第29話 桜色の季節1
『まったくもう課長ったら、朝から嫌になっちゃう。年度末の忙しい時期なのに何考えてるのか全然わからないよ』
課の中では一番偉い人なのは分かっている。職員から尊敬されているのも分かっている。仕事が良くできるのだって分かっている。
でもね、だからどうしたっていうの。管理職で偉い人だからすごいんじゃない。職員から尊敬されてるから何だというの。仕事ができるからって偉い訳じゃない。
背は高いしスタイルも良い。顔は男らしく渋いし服装もお洒落だし、会社の中では憧れてる女子職員はいっぱいいる。
だけど男としての本当の価値は、顔や外見じゃない。職場でのポスト、それに仕事ができるかどうかなんかじゃない。やはり性格、人間としての本当の価値はやさしさだと思う。
「佐藤さん、資料はもうできてるかな?」
「はい課長、申し訳ありません。ほとんど出来上がってるんてすが、集計のところだけ、まだもう少し時間がかかります・・・・・」
「そうか、あとどれ位時間がかかりそうかな?10時には出かけたいんだけど、それまでになんとか間に合いそうかな?」
10時って、あと1時間しかないじゃない。係長から先程頼まれた急ぎのコビーだって30分以上は絶対かかるし、無理だよ、絶対に無理。できるわけない。
年度末の忙しい時期に、自分では何もできずに、私に何でも押し付けてくる係長にイライラしていた。自分の遅れを棚に上げて、つい言ってしまった。
「課長、この資料は今日お持ちにならないと、いけない資料なんでしょうか?」
資料作成は2日前に課長から頼まれていた。作成期限は昨日の16時までだったが、愛の担当業務ではない資料であったことや、忙しさに追われて、覚えてはいたが手が回らなかった。
計画調整課は計画係と調整係の2係で構成され、課の職員は全員で15人である。愛が所属する計画係は係長を含め男性3人と女性4人の組織で、日々課内の庶務事務や雑務に忙殺されている。
上司である計画係長は54歳のベテランであるが、自ら仕事を進めるより部下に指示するのが得意な昔タイプの係長である。係の業務は6人いる職員にほとんど依存する傾向があるものの、係内は比較的うまくいっている。
愛は18歳でこの会社に就職し、キャリアは15年になる。既に社内の主任試験にも合格し、主任職として6年目をむかえる有能な若手職員である。仕事全般について処理は早く常に正確で、計画係長からも信望が厚く頼りにされていた。
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