた風が、消し飛ぶ。


エイキチの腕力が限界を超えて、解放されて袖付近の布が弾ける。


鉄を砕く拳が、衝撃点で瞬発的に怒りを入れて人間に叩き込まれたんだ、徐々に人間は歪み、そして意識が削り取られる。


拳を振り下ろした時、まるであり得ないと言う声で「ま何言っ」と聞こえた気がしたが

知るか。

その凹みは多分、一生戻ることは無い。



「フーー…それにしても、今回の旅は本当に時間を感じない旅だった、それこそ便意を感じない旅だった。」


エイキチは一人、良いこと言った〜と思って見ていたが、その灰色の空の景色と自分の立ち位置のちょうど間にあったバンが一人でに開いて、少女が飛び出してきた。


足の回転率的に、何やら急いでいる。


「来るなって言っただろ、どうしたんだ。」

来ないことを決めていた、その約束事を破っていても、エイキチは優しくアセビを迎え入れる体制をとる。


アセビは俺の腕に、後一歩のところで急ブレーキをかけて止まる。


何やら顔を赤らめて恥ずかしそうに、モジモジ、と後腰付近で弄っている。


「ンー…ンー……… トイレ!」


「今!?俺今いいこと言った気で、スカしてたのによぉ〜。


はいはいわかった、え〜とハイ、

外用オマル持って、早くしてこーい。」

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