サイボーグ高身長女探偵 〈タイトル未定〉性癖を盛った春の新メニュー

銀次

登場! サイボーグ女探偵

第1話 襲撃、ハイウェイにて

 雨夜のハイウェイを、黒い車列が疾走する。中心にはカンナギ重工製の多目的輸送車ヒグマ。その前後左右は護衛の装甲車四台によって守られている。


 車両のいずれもライトを点灯させていなかった。時刻は午後八時、周囲は高層ビルで囲まれている。街灯は薄暗く、無灯火での走行は危険極まりない。だが車列は乱れることなく一つの生き物のような動きで道路を進み続ける。すべては彼らの頭上に浮かぶ人工衛星オモイカネのナビゲーションによるものだ。

 オモイカネの多岐に渡る機能は、今回のような機密性の高い移送計画のサポートを一手に引き受けていた。


「こちら輸送班。ポイントDを通過」輸送車に乗り込んでいた護衛部隊の隊長が、無線で本部への定時連絡を入れる。

「了解。こちらも受け入れの準備は整いました。到着を待ちます」淡々とした口調の女の声が返答した。

「了解、通信終了」隊長は通信を終了すると、ほっと息を吐いてからサイドミラーを横目で見た。そしてすぐに部下へと無線を繋いだ。


「四号車、背後から接近する車が見えるか?」

「こちら四号車。ちょうど伝えようとしたところです。あの車、さっきのインターから入ってきました。でも、まだ封鎖は有効のはずですよね?」


 隊員の言っていることは正しかった。本来ならば、オモイカネの一般市民に対する情報操作によってハイウェイは通行止めとなっている旨の欺瞞情報が散布。完全な空白状態が生み出され、このハイウェイには物々しい輸送団だけが走行しているはずだった。


 しかし現実はどうだろう。背後に現れた車が車列に追い付こうとするかのようにぐんぐんとスピードを増しているではないか。

 護衛部隊全員に緊張が走る。


 その時、爆発音と共に輸送車の前を走っていた装甲車が吹き飛んだ。装甲車は爆風によって右前輪が持ち上がり、バランスを崩して横倒しになりながら中央分離帯へと激突した。


 輸送車のドライバーがブレーキを力一杯踏んだ。輸送車が急停車するのに合わせて周りの装甲車も停車する。

「総員警戒! 降りろ、降りろ、降りろ!」隊長の命令が、部隊無線を駆け巡る。


 すぐに各装甲車の後部扉が開け放たれ、灰色スクエア柄の戦闘服に身を包んだ兵士たちが姿を現した。いずれも左上腕の位置に雷神の太鼓の模様を彷彿とさせる力強い社章のワッペンを貼り付けており、武器はムラクモ社の軍用アサルトライフル「アラシカゲ」を装備していた。


 兵士たちが装甲車を盾にして周囲を警戒。接近する敵を発見しだい攻撃するつもりだ。

 後方から先ほどの車が接近。そして前方からも複数台の車が同じく接近してきて停車する。


「本部応答せよ。襲撃を受けた。待ち伏せだ。至急、救援を求む」身を低くして輸送車から降りた隊長が、通信機に話しかける。しかし返ってきたのは空電ノイズだけだった。


 複数の連続した破裂音が響く。それから少しもしないうちに装甲車の車体に鉛の雨が浴びせかけられた。


「荷物を守れ!」隊長が声を張り上げる。彼の視界には、爆発する装甲車が、爆発によるオレンジ色の明かりが、倒れる兵士たちが、そして襲撃者の一団の中から突出して接近してくる不気味な黒ドクロのサイバーニンジャが映っていた。


 隊長以下兵士たちは引き金を引いた。アサルトライフルの銃口から弾丸が音速で連射される。視覚インプラントとリンクされたライフルの照準器により、その狙いは正確そのものだ。だが、隊員たちのフルフェイスヘルメットの敵味方識別装置がエネミーの排除完了を知らせる事はなかった。


 ニンジャが地上から姿を消していた。比喩ではない。上を見ろ。ニンジャが暗黒の空を背景に跳躍している! その黒色の腕には同じく刀身からなにまで真っ黒なニンジャブレードが握られている。


 ニンジャがブレードを振り上げ急速降下。その狙いは護衛部隊の隊長だ。切っ先が急接近する。


 迫る敵を前に、隊長のアドレナリンに満たされた脳が激しく思考する。回避は? 間に合わない。防御をするか? 無駄だ。ニンジャが持つのは電磁ブレード。テクノロジーによって強化された斬撃が、灰色スクエア柄の戦闘服の上から装備した強化ケプラー製のアーマーを容易く切り裂くだろう。


 ヘルメットのバイザー兼ディスプレイが、敵の接近を表示されたレティクルで強調する。隊長はライフルをニンジャへと向け、引き金を引いた。


 だがニンジャの方が速い。隊長がライフルの引き金を引ききる前に、ニンジャは華麗に着地。一息に右袈裟斬りで切り裂いた!


 視界が揺れ、目線が低くなる。あれは……自分の体?ニンジャとの距離が半歩開く。左腕がない。ディスプレイに「警告」「バイタル危険!」「至急救援要請な」の赤文字が視界いっぱいに広がった。画面端のバイタルサインが軒並みゼロを示す。視界がボヤけ、意識が遠退いていくの感じた。




〈再生終了〉

〈RETURN〉

                  〈終了〉

 


 

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