第3話 合衆国大統領

西暦2045年 9月  新世界歴0010年




アメリカ合衆国 ワシントンD·C ホワイト・ハウス


第49代アメリカ合衆国大統領 キャサリン·ウバルド大統領執務室


トム·ウェンズリー主席秘書官がキャサリン大統領に次期大統領選挙の世論調査の結果を報告に来ていた


「以上の結果から、大統領の勝利は揺るがないと言えます」


「そう ありがとう それよりもあれは、どうにかならないの?」


「あれと申しますと。。。アイオーンですか?」


「JAXAも、とんでもない物を隠し持っていたものだわね」


「間違いなく、今世紀最大の発見、いえ人類史上最大の発見と言えますね」


「1国家が独占していい代物ではないわよね」


「微妙な問題ですね 宇宙空間に存在する物の権利は宇宙条約1条で誰の所有にも属さず、持ち帰ることを禁止されていません」


「確か宇宙空間の探査や利益は平等で人類の共同財産とみなされるのでは?」


「それは、月協定の話ですね 国際法に訴える事も可能ですが それをしてしまうと我が国の月でのヘリウム3採取の方が明らかな協定違反になりかねません」


「20年以上も宇宙法を放っておいたのが問題ね NASAとの共同研究を持ちかけてはどうかしら?」


「やってみますが、望みは薄いかと思いますが なにか大きな交換条件が必要かと」


「どうしてもアイオーンが必要なの、あれがどんな病気でも治せる可能性があるなら。。。考えられる条件を


すべて検討してみて」


「わかりました」立ち上がり、部屋を後にするトム


『どうにもならないと諦めていたのに、助けられる可能性があると知ったら。。。悪魔とも取引をするわ』




西暦2045年 9月  新世界歴0010年




JAXA相模原キャンパス プロジェクト·アイオーン神宮寺研究室 室長室


「NASAから共同研究を打診してきたそうですが、どうされるのですか?」白河玲子博士が聞いてくる


「その件だけどね、まずは、視察を受け入れることにしたよ」


「あらっ てっきり断るものだと思っていましたわ」


「国内では、手に入らない実験体を提供してくれるというのでね」


「それで上機嫌ですのね」つられて笑顔になる 白河


「僕たちが、どのくらいのダメージで絶命するのかを、把握しておかなくてはね」




西暦2046年 1月  新世界暦0011年




横田米軍航空基地に米軍の長距離輸送機C-17が着陸する


降り立ったのは、手錠·足錠で自由を奪われた死刑囚6人


それらを監視するための人員が3名 


大統領秘書官ブラッド·ペイトン 


アメリカ航空宇宙局(NASA)の職員が4名


車椅子に乗せられた10歳ほどの少女と、それを押す成人女性の合計16名が


深夜の滑走路で数名の空軍将校らに迎えられた


「明朝、JAXA相模原キャンパスまで、お送りします それまで部屋を用意してありますのでお休みください」


将校の一人が姿勢を低くして、車椅子の少女に告げる


少女の名は、エブリン·ウバルド 


アメリカ大統領キャサリン·ウバルドの娘である




翌朝 JAXA相模原キャンパスの地下駐車場へと滑り込む米軍用車両と一台のリムジン、この駐車場から神宮寺研究室には直接アクセスができ、そこからさらに地下へと降ることでプロジェクト·アイオーンの核心


アイオーン照射室と、それに伴い経過を観察するための様々な部屋が存在する


「ようこそ私が神宮寺です」少女の目線まで腰を落とし、右手を差し出す


「はじめましてエブリンと言います よろしくお願いします」


「はじめましてエブリン 私は、白河玲子よ あなたのカルテを見たわ 何度も手術をしてきたのね


 でも もう大丈夫 私達が治してあげる」そう言うと、車椅子を押し 奥の部屋の扉を開ける


「さてブラッド・ペイトン秘書官、お待ちしていましたよ」


「はじめまして神宮寺博士、ウバルド大統領よりくれぐれもよろしくお願いしますとの事です


 それとこちらが、6人の死刑囚の資料になります」


「ありがとう まぁ名前は必要ないが、犯罪歴には目を通しておきますよ 良心が傷まずに済む」


「そしてこちらが、NASAのネルソン博士、オマリー博士、マチルダ博士、カーター副長官になります」


それぞれと握手をし研究所内の視察の許可をする


「今後のスケジュールですが、死刑囚の6人はアイオーン照射後に米軍横須賀基地のジェラルド・R・フォード級航空母艦バラク・オバマ内の研究施設に送ります 7月迄停泊予定ですので半年間は施設を自由にお使いください


カーター副長官は1週間、3名の博士は、未定ですが最大で半年の滞在 エブリンお嬢様と付き人は経過を見た後


横田基地より私と共に帰国します」


「半年とは、ありがたい では早速アイオーン照射室に案内しましょう」


階段を降り 壁も床もすべてが白いエントランスにソファーとテーブルが置かれ 左手の壁には大きなガラスが、はめ込まれ その奥に一辺3メートルほどのガラスで覆われた部屋の中に死刑囚達の様子が窺える 正面に金属製のセンサーパネルが備えられた扉が2つ並び


右手に伸びた廊下の両側にも複数の部屋が存在するようだ


「NASAの皆さん、こちらへどうぞ」正面に並んだ左側の扉が、神宮寺博士の網膜を読み取り開く


中へと入るとエントランスと同じように左手の壁にガラスがはめ込まれ、ガラスの部屋に居る 6人の死刑囚達を確認することができる


様々な機器が壁一面に並び、3人の職員が機器の前に座り操作をしている


「今から、この6人同時にアイオーンを照射します あの天井に備え付けられた機器の先端にアイオーンが埋め込まれており 上部の機器から、ある周波の光がアイオーンを透して照射されます 一瞬で終わりますのでお見逃しなく ではお願いします」


パッとまるでカメラのストロボの様に赤紫色の光が死刑囚たちに照射される


「いろいろ質問もあるでしょうが、後日でお願いします これで彼らは、あらゆる病や老化からも解き放たれた存在となりました 続いてキャサリンお嬢様ですね」


6人の死刑囚が別室へと移され 車椅子のエブリンと白河玲子がガラスの部屋へと入ってくる


「神宮寺博士 お願いがあります 私をあの中に一緒に入れていただけないでしょうか?」


ネルソン博士が切迫した様子で神宮寺に詰め寄る


「う〜ん 私は構いませんが NASAに戻ったら、モルモットにされるのでは? もしかしたらですが不死かもしれませんよ 愛する人が死んでいくのに自分だけ死ねないというのはどうなのでしょう? まぁ 可能性の話ですが」


「構いません! あと1年もない命と主治医に宣告されています 結果を出せていない研究がいくつかあるのです


それらを残しては、死んでも死にきれません」事情を初めて知った、他の職員が目を見開いて驚く


「その気持ちは、わからなくも無いのですが。。。では、こうしましょう あの死刑囚を使った実験に協力していただけるのでしたら許可しましょう」


「奴らは、子供まで殺した殺人者です どんな実験でも拷問だろうが喜んで協力しましょう」


「他の皆さんは、どうします」ニヤリッと笑う 神宮寺






























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