番外編 とある騎士の休日

「ここのご飯なかなかにいけるわね」


 祝賀会中ルーイは、このメンバーの中で一番よく食べていた。どうやら食べることが好きらしい。


「食べること好きなのお前?」


「なに?」


 先ほどルーイに向かって、よく食べるなと地雷を踏んだ俺はここで危険を察知。すぐさま訂正を入れる。


「いや、その色んなお店とか知ってるのかなぁって思ってさ」


「まぁ、それなりには」


「じゃあ、ドーゴンって人がやってる酒場行ったことある? ロックっていう店なんだけど」


「いやないわ。そもそも酒場には滅多に行かないし」


「まじで世界一飯うまいから一回行ってみてくれ。本当に命掛けるレベルで美味いから」


 これは決して冗談ではない。俺はこの世界でそれなりに飯を食べてきたが、やっぱりドーゴンさんのとこの飯が一番美味い。


「そこまでいうなら、気になるわね。なら貴方が案内しなさい。それで美味しくなかったら切るから。それに場所も分からないしね」


「お、おういいぜ? まじで美味いから」


 


「切るのは冗談だよね?」







 

 それから数日後。俺は王都の門の前でルーイを待っていた。今日がドーゴンさんの店に行く約束の日である。どうやらルーイのお気に召してくれなければ俺は死ぬらしいが。


「ちゃんと時間通りに来たのね。遅れたら即刻切ろうと思ったのに残念」


 開口一番何を言い出してるんだこいつ。今日俺を殺しに来ているわけではないよな多分。


「てか、あんた今日は鎧じゃないんだな」


 いつも髪のオレンジ色と同じ色の鎧を身に纏っているルーイだが今日は、青のワンピースに白のブラウスといえばいいのだろうか、それを羽織っており、なかなか女性らしい格好である。剣は腰から下げているが。


「休日まで鎧を着てるわけじゃないわ別に」


「まぁ確かにおしゃれもするわな、良かったよお前も一応女子だもんな」


「一応……?」


「いやいや! とても似合ってる! まぁてか本当に似合ってますよ」 


 女性のオシャレは褒めるべきという教えを幼少期から受け続けてきた俺はこのぐらいのこと言えるようになっている。まぁ現実世界では女性と話す機会がなかったのだが。


「別に、褒めてほしいわけじゃないけど……あ、ありがとう」



「それにしても、この街の雰囲気はのどかでいいわね。王都よりも落ち着くわ」


「王都ってどんな感じなの? この前はお祭り雰囲気だったけど」


「王家や貴族がいるからしょうがないんだろうけど、なんか気が張っちゃうのよね。それに私自身があんまり好きじゃないのよ王都が。この街で生まれていたら、もっと自由に生きれたのかなって」


「大会後も、父親やあの兄はまだ結婚だなんだって?」


「えぇ。別に私の人生なんてどう生きてもいいじゃないの。結婚だって好きな人としたいわ」


 一部の人はルーイの身分を羨ましく思ってたりするらしいが、本人からすれば迷惑な話だ。


「まぁあんたの腕ならすぐに認めされるよ。まぁ俺の方が強いけど」


「次は私が勝つからね!」



「いらっしゃい! なんだナツか」


「おう、でも今日は客連れてきたから」


 ということで俺らはドーゴンの前のカウンター席に着く。


「おう、嬢ちゃん注文は?」


「うーん、あなたおすすめは?」


「おすすめ?全部美味いけど、じゃあドーゴンさん、俺が初めに食べたやつ頼む」


「何? 何頼んだのあなた?」


「まぁまぁ出てきてからのお楽しみよ」


 相変わらず素早い手つきで調理をしドーゴンさんはすぐに料理を完成させた。


「はいよ!嬢ちゃん!」


 そうしてルーイの前に出来立てのピラフのようなものが置かれる。ちなみにこの世界では、ベルライというらしい。


「……ん!美味しい!」


「だろう? 世界で一番美味いって言っただろう?」


「まぁ確かに今まで食べた中では一番美味しいわね。切るのは勘弁してあげる」


「本当に切るつもりだったのかよ」


「なんだナツ、お前いつのまに女なんか作ったんだおい」


「そんなじゃないです!こいつにそんな感情抱いたことなんてないですから!ないないないない!」


「おい、落ち着けってルーイ。ドーゴンさんもからかうなよな。ほらそれ冷めるぞ、速く食いな」


 そういうとルーイは顔を真っ赤にしながらもベルライを頬張り始めた。


 それからルーイが三皿ぐらい料理をたいらげていると、ノアが帰ってきた。


「あ、ルーイさん、ナツも」


「こんにちはノアさん」


「ノアも飯か?」


「そう、早いけど夕飯食べにきた。ルーイさん一緒に食べる」


 よく見れば外はもう太陽が傾いてきている。確かにここに来るまでにも、喋りながらきたから時間が経っているらしい。


「でもそろそろ、ルーイは帰った方がいいかもな。時間が時間だし。ルーイも一応……」


「一応何かしら?」


「大丈夫、ノアの部屋に泊める。だから今日はノアとルーイとナツで過ごす」


「いや、あのその……」


「まぁ良いなら付き合ってくれないノアに。ノアあんま女性の知り合い少ないしさ」


「まぁそれならノアさん、お願いしますね」


 それからルーイとノアはお泊まり会をして楽しんだそうだ。息抜きできたようで良かった良かった。




 

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現実に飽きていたら異世界に召喚されたので、何故か持ってた刀と共に異世界生活しようと思います。 @fullcombo

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