二十一年 十二月  「麗らかな川辺」

 「うららか」は春の季語です。傍題には「うらら」「うららけし」「麗日れいじつ」があります。本意は、なごやかな春日に万障玲瓏ばんしょうれいろうと晴れ輝くさまです。(歳時記・春・角川書店)

  (素朴な疑問)ばんしょーれいろー、って何?

  (答え)すべてのものが透き通る宝玉のように美しいこと。

  (ポイント)春といえば透明感とキラキラ感。

写真は、広い川の両岸に遊歩道のような道が伸びる近景と遠い山並み。颯爽とした犬の横顔。「やあ、麗らかだなあ」と独りごちしているのは、おそらく、この犬。



   花冷えや君のマフラー暖かし 


  春まだ浅い日のこと。川沿いの遊歩道を愛犬のモッサンと散歩していると、最近よく見かける少年とまた出会う。いつもは恥ずかしくて会釈だけして通り過ぎるのだが、今日は向こうから話しかけてきて、少しだけ話した。学校は違うけど同い年だったのが嬉しかった。帰ろうとすると、寒い川風が吹いてきて思わずオヤジのようなクシャミが出ちゃって、超絶恥ずかしくて全速力で帰ろうとしたら、彼が自分のしてたマフラーを貸してくれた。嬉しくて、借りたマフラーがなびくほど走った。

 季語は「花冷え」です。選外ですけど何か?



   サンダルで畦にしゃがむ子蝌蚪の渦 ☆並選


 いま立っている景色を見渡す場所から程近いところに田んぼが広がっていました。もう田植えが済んで青々した苗が等間隔で並んでいます。その畦にサンダル履きでしゃがみ込んでいる男の子がいました。夢中で水中をのぞき込んでいます。その坊やが息を止めて夢中でみていたのは「おたまじゃくし」でした。それもチューブみたいなのに繋がって入ってる! これはショック! 「渦」としましたが「紐」のほうが良かったかな。

 季語は蝌蚪かと。オタマジャクシのことですよ。今回初めて知りました。きっと昔の俳人が詠みやすいように縮めたに違いない。と一人悦に入ってたら「サンダル」が夏の季語だったー。ガックシ。並選でした。



   子供らの柄杓ひしゃく触れあう花御堂はなみどう ☆


 一度行ってみたいと思っているのが、どこかのお寺の花御堂です。どこかって言ってもどこでもいのですけど、飾り付けが華やかなところが良いなあ。お釈迦様の誕生日に仏教徒はお祝いするんですよ。キリスト教徒と日本人がキリストの御誕生日にお祝いするように。四月八日のその日を「花祭り」といいます。いろいろ飾り付けた花御堂に赤ちゃんのお釈迦様を安置して、みんなで甘茶を掛けるのですって。

 甘茶というのは、なんと紫陽花のお茶です。(ヤマアジサイの甘味変種だとGoogleさんは仰るのだけど、わたしの参考書には木甘茶の葉と萱草の根を煎じたものとあります)ここは後日掘り下げるとにして、季語は花御堂、句の意味は御釈迦様の御誕生日に子どもたちが競って甘茶を注いでいます、です。並選でした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る