7話 王家の血

 ルイーザ団長から、招待状が届いてから数週間。俺はあれからも、ガルフとの(たまにノアとも)訓練を続けていた。訓練では、刀を使わないことにしているが、それでも最近、ノアには何とか喰らいつけるぐらいには成長していた。しかしノアも恩恵を使っていないらしいので、全力勝負となったらきっとまだ勝てないだろう。

 恩恵についても進化をやはりしていた。最初、この恩恵について分かった時はあまり使える恩恵とは、とても言えなかったが、まぁ少しは使えるものになったのでは?

 

 それから数日間が経ち大会前日に――


「えっガルフたちも来るの?」


「そりゃお前、小僧の勇姿を見ないわけには行かんだろ。それに王都には珍しい酒があるらしいしな」


「ノアもナツ見に行く」


 まぁたまには彼らも観光なりしたいだろう。それに最近、賞金ももらい余裕もあるのだろう。ちなみに、今回の事件でもらった賞金は、ガルフ、ノア、俺で均等に割り勘した。まぁガルフは不服そうだったが、元は俺とルーイの作戦だし、ノアはノアがいなければ俺は死んでただろうから妥当だろう。


 ということで俺らは3人で王都へ向かった。王都への門では、金色の長髪を後ろで結び、青色の少し吊り上がった目をした、一度会ったことのある女性が待ってくれていた。


「お待ちしていましたよ、カンザキ ナツさん」


「わざわざ団長様に迎えに来させてしまってすいませんなんか」


「いえいえこちらの都合ですのでこちらこそ申し訳ありません無理を言ってしまって」


 俺が王都に入るということでいくつかルールが設けられた。と言っても大体が、騎士団の監視下で行動しろ、というものだ。王都内では、一人騎士団の者を監視役として置き、寝泊まりも騎士団の部屋を借りる。あと武器の所持は会場内以外では認めないなどだ。


「じゃあ俺は先に行ってるぞーガキたち」


 そう言ってガルフは王都に颯爽と消えていった。酒のことなら誰よりも機敏に動くなあいつは。


「そちらの少女は?」


「ああ、彼女はノアって言って、俺の知り合いっす。ノアはこれからどうすんの?」


「ノアもナツについてく」


「でしたら一緒に参りましょう。それではナツさん申し訳ないですがそちらの剣をこちらに」


 そう言われたので俺はルイーザ団長に刀を渡した。


「面白い形をした剣ですね、それにかなり重い」


 重い?いつも腰に下げていても重いなどと思ったことはないが、他の人からしたらそうなのだろうか?それともこの世界の剣はかなり軽く作られてるとか?


「それにしてもなんか街が騒がしいですね、前に一度来た時はもう少し、静かだったような……」


 すぐに追い出されたから曖昧だが、商人とか多い普段のアンダルセンと比べて王都デルフィは静かなイメージだった気がする。


「それは年一度の大会ですからね、みなさん楽しみなのでしょう」


 なるほど剣技大会と言ってもそんな堅いものではなく、お祭り的なノリなのか。


「では一度、荷物などを置きに騎士団に向かいましょう」


「ノアの部屋もある?」


「おそらく客室はいくつかありますので大丈夫だと思いますよ」


 


「あれがナーゼルの……?」「血の恩恵って話だろ……」


「あんなのを王都には入れるなんて……」


 道中そんな声が聞こえることがあったので、王都では俺は有名人らしい。それとも団長と歩いているからだろうか。


「申し訳ありません、貴族の方々のには説明をしておいたのですが……」


「いえいえ、大丈夫ですよ。な、大丈夫だからノアは爪と牙を立てるな」


そうして騎士団についた俺たちだが、王家第三位のルーナさんとルーイが待っていた。


「ルーイは私が呼んだので分かりますが、お母様はどうして?」


「いやまぁ坊や腕がまた取れてないから心配で来たのよ」


 えっ腕がまた取れる?治してくれたんだよねちゃんと?

ん……てか今……


「お母様?ルーナさんと団長さんって……?」


「ええ親子です」


「おや、姉妹に見えたかしら?」


 そう言われれば確かに、似ているところが多い気がする。何とも美人な親子だ。


「んで、ルーイはなんで?」


「あんたの監視役を任されたのよ、なんで私が……」


「ルーイがよくナツさんの話をしているので仲が良いのかと思いまして、私が近くに居れれば良いのですが騎士団としてする事が多く申し訳ありません。何か困ったことがあったらなんでもルーイに言ってくださいね」




「団長戻ってたのですね」


「ええ。そういえば、彼のことは知りませんね。ナツさん、彼はこの騎士団の副団長のアバルテン・サーズです。彼も今回の剣技大会に騎士団代表として参加しますので機会があれば戦う機会があるかもしれませんね」


「君か、ナーゼルの恩恵をもらったという子供は」

 

 背丈はルイーザ団長同じぐらいか、サーズというらしい男は、ルーイと同じオレンジの瞳に、赤に近いオレンジの髪は後ろで一つにまとめている。鎧は純白の鎧を着ており腰には細いレイピア?のような物を付けている。

 おそらく俺のことを嫌っているだろうが、それは一旦置いといて。髪や目の色、それにアバルテンという姓。


「もしかしてだけどルーイのお兄さん?」


「ああ。そこの出来損ないと兄妹と言われるのは癪だがな」


 出来損ないなどと言ったら拳の一つでも飛んできそうだが、そのルーイは下を向いたまま動かない。

 

「サーズ、言葉が過ぎます。気をつけなさい」


 団長にそう言われるとサーズはこちらを一度睨みどこかへ行ってしまった。

 あまりいい印象ではないが、あれで副団長なのだからそれなりに腕が立つのだろう。


「じゃあルーイ、ナツさん達を部屋に案内してくれる? 

お母様もそろそろ戻った方がいいのではないですか?」

 

 


 どうやら俺は貴族や騎士団の一部に嫌われているから部屋も質素な部屋とかに入れられるものかと思っていたがルーイに案内されたのは普段の部屋の数段上のいい部屋だった。ちなみにノアに聞いたら同じような部屋だったらしく、いつもあまり感情が表に出ないノアだが、嬉しそうに尻尾を振っていた。


「お前、兄ちゃんと仲悪いの?」


 部屋の説明をしてくれてたルーイに俺は聞いてみる。あまり、人の家の事情に顔を突っ込むのは良くないと思うが、今回はあれからルーイが少しイライラしてそうなので話を聞いてやる的なノリだ。


「ええ、兄様は私が騎士団に入ろうとするのに反対なの。お父様のいうとおりお前は、どこか王家の家の子供と結婚しろって。別にそんなの私の自由じゃない……!」


「うへぇ、本当にいるんだなそういうやつ。お前も大変なんだな。普段からピリピリしてる理由が分かったぜ」


「それは大体あなたのせいだから。そういえば今回私も参加するから剣技大会」


「え、騎士団の代表ってサーズじゃないの?騎士団の人ってそんな参加すんの?」


「いえ、騎士団は代表一人のみよ。でも私はまだ見習いだから。今回の大会で結果を残して騎士団のみんなや、お父様に認めさせるんだから」


「ふーん、まぁ当たったらよろしくな」


「まぁあなたがそれなりに腕が立つことは認めるけど、私に勝つなんて夢のまた夢ね」


 全く……俺が何度助けてやったか……


「じゃあ私は剣の訓練に行くから、分からないことがあったらあなたがこっちに来なさい」


 そういうと、ルーイは部屋を出ていく。どうやらいつものルーイに戻ったようだ。あの方が彼女らしい。

 俺も、大会は明日から始まるのでしっかりと英気を養っておかなければ。






 

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