蒼梧の戦い(転)
劉備軍が攻城兵器で城門の破壊に取り掛かる。それを阻止するため続々と城門に集まり扉を押さえつける蒼梧の守備兵。
劉備「衝車隊、前へ。城門を壊すのだ」
孫堅「雲梯の準備をせよ。乗り込んで衝車を援護するのだ」
諸葛亮「井闌車隊、衝車隊の援護のため城壁の上にいる弓兵を排除するのです」
桓治「劉備軍を近づけさせてはならん!衝車を排除せよ!」
桓鄰「乗り込ませてはならん。相手に拠点を作らせるな。重装歩兵隊、弓兵を援護せよ」
雁門「交州を簒奪者に渡してなるものか。城門を押さえつけるのだ」
蒼梧城を巡る攻防が繰り広げられていた。先に落とした高涼城とは比べ物にならないくらい防備の固い城である。隙が見当たらない。
黄蓋「雲梯をかけよ。乗り込むぞ」
桓鄰「乗り込んできたぞ!拠点を作らせるな!」
黄蓋「お主が桓鄰だな。その首、この黄公覆が貰い受けようぞ」
桓鄰「皆が皆、一騎討ちに乗ると思ったら大間違いだ。この重装歩兵隊は、城壁の守護神。それを指揮するワシが討たれるわけにはいかん。取り囲んで確実に仕留めていけい!」
黄蓋「乗ってこんか。一筋縄で行かんものだ」
諸葛亮「井闌車隊、攻撃を止めるのです。黄蓋殿が雲梯にて乗り込みました。味方に当たるかも知れません。ここより狙ってくる弓兵のみを狙い撃つのです」
桓治「ぐぬぬ。流石、百戦錬磨の劉備軍。曹操軍を何度も追い返しただけのことはあるようだ。しかし、この蒼梧を渡すわけにはいかん。油壺を放り投げるのだ。火弓にて衝車を焼くのだ!」
劉備「奴ら、まさか衝車を。皆、退避せよ。命を失ってはならん」
衝車を押すものたちが避難すると同時に衝車が勢いよく燃えた。
劉備「衝車を燃やされようとは。次の衝車を用意せよ」
桓治「何!?まだあるのか。油壺の方はどうだ?」
民男「残っていたのは、これで最後です。作ったやつは全て、南海の方に運ぶようにと士幹様が」
桓治「あの馬鹿が!やはりこの蒼梧ですら捨てる腹づもりであったか!」
民男「ひっ。突然大きな声を出さないでください」
桓治「役立たずが。とっとと家に帰っていろ!(これで良い。民たちを巻き添えにしてはならん。彼らには生きて、劉備殿の噂が大嘘だらけだという証人になってもらわねば。この手を染めた責任は、全て俺が)」
桓鄰「兄上、1人に背負わせるつもりはありませんぞ」
桓治「フッ。世話をかける」
桓治に次の衝車を壊す余力は無かった。あの火が消えた時が門が破壊される時である。
劉備「消化活動をせよ。あの火を消し、城に籠る将を討つのだ」
張飛「おい。樽、もってこい。行くぞー」
水をたっぷり入れた樽を軽々、片手で持ち上げる張飛。それに続く龔都と何曼。
龔都「ハァハァハァ。張飛様はどんな体力をしてるんでやす。こんな重いのを軽々」
何曼「負けてられねぇ。よっこいしょー。うぐぐ。オラァ」
張飛「龔都・何曼、おせぇぞ。もっと持ってこい」
バケツリレーならぬ水樽リレーである。これにより迅速に消火が完了したのである。
劉備「翼徳、助かったぞ」
張飛「おぅ大兄者。これでここもしまいだな」
劉備「あぁ。衝車隊、城門を破壊せよ」
その頃、城壁の上では。
桓鄰「ここもそろそろ危ないな。兄上、まだやるべきことがあるだろう。ここはワシに任せよ」
桓治「桓鄰、すまぬ」
黄蓋「逃さんぞ。大将首よ」
桓鄰「兄上の元に行かせるな!食い止めよ」
程普「何という士気の高さだ。追い詰めているはずだが」
韓当「これだけ倒したら存在感も出るかなぁ」
次々と雲梯がかかりじわりじわりと拠点を増やしていっていた。だが尚も士気が衰えない桓鄰率いる重装歩兵隊。だがそれも終わりを迎えようとしていた。
孫堅「孫文台の首が欲しくは無いのか!ここにいるぞ」
劉備軍のもう1人の大将首である孫堅の出現。これにより、均衡が崩れた。四方八方から取り囲まれじわりじわりと討ち取られていく重装歩兵隊。
桓鄰「よう頑張った。よう付き合ってくれたな。すまん」
桓鄰重装歩兵隊長「何をおっしゃられます。これも全て、交州を守るため。本当の簒奪者からね」
桓鄰「フッ。兄上が正しいのならだがな。さぁ、行くぞ。ここが我らの死に場所と心得よ。動けるものはワシに付いてこい。狙うは敵大将首が1つ孫堅の首よ」
孫堅「ほぉ。俺に挑むか。面白い。相手をしてやろう」
桓鄰「この蒼梧は絶対に渡さんぞ。うぐっ」
孫堅「俺に挑む胆力とその国を守る心意気、見事であった。お前のようなものがどうしてあのようなやつに付いたのか。それだけが悔やまれよう」
桓鄰「ぐわぁ(兄上、先に行く不忠を許されよ)」
孫堅「敵将、桓鄰。孫文台が討ち取った」
城壁の決着と同時に開いた城門。
衝車隊「よっしゃ。開いたぜ。グワァーーー」
雁門「まだだ。まだ負けてない。お前たち、武器を取れ、門がないなら自分たちを盾として、敵を阻むのだ」
張飛「敵将ってところか。おーし。久々に暴れてやるとすっかよ」
雁門「その髭面にボサボサの髪、お前が劉備の義弟として名高い。何だったかな」
張飛「まぁ、そりゃ。兄者に比べたら知名度ねぇのかもしれねぇけどよ。なんだよその覚え方は!ふざけんじゃねぇぞ。この怪力馬鹿が」
雁門「あぁ?この俺が怪力馬鹿だと。言ってくれるじゃねぇか。相手してやるよ」
諸葛亮「流石、張飛殿。挑発で敵将と一騎討ちに持ち込むとは」
劉備「ん?そうではないぞ孔明。あれは翼徳の素だ」
諸葛亮「へっ?」
張飛「すぐ仕留めてやっからよ。覚悟しろよ」
雁門「それは俺の台詞だ!」
張飛が力負けしていた。
張飛「うおっ(流石に水樽、あんだけ運んだ後はちと辛ぇな)」
雁門「どうしたどうした威勢だけか。髭面」
張飛「その呼び方はやめろってんだ。これでも妻からは好評なんだぜ。チクチク当たるのが良いですってな」
雁門「物好きな女もいたものだな!さぞかしお前に似て不細工なのであろう!」
張飛「あっ?テメェ、今なんつった?もう一回言ってみろよ」
雁門「何度でも言ってやろう。お前に似てさぞかし不細工なのであろう。グフッ」
張飛「俺の妻が不細工だと!ふざけんな!誰よりも心も綺麗で、俺なんかにゃもったいねぇ妻だよ。ってあれ。おいどうした。返事しろや!」
張飛の怒りの一撃により雁門は絶命していた。
張飛「おいおいマジかよ。月姫、お前は本当にすごいな。こうして力をくれんだからよ。敵将、燕人張飛が討ち取った。早くあいてぇなぁ月姫によ」
張飛は誰よりも夏侯月姫のことを愛していた。だから自分のこと以上に馬鹿にされたことが許せなかったのだ。水樽を運びすぎて満身創痍の張飛にとてつもない力を与えた。その一撃は、雁門の身体を軽々と貫いていたのだから。桓鄰・雁門の死によって、蒼梧は事実上の陥落。城内で合間見える劉備と桓治。
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