朱崖郡を治める村長の狂気

 朱崖郡には城と呼べるものはない。村々が点々としているだけである。それゆえ、姫と呼ばれている女は、それらを砦らしく改装した。

 民男A「こんなの意味あるんですか?」

 姫「敵は迅速に落としたいと思っているはず。十中八九、馬が多いわ。なら、どう対処すれば良いと思う?」

 民男B「さぁ、知りませんよ。そんなこと」

 姫「そこでこの突如として現れる棘の柵よ」

 民男C「ハァハァハァ。ですがこれ1人じゃビクともしませんぜ」

 姫「当然よ。この柵は皆んなで引っ張って、機能させるんだから」

 民男C「そうなんですか?そりゃビクともしないわけだ」

 民男D「こんな付け焼き刃みたいなのを実戦ですぐに使えるのかねぇ」

 姫「使えないと困るわ。じゃなきゃ。みんな劉備軍に殺されて、私は好きでもない男に貞操を奪われちゃうもの」

 民男D「その前に俺たちが」

 民男E「やめとけ。村長に喰われちまうぜ」

 民男D「そうだな」

 姫「お父様が皆んなを喰うわけ無いじゃない。私の可愛さにそう言ってるだけよ。それに絵本の中に出てくる歩く屍じゃあるまいし。まぁ、あんなのいるわけないけどね」

 村長「ホッホッホ。どんな感じかな私の可愛い姫や」

 姫「はい。お父様、これで劉備軍を皆殺しにして差し上げますわ」

 村長「全く頼もしいわい。そうじゃ、お前さん、手伝ってもらいたいことがあっての。悪いが付いてきてくれるかの?」

 民男D「俺ですか?」

 村長「そうじゃ。娘のことで話がな」

 民男D「わかりました」

 上機嫌で付いて行った民男Dであったが村長の家の地下室で生きたまま開きにされた。

 村長「ワシの可愛いモノに手を出そうとする輩には死んでもらわんとな」

 民男D「あががががが。俺の身体、どうなって」

 村長「まだ息があるのか。凄い精神力じゃな。まぁ、まだ身体を開いただけじゃがな」

 民男D「身体を開いた?なんで?」

 村長「聞いとらんかったんか?ワシのモノに手を出そうとしたからじゃ」

 民男D「あの噂は本当だったのか」

 村長「今更ジタバタしたところで遅いわい。それに動いて、何処か傷付いては敵わん。特に人間の心臓の肉は一番美味いんじゃ。まぁ生き物は何でも心臓が一番美味いがな」

 民男D「へっ?あばばばばばばば」

 村長「よいしょ。綺麗に取り出せたわい。いつ見ても、美味そうじゃ。いかんいかん。肉は、新鮮さが大事。すぐに焼いて食わねばな」

 ジュージューと焼ける人肉。

 村長「かぁ〜。この音だけで、気分が上がるわい。さてさて、お前の味はどうかな。美味い。やっぱり生きたまま。新鮮な肉は美味いわい」

 民男Dのあらゆるところの肉という肉は食べ尽くされ。骨と皮だけになった。

 村長「人間の皮は、硬くて食えんが処理に困る。不味いものを仕方なく食べるこの時間は憂鬱じゃ。人間の皮も鳥の皮みたいにパリパリになってくれれば良いのじゃがの」

 そして骨だけが残る。

 村長「よし、後はこの骨を砕いて、畑にばら撒くだけじゃ。骨も良い肥料になるんじゃ。まさか人間の骨とも思うまいからな。ヒョッヒョッヒョ」

 処理が終わると何事もなかったかのように皆の前に姿を表す村長。

 民男E「あれ、アイツは一緒じゃないんですか?」

 村長「あぁ。頼み事をしたらこんな村出て行ってやると言われたよ」

 姫「お父様、少しお若くなりました?そんなわけないですわよね」

 村長「今日は、皆が持ってきてくれた自然薯を食べたからのぅ。それで少し若く見えているのかも知れんのぅ」

 姫「成程なのですわ。それにしてもどんな頼み事をしてのですか?」

 村長「なーに、劉備軍と戦うために木材を費やしたからのぅ。ちょいと補充を頼んだのじゃが。そんな量を集められるか。やってられるかと言われてしもうてな。仕舞いには、劉備軍と戦うなんざ真っ平ごめんだと出ていってしもうたわ。可愛い姫や。すまんのぅ。貴重な戦力を1人失ってしもうた」

 姫「良いのですわ。それにしても木材集め如きで名を上げるなんて根性が足りないのですわ」

 村男E「(アイツは木こりだったはず?木こりが木材集めが嫌で村を出るなんて言うか?何かおかしい。でも咎めたらどうなるかわからねぇ。黙っているしかない)姫様、これはどこに?」

 姫「それは、ここにそしたら綺麗にハマるでしょ?」

 民男E「本当にハマりましたな」

 姫「もう。ちょっとぐらい信用してよね。武芸だけじゃなくて建築も一流なんだから」

 村長「ホッホッホ。昔、可愛い姫のために何処の誰が書いたかわからない本を渡した甲斐があったわい」

 姫「空から降ってきたとお父様が言ってましたわ」

 村長「うむ。突然降って来たのじゃ。もう少し、後ろだったらワシはこの世におらんかったかも知れんのぅ(あの時に降ってきた絵本のお陰で、人肉の美味さに気付いたしのぅ。それにしても歩く屍が人間の肉を喰らう様たるや。久々の刺激に興奮したぞい。書いてある言葉はわからなかったが。絵が最高であった)」

 姫「それにしても。言葉を理解するのにだいぶ苦労しましたわ」

 村長「姫よ。あの書かれている言葉がわかるのか?」

 姫「えぇ、お父様が一緒にくださいました。誰でも読める書けるカナ文字辞典というもので必死に勉強しましたわ」

 村長「そんなものが。後でワシに貸してくれんか?」

 姫「勿論ですわ。お父様も興味を持ってくださって嬉しい」

 村長「ホッホッホ(言葉を理解すれば姫が泣きながらこんなの嫌と返してきたあの絵本がよりわかるであろう。人肉についてもっと美味しくなる調理方法とか書かれているかもしれんしのぅ)」

 その頃、お空の遥か上の方では、とある男がしでかしてしまっていた。

 パラレル甘氏「あの世界に本を落としてしまったと?」

 ???「はい」

 パラレル甘氏「何してくれちゃってんのよ!オーバーテクノロジーすぎる本でしょうが。そして、ご丁寧にそれが読めるようになるかもしれない仮名文字辞典まで落としたと。何してんのよ!」

 ???「徹夜で話を考えていたので」

 パラレル甘氏「言い訳をしない!ていうか。なんで最近義賢ちゃん、死なないわけ?お陰で私のこと皆んなから忘れ去られてるよね?ちゃんと出番増やしてって言ったよね?」

 ???「その。ちょっと軍師が増えすぎたと言いますか。なんか回せちゃってるんですよね。アハハ」

 パラレル甘氏「だから引き抜く数は考えなさいって言ったじゃない!」

 ???「仰る通りで、でもそれは全部、私の弟として、急遽選んだアイツが凄かったと言いますか」

 パラレル甘氏「そもそも、アタシ。アンタのこと許してないから。曹操に追われるたんびに妻を見捨てて逃げる旦那とか無いわ。全然無いわ」

 ???「それはそのな。仕方なかったと言うか」

 パラレル甘氏「それにアンタさ。自分のこと脚色し過ぎだから。何、義弟たちより強かったって。一度も勝ってるところ見たことないんだけど!」

 ???「全く仰る通りです。こうだったら私も天下を取れたかなと」

 パラレル甘氏「まぁ良いわよ。脚色は大事だしね。後、意味わからないのはアンタのペンネームよ。何、揚惇命って」

 ???「まぁ袁術を倒した時に曹操に渡さずに揚州を奪取してたら世界が変わったかなって想いがありまして。それにまぁ曹操の懐刀の夏侯惇は博望波で対峙した時にチビるぐらい怖かったので、後、やっぱり義弟たちのために最後は命を投げ出しましたが、命は大事だよと。それらを合わせたと思っていただければ」

 パラレル甘氏「意外とちゃんとしてたのね。で、落とした本って何?」

 ???「戦国武将たちの建築術。かつて世界に存在した武器の使い方。身体を強くする呼吸方法。ゾンビ戦争」

 パラレル甘氏「どんだけ落としてんのよ!それに1番最後のだけ、ピンポイントで意味わかんないんだけど!」

 ???「申し訳ございませんでした」

 なんてことが天界と呼ばれるお空の上で繰り広げられていることは誰も知らないお話である。

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