間話⑥ 一年に一度の地獄の祭典
ワシがここに来て、何年経つ。やれやれ、毎年参加しているこの祭りだが、一向に7つの種目全ての制覇ができん。毎年毎年、クリアしたものが出る度に変えよって、クリアさせる気が無いであろう。あの閻魔の鼻を明かしてやりたいのだが。
閻魔大王「フォッフォッフォッ、地獄の諸君、此度もこの日がやって来たぞい。地獄の祭典じゃーーーーーーーー」
地獄の住民一同「うおおおおおおおおおお。今回こそクリアして、この世界からおさらばするんだ。俺たちは天国に行くぞ」
閻魔大王「うむうむ。良い良い。気合、十分と言ったところじゃな。此度も無事7つの種目をクリアしたものには、ワシから何でも願いを叶えてやる褒美をくれてやるぞい。せいぜい楽しませてみよ。ワッハッハ」
劉璋「地獄の祭典?」
袁紹「ほぉ、新顔がいると思ったらお前か劉璋」
劉璋「袁紹殿!」
士祇「袁紹、そう虐めてやるな」
董卓「ワシは霊帝じゃぞ。毎度毎度悪趣味な祭典に参加させよって、帰らせろ!」
閻魔大王「帰るのは勝手だが、今日は年に一度の地獄祭り、死ぬほどの苦痛を味わってもらわねば、帰れんぞい。ワッハッハ」
蟹張「肉を人肉を食わせろ〜〜〜」
閻魔大王「それでは、初めの競技は、血の池地獄選手権じゃ〜」
張譲「嫌じゃ嫌じゃ。血の池地獄選手権だけは嫌じゃ」
劉璋「血の池地獄選手権?」
袁紹「マグマの川を身体が溶けるまでに50メートル先の対岸に着くまで泳ぐという通称マグマ地獄だ」
董卓「えぇい。泳ぎ切ったら妃に合わせてくれるんじゃな?」
閻魔大王「そのブヨブヨで泳ぎきれたら特別に叶えてやっても良いぞ。まぁ、向こうが会いたいかどうかは知らんがな」
何進「霊帝を騙るのがまさか貴様だったとはな董卓!俺の妹に触れることは許さん!」
董卓「煩い蝿じゃ!李傕・郭汜、ワシをおんぶして、対岸まで泳げ」
李傕「ふざけんな。俺は絶対に現世に帰って、貂蝉を抱くんだ」
郭汜「貴様にだけは絶対譲らんぞ李傕!貂蝉を抱くのは、この俺だ」
我先に血の池に飛び込み泳ぎ始めるが皆、真ん中を過ぎたあたりで、身体がドロドロに溶けて、最初の位置に戻される。
袁紹「全身がまだヒリヒリと痛むようだ。今回もあと少し泳ぎきれなんだ」
董卓「痛すぎるわ!この大馬鹿閻魔が!突破させる気無いだろう!」
李傕「郭汜、テメェが足を引っ張りやがるから」
郭汜「ウルセェ、テメェだけは絶対に泳ぎきらさねぇ」
閻魔大王「お前は参加さんのかのぉ?」
劉璋「俺は、罪を犯したことを悔いている。それに特に叶えたい願い事もない。だが、これが俺の罰だと言うのなら喜んで、この川に飛び込もう」
閻魔大王「フォッフォッフォッ。それで良い」
10メートル程で脱落した劉璋は、懐かしい面々と再会していた。
劉璋「自分の身体がドロドロに溶けても意識がある状態があんなに苦しいとは、これが地獄か。当然だな。俺はそれだけのことをしたのだからな」
馬漢・冷苞・楊懐・高沛「劉璋様もやはりこちらに落ちてきましたか。お久しぶりです」
劉璋「お前たち、俺のせいですまなかったな」
馬漢・冷苞・楊懐・高沛「何を言っておられる。我らは野盗、劉璋様は我らを有効活用しただけのこと。それに我らも罪を悔いてる者ですから。こんな身寄りもないどうしようもない俺たちのことを毎日、熱心に供養してくれる男がいるので」
劉璋「そうか。始まるぞ。次が最後の男だな」
馬漢・冷苞・楊懐・高沛「あぁ。今回もアイツだけが残ったな。最高到達競技は、3つ。地獄最強の男と名高い、呪術師于吉」
劉璋「アイツがかの有名な于吉道士か」
閻魔大王「フォッフォッフォッ、此度もお前だけ残ったな。どうじゃ、前回よりさらにパワーアップしたこの地の池地獄は?」
于吉「ふむふむ。ワシにかかれば、余裕ですな。とっととクリアさせてもらうとしよう」
閻魔大王「流石じゃな。せいぜい楽しませてくれたまえ」
この川を攻略するのは簡単じゃ。要は、身体が溶けるまでの制限時間以内に対岸まで泳ぎ切れば良い。痛みと熱さと苦しみを遮断して、一瞬でな。まぁ、この通りとな。
閻魔大王「血の池地獄選手権をクリアしたのは、この男、于吉じゃーーーーーーー」
于吉「高らかに宣言などいらぬ。次じゃ」
閻魔大王「やれやれ、余韻の欠片も抱かん。面白くない男じゃ。では、第二種目、一定の高さまで積み上げろ賽の河原で石積み選手権じゃ」
またこれか。1つ目が酷だからか2つ目は楽だと思ったのなら大間違いじゃ。ここには、獄卒が4人居る。牛の頭を被り、手に大きな槌を持つ牛鬼。豚の頭を被り、2本の長い解体包丁を持つ豚鬼。羊の頭を被り、手に大筒を持つ羊鬼。そして、鶏の頭を被り、手に備え付きの大型弓を持つ鶏鬼。奴らの妨害を掻い潜り、時間以内に石を積み上げなければならん。何とも厄介な選手権じゃ。これの攻略方法は、自分自身が盾となり石を守ることじゃ。寧ろ、そうせねば時間以内に石を積み上げることはできん。要は、獄卒から潰され斬られ、穴を開けられを見せ付けるための競技じゃ。
于吉「ハァハァハァハァ。腕の感覚がもうないがこれで最後じゃ」
閻魔大王「ほぉ。賽の河原石積み選手権も突破したか。今回は前回の反省点を踏まえて、身体ごと石を吹き飛ばす大筒を持たせたのだが。やれやれ。では次じゃ。チクチク進め針地獄選手権じゃ」
やはり前回と選手権の内容は変わらんようじゃ。針地獄選手権とは、その名の通り、串刺しになりながら針の上を歩いて、向こう側に渡る。その距離、1000Mだったのじゃが。
于吉「これは!?」
閻魔大王「前回簡単に突破されてしまったのでな。此度は、その距離を10倍にしてやったぞい」
1万Mか。痛みに耐えながら渡り切るのはさぞ辛かろう。しかし、それは痛みを感じる身体ならばな。ワシは呪術師。身体の感覚を無くすことができる。今回こそ。今回こそ。全種目突破してくれるわ。
閻魔大王「この男、化け物なのではないか?まさか、渡り切ろうとは」
于吉「ハァハァハァハァ。この程度で、ワシを砕くことなどできん。さぁ、次じゃ」
閻魔大王「やれやれ、やはり前も無理だったこれに賭けるしかないぞい。自分自身と戦って障害物を潜り抜けろ、鏡写し地獄障害物選手権じゃ」
やはりこれか。これに関しては、ワシが呪術を使えば、それが鏡写しとして現れる。所謂、ここまでのワシの呪術を用いた競技の穴をついた作戦の全てを無に返す競技じゃ。じゃが使わねば、とても耐えられん。そして、その結果、この有様じゃ。
閻魔大王「フォッフォッフォッ。残念じゃったな于吉よ。分身の勝利じゃ」
于吉「ぐっ、ゴボボボボボボボボボボボ」
閻魔大王「ワッハッハ。一気に分身分のダメージも受けて、吐くのが止まらんようじゃな。お前たちが苦しむ姿を見て、天上人であらせられる神様もさぞお喜びであろう。そして、此度も誰も心がまだ清らかではなかったことの証明となったわい。この地獄で、また一年励が良いわ。ワッハッハッハッ」
ワシは絶対に負けん。いつの日か必ずこの地獄の祭典を制して、現世に返り咲いてくれるわ。待っていろ張角・周瑜・劉丁・左慈、貴様らは絶対にこの俺が殺してくれるわ!ワシの名は于吉。于吉道士と呼ばれし、呪術師じゃ。
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