第2話 Rich Tongus Girl (多くの舌を持つ女)編



第二話



(早くもタイトル回収会です)


「はあぁぁ 結局俺が行くのかぁ なんか毎回やっとる気ぃするし、こういう時は大体依頼人が、、、」


とユウが買い出しから帰りつつ店先(事務所の玄関)を見ると


「おおっ! 珍しいな、これは  まっ早いとこやるかねえ」


意外なことに依頼人が使うであろう車が止まっていないので意気揚々と入って行く

そして1時間と少し

カチャッ カチャッ ドン! パカンッ

カレーが出来上がりテーブルに鍋ごと置き、蓋を開ける


「やっぱり依頼前はこれだよなぁっとぉ ホイッと まずはマシロの分、、、」


と全員に取り分け、さぁ食べようと全員がカレーに完璧に意識が向かった瞬間

ピンポーン ジジジジジと鳴った後  イライニンサマガトウチャクシマシタ

とアナウンスが流れる


((((((またこれからああああ!!!!))))))

と思いつつも流石に居留守を使うわけにもいかないすぐに行くかあ と、いつもならなるのだが今回はいつにも増して事前の準備の内容が大変だったためそうもいかない


「「だあああああ!!  いらっしゃいませえええ!!!」」 ドガッ バギィ ズガッ バタン(ドアをぶち破る音) ドカドカドカドカ(階段を降りる)


辛抱たまらずユウとマシロが助走をつけてドアを蹴り倒しつつ一階まで降り玄関へ走る いつもならガルドも行くが今は飯が関係しているので行かずカレーの片付けをしている フェーダも手伝う ちょこちょこ歩いて食器を持つのを見てセナは和むがドアが玄関まで全て壊れたと思い出しソファーで一人頭を抱える

数分後


「、 こちらです はい」 ギギギ バギッバギッと瓦礫を避けながらユウ、マシロと依頼人らしき女、その付き人が入ってくる 付き人はいかにもこの手の歌手に引っ付いていそうな小賢しそうなやつを想像していたが、そんなことはなくいたって普通そうな雰囲気であった 意外だったのは歌手の方で傍若無人は朝飯前といった感じかと思いきや外見が他とぶっちぎりで良いことを抜けば案外落ち着いていそうな雰囲気である


「はぁい! 改めてまして どうぞいらっしゃいました! 私達、特異事態対策事務所代87支部 受けた依頼は必ず成功させますよ!  そしてこちらがあなた達と打ち合わせを担当する、」

ズガッ ズルズル ポイッ そういうマシロと横にいたユウをセナが蹴り倒し向こうの方に投げ捨て依頼人にソファーに座るよう促し自分も座る

「はい、課長のセナと申します あぁ このバカどもは無視でいいです」

「、、、そうさせてもらうわ  フッフッ 楽しそうなところね  ところで、あのドアって? 」

「まさか襲撃にでもあったんでか? もしそうなら、、」

と付き人がケチをつけようとし始めたためまた頭痛がしつつ

「いえ、ここは一見治安は良くないように見えはしますが 私達の抑止効果もあり意外なほど安全ですので、、、」

「とは言言いましてもね? 実際こうなっているのですから 」


と付き人がいよいよ事をあらだて始めたとき


「来るタイミング悪かった だけ ムグッ!」


どっちがタイミングを考えていないのだ!とセナがフェーダの口を抑える 付き人「タイミング?」と聞くだし、いよいよ面倒になり始めた

しかし横からカレーの入った皿を持ったユウが出てきて言う


「私らは今から飯の時間なんですよ それでついカッとなったな  気になったなら申し訳ない、気にしないでください あなた達はいつもなら飯時に来たからと依頼を断られるところを事前の予約でここにいられているんですよ?  いやなら、今からでも依頼、キャンセルしま、、、グエッ!!」


セナがユウを蹴り飛ばし 落ちていくカレーをフェーダがキャッチし食べ始める


(やってしまった! 所長、たまにおかしな所でスイッチが入ってキレだすけど まさか今なんて!? 今回は大物なのに!!)とセナがどうしたものかと考えていると

依頼人が話し出す


「いえ、あなたに言われるまでもなく 今回の依頼はキャンセルさせてもらうわ、キャンセル料はサービスしてもらうわよ?」


と依頼人が帰ろうとするが ユウが呼び止める ため息をつきながら


「ふぅぅ まぁそれはいいが、じゃあ最後に個人的な質問でもいいか? キャンセル料分だと思ってくれればいい」


と、もう敬語も使わず話す


「何かしら?」


「アンタの歌 それで死んでいく奴らについてどう思う?」


「貴方ねぇ!!」 と付き人が食いつくが依頼人がさえぎる


「まぁ 別に金払いがいいから、とかでもいいんだがね? 時に戦意向上のためのプロパガンダ曲、かと思えば敗戦国のための反戦歌 何を基準にやってんのか、ただ歌と言っても いや、ただ歌だからこそ人に浸透し行動の規範になるとも言える  わかっていないはずないよな?」


「ええ 、あなたの言うところの金払い、後は聞きにきてくれる人達の多い方を選んでいるわ」


即答である


「んっ? 以外な もうちょっと取り繕うとでも思ったが、、、  いや、ウソついた アンタの雰囲気見てそうやろなぁとは思っとった

ああ いや、別にそれを攻めようって訳じゃあねえ 歌手に限らずエンタメ業じゃぁそれでもいいのは確やからな。

まぁ何はともあれ、俺として ちょっとアンタの曲聞いたんだがね? いやぁ案外いいもんでファンってほどじゃぁないが それなりに気に入った」


と話題が脱線しつつ話す


依頼人が返す


「それはどうも、で? この質問、私の考えを聞いて依頼を受けるか審査をしている、そんなところかしら?

依頼はさっき、こちらから断ったはずだけど、 いいわ 私の事 少し話そうじゃないの」


するとユウは急に切り出す


「いや、いい  あぁ違うか、いいえ 結構です 私たちはあなたの依頼、受けさせていただきます」


と言い所員と付き人を困惑させる

付き人が、


「ちょっと! なんなのですか貴方はっ先程から意味のわからないことを言っ、、、、」 

サッ 依頼人に遮られる


「何故かしら?  別に敬語過ぎるのはいいわよ」


そう言われ、何か言おうとした途中で止めて言い直す


「っ、 いや、さっきも言ったが 俺の質問にあっけなく答えたし俺はアンタの歌が気に入った

ついでにさっきの飯時のタイミングの件のストレス解消もできたからな?」


「ついでにもう一つ、今回の依頼内容でここら辺だと、まぁ俺ら以外は受けてくれんでしょうしね?」


と言いセナの方コッソリを向くと、小さくうなづいている 

どうやら周辺の他事務所への根回しには成功したようである といってもここの周辺の事務所は基本的にココと友好的かココの下部組織みたいなものなので大したことではないうえ、今回の依頼は実際に他事務所では恐らく手に余るものであるので当然のことでもある


「、、、噂通りというか何というか、人によってしっかり好き嫌いが別れそうね あなたは。 いいわよ?

では、改めて依頼するわ あなた達に」


と、少し間を置きつつも やはりあっさりと言い、ユウが返す


「はい。 では、依頼人 マニュル・ラッツ様  私達、特異事態対策事務所代87支部は あなたの、一時の"対応力"として ここに あなたの依頼を受託したことを"確定"したものとします」


これを言い切ると いつの間にやらユウが持っていた紙が少し煙をあげ、それを依頼人 マニュル・ラッツに差し出す

紙はどうやら契約書のようなもので先程煙が出た部分にこの事務所の名前と依頼人のなまえが記されている


「さぁ これで、  まぁ今更説明もいらないでしょうが、

契約完了です。」


とユウが締める 

ちなみにその契約書は最近はどこもデジタル系だが一部では雰囲気がいいのだとわざわざ魔術式刻印(一枚日本円で8000円程)を使っている もちろんユウも雰囲気で使っている


マニュルが言う


その後、セナとマニュルが依頼の細かい内容や依頼料などについて調整を行った ついでにユウはこの間壊したドアの修理をやらされていた 一人で!  どうやら今回の騒動で所員をひやひやさせたから だそうである


話も終わり マニュルが話す


「じゃぁ 早速だけど 荷物の運搬、頼みたいのだけど」


「あっ わかりました  ガルドさんも所長も手伝ってもらいますよ?」

とマシロが言い3人で車へ向かう 途中ユウが振り返りソファーに座るマニュルに言う


「そうや依頼人 今回アンタは運が良い  まっ、そっちはどっかり座って俺らの活躍でも見といてくださいよ」


「そうさせてもらうわ って言えればいいんだけど

あいにく私は忙しいのよ? 座ってる暇はないわ  ところで、」


「なんです?」


「その依頼人って呼び方、どうにかならないの?」


人にとって呼ばれるということはその存在をどう認識されているかの確認につながる それも歌手、つまりエンタメ界の人間の彼女にとっては敏感にならざるおえないものである  だからこそ訂正を求めた 自分が頼んでいる、ある意味立場が下であることが妙に気に入らなかったのである

それの思考を知ってか知らずかユウは適当に返す


「あぁ じゃあ、、、 今考えたあだ名でどうでしょう?」


「!!  貴方ねぇ!  そんなこと良いわけないじゃないですか!!」


流石に付き人が反応する


「、、、では普通にマニュルさん とでも呼びます」


「おおい 所長 何やってるんですか! 急いでください!!」


マシロが下から呼ぶ


「あっ では私はこれで」


とユウが言うがマニュルが軽く引き止める


「呼び方、それでいいわ  最後に思いついたあだ名? 聞かせてもらえる?」


と言うので、マシロの元へ足を向けつつ呼びやすさなど微塵も考えずただ彼女の特徴だけをくっ付けた適当な名前を言う




「Rich Tongus Girl (多くの舌を持つ女)」

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