【転売ヤーは滅ぼせる!】後編~科学の力が転売ヤーを淘汰する~

エテルナ(旧おむすびころりん丸)

【転売ヤーは滅ぼせる!】後編~科学の力が転売ヤーを淘汰する~

前回は転売ヤーを滅ぼすことがいかに難しいかを説明しました。


法を決めるにも境界線設定が難しく、既存の市場システムに多大な影響を及ぼしてしまう。企業も受注生産の弊害や供給過多のリスクがあるなど、口で言うほど簡単には対策を行えない実情があります。

また幾ら対策を行えど、法にも企業努力にも抜け道があり、別のやり方で儲ける手口を見出すでしょう。いったん転売ヤーの手に渡れば、あらゆる方法で売却することが可能なのです。


転売させない為には、そもそも転売ヤーに売らなければ良い訳で、これは既に販売個数制限などで、単店単位で実行しています。

他にもユニークな例として――


・商品に関する質問に答えられた人だけに販売する。

・ゴスロリ服の販売店において、ゴスロリの服を着てる人のみに販売する。


また、転売するにあたって価値の下がる方法で販売する場合もあります。


・トレーディングカードの袋の端を開封する。

・プラモデルのパーツの切り取り部分にハサミを入れる。


新品でない状態にすることで、売却の価値は下がりますが、真に欲しい人にとっては全くなんの痛手でもありません。

またトレーディングカードについては、未開封であれば小売価格以上で売れるはずが、中身が見えてしまうことで、カードのレアリティ次第の博打に転じます。


これらで一定の効果は得られますが、しかしそれでも抜け道は存在します。

前者の購入させない方法は、質問に答えられれば購入できますし、後者はなんと! オジサンがゴスロリ服を着て来店したそうです 笑

後者の価値を下げる方法は、それでも買う人は買いますし、カード開封による博打も、ポケモンカードレベルの人気になると、開封したところで期待値が100%を上回ってしまう可能性が十分にあります。


いやはや、なんとも執念深いですが、そんなさしもの転売ヤーでも、手出しができないものが既に存在します。


【それが電子書籍等、デジタル商品です】


デジタル商品は人に貸したり、あげたりすることができません。また仮にできたとしても、一体誰が小売価格より高値で買うというのでしょう?

電子書籍に実在庫はありません。注文に対する製造コストも供給過多もありません。在庫は無限で、誰しも小売価格で買えるのに、わざわざ高値で買う必要性もありません。


書籍に映画に、現段階では限られたコンテンツにしか影響を及ぼさないデジタル商品ですが、今後はメタバースの発展と共に、巨大な市場を繰り広げていきます。


メタバースとは仮想空間のことです。インターネット上で構築される三次元空間であり、アバターを通して仮想世界に参加します。

外部刺激のデバイスから、能とコンピューターを繋げるBMI(ブレインマシーンインターフェース)に移行すれば、まるでリアルの世界にいるような没入感を楽しめるようになるでしょう。

2021年でのメタバースの経済規模は4兆円ほどですが、今なお急進的な成長を遂げており、2030年には総務省予測で80兆円、人によっては650兆円まで拡大するだろうと期待されております。

このような世の中ではメタバースの中で扱える物品の需要が増し、取引が増大していくことが期待されます。


【しかしその市場に、転売ヤーの姿はありません】


さきほど挙げた電子書籍同様に、転売ヤーはデジタル商品に手出しできません。

また、生産数の価値は無くなるものの、物品自体のレアリティというものは残すことができます。


例えば、メタバース内で使えるトレーディングカードをデジタル商品で販売したとしましょう。

それはいわゆるガチャと同じように、レアカードの出る率が決まってます。デジタル商品にはNFTという、唯一無二の価値を持たせる技術があり、それを使えばデジタル物品にコピー不可能なレアリティを持たせることができます。


そして、それらがメタバース内で個人売買ができるようにしたとしても、レアカードを狙った転売目的で大量購入したとしても、トレーディングカードのパックの供給自体は無限である為、ファンが在庫切れによって購入できない事態には陥りません。

転売行為が嫌われる理由として、レアカードが出品されているというよりは、パックそのものを適正価格で購入する機会すら与えられないというところでしょう。


ゆえに、どうしても狙いのカードが欲しい人だけが、割増の価格でレアカード買えば良く、けれどもそのほかの大勢は、通常のパックを買って楽しめばいいわけです。

更に言ってしまえば、皆に購入の機会が与えられている以上、レアカード狙いの転売行為は確実に期待値100%を割り込む博打に突入します。


【つまり絶対に儲からない】


楽しんで購入している人が、ダブったカードだけを転売する。そのような健全な形での取引しか行われません。

パチンコビジネス、競馬ビジネス、宝くじビジネスと言わないように、転売ビジネスという言葉が消失し、それでも儲けようとする行いは、転売ギャンブルという娯楽に変わり果てます。


しかしゲームならともかく、トレーディングカードやプラモデルまでが仮想空間で流行るかどうかを疑問に持つ方もいるでしょう。

実物でないのなら、その価値は半減するだろうと――


けれど、仮想空間だからこそ生まれるメリットも存在します。デジタル商品は楽しむことが目的のユーザーにとって、実物であること以上の恩恵をもたらしてくれます。


例えばトレーディングカードゲーム。仮想空間内でプレーする際には、まるでカードゲームのアニメのように、カード内のキャラクターが実像となって現れます。

戦うフィールドもカード効果に合わせ、体感できるレベルで変化します。

このような表現が仮想空間では可能であり、ゲーム自体を楽しむユーザーにとって、これほど魅力的なことはないでしょう。


例えばプラモデル。何分の一スケールではなく、実物大のプラモを作れます。戦艦大和も零戦も、ガンダムにも搭乗できますし、個々人によるカスタマイズも可能でしょう。

所有者同士で戦うことも可能ですし、傷付き大破しても、ゲームが終われば新品に戻ります。当然プラモサイズに縮小可能で、工作をしたい方や眺めて見たいだけのユーザーの期待にも応えられます。


カードもプラモもデータ上の存在の為、NFTを使えばチートや違法改造はできず、公式のものしか使えません。


これらが実現されれば、大多数のユーザーはデジタル商品に移行すると思いませんか? それとも皆、旧きモノが良いと考え、実物が変わらず隆盛し続けると思いますか? 時代の流れには逆らえず、ゲームボーイやガラケーや盤上ゲーム同様に、昔と今とで変わらない人気を誇るものはありません。


それでも一定数の現物主義者は残るでしょうが、しかし最も儲かる転売は巨大な市場に乗ることであり、それがデジタル化している以上、マニアしか存在しない小規模な市場でしか戦えなくなります。

加えてマニア向けの商品ならば売れる数の見込みも立てやすく、企業はそれこそ受注生産にしてしまえば良い訳で、マニアなら必ず期間内に買いますから、これまた転売ヤーは手出しできません。


唯一高騰する可能性があるのが、VR機器そのものです。

仮想空間に入る機材は必ず必要で、需要が増すごとにデバイスの価値は高まるでしょう。

しかしこれも、いずれは転売ヤーに手出しできないものに成り果てます。

なぜなら侵略型、非侵略型を問わず、デリケートな脳と結びつけるタイプの機材が出た場合、特殊な販売許可が必要になる可能性が高いからです。BMIに至っては手術が必要な場合があります。

フリマサイトでの販売はもちろん禁止されますし、譲渡も許されません。

また、公には行動できるモラル違反の転売行為と、見つかれば捕まる犯罪行為では、売却への敷居に明確な違いがあります。

そもそも購入時に、ユーザーの生体データ認識を必須とするようにすれば、他人の機材には何の価値も生み出せません。


これでホビー関連の転売はほぼ死滅します。

残るは現物を売るしかない商品、医薬品や食料品、衣類などがあります。長くなり過ぎたので、これについては次回に回しましょう。


※おまけ

もしメタバース仕様のデジタルトレーディングカードが出た場合、既存のカードは恐らく大暴落します。

市場がそちらに移ると判断した者が先んじて売り始めると、敏感な者たちが追従し、カードショップの買取価格にも反映されれば、あれよあれよと逆オークション状態……価格はあっという間に下落します。

これがいわゆるバブルの崩壊で、カード自体に本質的な価値がなく、信用だけで価値が上がっている怖さです。

ポケカ投資と言いますが、あれは投機でありギャンブルで、決して投資ではありません。

真に投資することは、例えばポケモンというコンテンツ自体に投資することであり、ポケモンの株を買えば、ポケカが大暴落したところで売り上げはデジタル商品に置き換わっただけであり、会社としての本質的な価値は向上しています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【転売ヤーは滅ぼせる!】後編~科学の力が転売ヤーを淘汰する~ エテルナ(旧おむすびころりん丸) @omusubimaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ