朱崖の戦い(前編)
劉備軍が朱崖郡に着く。しかし、相手の兵装を見て驚く。
劉備「なんだあれは?手にはクワ?頭には鍋か?」
孫堅「あちらの奴の手には、料理で使う中華包丁に、身体には鉄板を巻き付けているのか?」
諸葛亮「ここにいる者は兵ではなく民なのでしょう」
劉備「ならば、これも士祇の作戦か?」
孫堅「だろうな。我らに殺させて、民に奮起を促したいのだろう」
諸葛亮「それは間違い無いでしょう。ですが、あの布陣、何かがおかしい。それに付け焼き刃に見えるかもしれませんがあのような建築物見たことありません」
諸葛亮がそう思うのも無理はない。石を積み重ねて、その上にまるで城のようなものが立っていて、周りには木で骨組みを作り、三角屋根があり、等間隔に石の柱が立っていて、その陰には手作りをしたかのような弓を持つ人が見える。
劉備「あれはどうやって登れば良いのだ?」
孫堅「城なら門があるはずだが門がないな?」
諸葛亮「それにあの周りに点在している三角屋根の建物。恐らく村の中心に作っているかと」
趙雲「なら村を制圧しなければ、あの城には入れないということなのでは?」
張郃「相手が無為の民だとわかっていて攻めねばならないのでしょうか?」
その時、女性の声で大きな声が響く。
姫「強姦王劉備、私の身体目当てにこの村に来たのなら残念だったわね!私たちは屈さない。死ぬまで抗うわ。わかったらとっととここから立ち去りなさい!」
劉備「強姦王?私がか!?」
孫堅「士祇もとんでもない噂を流すものだな」
諸葛亮「確かに殿には、正室の芙蓉姫様・甘梅様・麋桃様の他に側室の馮方女様・鄒豊麗様・侯姚様・孫尚香様と他にも居ますが。女癖が悪いという噂が強姦王という噂に変わったということでしょうか?」
趙雲「殿に対して、なんたる愚弄か!許せん!」
張郃「国を治める者として、多くの女性を囲うのは当然のことです。庇護しているだけで強姦呼ばわりとは、許せません!」
魏延「あの女の首を即刻刎ねてくれる!」
劉備「待て、私のためにお前たちがそこまで怒ってくれるのは嬉しい。だがあれは目に見えての挑発行為だ。恐らくこちらに突撃させたいのだ」
諸葛亮「えぇ、玄徳様が冷静で安心しました。あの至る所に見られる地面の盛り上がり、何かを仕込んでいるのは一目瞭然。こちらを挑発し、そこに誘導するつもりだったのでしょう」
姫は劉備軍が乗ってこないのを見て、民たちとどうするべきか話し始める。
姫「ねぇ。なんで挑発に乗ってこないの?」
民男A「知りませんよ。むしろ言われすぎてて響いてないとかじゃないですか?」
民男B「いや、周りの奴らはこちらに来る勢いに見えたけどな。それを止めたのが虐殺王だった気がするぜ」
姫「こうなったら、なんとしても強姦王を誘き寄せるのよ。じゃなきゃ、せっかく作ったあれが役に立たないじゃない」
民男C「姫様、アイツら地面の違和感に気付いたみたいだ。長槍で突き始めてる」
姫「何ですって!せっかく、縄を杭で打ち込んで、それを切るだけで機能するようにしたのに。なんて事するのよ。このままじゃ、私の貞操が強姦王に。それだけは絶対に阻止よ」
民男E「(やはりアイツは戻ってこないか。本当に村を出たのか?いや、木こりが木を切ることを反対して村を出るはずがない。今にして思えば、姫様ができてからだな。村長が姫様に手を出そうとするものを喰らうという噂が広まったのは。何か関係があるのか?)」
姫「みんな。絶対に近付けさせちゃダメだから!ダメったらダメなんだから!」
民男A「いやいや俺たちですらここまで登るのに苦労するのに、相手がわかると思います?扉はあるけど擬態していて、俺たちですら探すのに苦労するのに、パッと見ただけで気付くわけありませんよ」
姫「万が一があったらどうするのよ!」
民男B「そん時は、ここから飛び降りたら死ねますよ」
姫「嫌よ。死にたくないもの。これに載ってる美しい城を作るまではね」
民男C「はいはい」
劉備軍は地面の盛り上がり部分を長い槍で突くことで、確認していた。
諸葛亮「あの土の盛り上がり、何かあるのは明らかでしょう。あの城といい何かわからない以上、遠くから様子を見るのが良いかと」
趙雲「ならここは、常山の趙子龍に任せてもらおう。鮑隆・陳応・夏侯蘭、至る所にある土の盛り上がりを長槍と弓にて、潰すのだ」
鮑隆「了解だ。陳応、どっちが多く潰すか勝負としよう。新人は黙って見てな」
陳応「負けんぞ鮑隆」
夏侯蘭「これでも子龍とはガキの頃からの付き合いだ。俺からすればお前たちの方が。いや失礼した先輩方。だが心配は無用。その勝負、混ぜてもらうとしよう」
鮑隆も陳応も土の盛り上がりに弓を打ち込むが何も起こらない。
鮑隆「ん?本当に土が盛り上がっているだけか?」
夏侯蘭「近づくな!縄だ縄を狙え!」
陳応「新人が偉そうに指図しやがって」
夏侯蘭は用心深かった。長槍を持ち馬に跨ると先ずは周りを注意深く観察した。そして、土の盛り上がりより離れたところに縄があるのを見つけたのだ。鮑隆が離れたのを見るとその縄に槍を突き刺した。すると土の盛り上がりから柵が飛び出してきたのだった。
鮑隆「うおっ!?あの位置にいたら今頃、俺串刺だったのか?」
陳応「なんなんだこれは?こんなものどうやって作ったっていうんだ?」
夏侯蘭「我らの知らない建築の数々。迂闊に手を出していれば負けるのは我々だったであろう。臥竜と名高き諸葛亮軍師のお陰だな。勝負は俺の勝ちでいいかな先輩方?」
鮑隆「おっおぅ。命も救ってもらったんだ。すまなかったな新参と罵ってよ」
陳応「こちらもすまない。新人と侮っていた」
夏侯蘭「気にしないでくれ。子龍のことを支えてくれる仲間がいることは嬉しい限りだ。(あの頃のアイツは英雄などと呼ばれて肩意地を張っていたからな)」
夏侯蘭の用心深さのお陰で、無事に地面から飛び出してくる柵の罠を解除することに成功したのだった。
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