追い詰められる曹丕
曹丕たちが牢屋についた時、床で仰向けでノビている見張りの兵、牢屋の中では、気絶している逢紀・郭図・審配。
曹丕「おい貴様、起きろ!これは何だ!何があった!」
見張りの兵「むにゃむにゃ。もう食べられませんよぉ〜。ふわっ。イテテ、鄧艾め。曹丕様!?鄧艾が鄧艾が牢屋から司馬昭と賈詡と夏侯玄を解放して、外に必死に止めようとしたのですがこの有様で。全く不甲斐ない自分が情けない」
司馬懿「まずい昭の奴は、俺がしてきたことを知っている。それが万が一民衆にでも密告されれば、華北の多くが」
曹丕「鄧艾め。お前は俺を謀ったのだな!クソォォォォォォォォ。クソッ。クソッ。まずい、賈詡や夏侯玄は父寄りだ。このままでは」
そして、牢屋から外に出たところを民衆に取り囲まれる曹丕。
民男「こっちに曹丕が居たぞ!近くに司馬懿も居るはずだ探せ」
曹丕「貴様ら、何をする。こんなことをすれば、極刑だぞ!」
民女「ふざけないで!曹仁様たちのことすら信用せずに子供を人質に取るだなんて、貴方は親の気持ちがわからないの!」
曹丕「おい女!ふざけるな、この国は俺のものだ。臣下たちから人質を取って、何が悪い!父が迫ってきているのだぞ。こんなことをしても父はお前たちを許さん」
民老「それはどうでしょうな。曹操様は覇道などという茨の道を進まられておられるがワシら老人に対しても礼節を尽くしてくださる出来たお人じゃ。貴殿が曹操様の子などと思えんほどにのぉ」
曹丕「離せ。離せ。離せ。離せと言ってるだろうが!俺にこんなことをしてどうなるかわかってるんだろうな。おい」
老婆「やれやれ、曹操様にとっての汚点が貴殿の存在じゃろうて。貴殿が曹操様から簒奪しなければ、今頃天下を平定されておったじゃろう」
曹丕「そんなわけがない。そんなわけが。俺より、父の方が優れているはずなど。そんなことあり得ない。仲達、仲達、隠れてないで俺を助けろ。仲達」
その頃、たまに紛れて人混みをかき分けて進む司馬懿と司馬師。
司馬懿「チッ。あの凡愚が。こうなっては助けるわけが無かろう」
司馬師「父よ。しかしどうするのです?」
司馬懿「こうなっては、曹操と戦したところで勝ち目はない。まぁなりふり構わなければ何とかなるかもしれんが。そうして勝ち得たところで弱ったところを蜀漢に食い尽くされて終わりだ」
司馬師「では、やはりお隠れに?」
司馬懿「それしかあるまい」
司馬師「昭の奴も余計なことをしてくれたものです」
司馬懿「ふっ。確かに余計なことかもしれんがこれで昭の奴は、魏に居ずらくなる。さて、亡命先は何処であろうな。ククク」
司馬師「父よ。まさか昭のことも計算づくで?」
司馬懿「アイツが呂布軍との戦の最中、様子がおかしくなったことに気付かないとでも?」
司馬師「では、昭の奴は?」
司馬懿「十中八九、蜀漢に行くであろう。司馬の血は残る。いずれ司馬家の者が天下を取る未来は来ようて。我らはそれまで暫し表世界が消えるのみよ」
司馬師「鍾繇と鍾会はどうしますか?」
司馬懿「こうなっては致し方ない。陳留にて、我らのため捨て石となってもらおう」
司馬師「別れる時に先に陳留に戻るように伝えましたし、このまま我らが戻らなければ、鍾繇や鍾会も捨てられたと判断して、寝返るかも知れませんが」
司馬懿「構わん。昭の暴露のせいで、これ以上知られて困る事などないゆえな。それに、曹操の元に匈奴がいるのなら鍾繇と鍾会は絶対に許されん。そういう風に持って行ったからな。董祀にも毒薬を贈っておいた」
司馬師「毒薬だとわかりやすいものなど飲むでしょうか?」
司馬懿「勿論、文姫からの贈り物ということにしておいた」
司馬師「その辺りも抜かりはないと」
司馬懿「当然であろう。文姫の方にも劉豹からの贈り物として、届けておいた」
司馬師「警戒心の強い蔡文姫殿には通じないかと」
司馬懿「そうであろうな。まぁ董祀だけ贈られているよりも夫婦揃って贈られている方がおかしくないと考えてのことだ」
司馬師「さて、そろそろですか」
外に出ると商人の格好をした司馬孚と荷台にて招き入れる司馬朗がいた。
司馬孚「兄上、こちらへ」
司馬朗「懿よ。大変だったな」
司馬懿「このまま、我らは陳留を放棄して隠れる」
司馬朗「ほとぼりが冷めるまで、致し方ないだろう」
司馬孚「甥も大変なことをしでかしてくれたものです」
その頃、曹丕は民衆たちによって、縄で縛り上げられ、吊し上げられていた。
曹丕「何をするつもりだ!?」
民男「勿論、曹丕様にはこれから反省してもらうのさ。俺たち華北の男を舐めんじゃねぇよ。ここは曹操様に譲るのさ」
曹丕「ふざけるな!?俺のために戦うのがお前らの仕事であろうが!」
民女「反逆者のために働くなんてごめんよ」
曹丕「反逆者はお前たちだろうが!」
民老「早くこうしておくべきじゃった」
曹丕「断罪されたら容赦なくこんなことをしよって、お前ら絶対に許さんぞ!」
老婆「それをワシらはずっと味わってきたのじゃ。ええ加減にここを曹操様に返す時が来たのじゃ」
曹丕「馬鹿を言うな!ここは俺のお陰でここまで発展したのだ。父は、ここのことなどほっておいて、許昌に篭りきりだったではないか!」
民男「何とでも良いやがれ。曹操様がここに来るまで、その状態でしっかり反省するんだな」
曹丕「おい。待て。待ってくれ。こんな惨めな状態で放置するでない。全ては仲達のせいなのだ!俺は。俺は何も悪くない。何も悪くないのだ」
曹丕の責任転嫁を誰も間に受けることはなく、このまま曹操が兗州にて鍾繇・鍾会を破るまで、ずっとこのままの状態で、見下していた人間から飯を食わされる日々を過ごすのであった。
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