第160話 強くなる為の再編成②
総合力上位の面々。相葉PTを分解してそれぞれにリーダーとなって貰った。相葉は
必要な事として、割り切ろう。
さぁて、他の連中の反応はというと――?
「俺が……PTリーダー?」
驚いた表情で、卜部が呟く。
「うむ。宜しく頼む……」
「しゃー! ダンナと一緒だぁ! これなら間違いねぇって!? 卜部や三本松もよろしくなッ!」
「じゃ、若輩ですが……よよよ、よろしくお願いしますぅーっ!!」
付近には新PTの番馬・鈴木・三本松等が卜部の元へと集まっていた。前衛には鈴木と番馬。中央には卜部。後衛には三本松を配置すればバランスは良いだろう。皆も不服は無さそうだ。
「リーダーか……俺に務まるだろうか……?」
腕を組んで、呟く神崎。
「がははっ! 相葉PTのエースアタッカーが、なーにを不安がっとるんじゃい!?」
「弱気は損気……貴方もね?」
「ひゃ、ひゃいっ!? 小生も頑張りますぅ!」
豪快に笑う瀬川に、ビクつく杉山を嗜める高遠。コイツらはいつも通りって感じだね?
瀬川の言う通り、神崎ならば上手くリーダーを熟してくれるだろう。唯一の穴は杉山だが、同じタンクの先輩として瀬川三四郎を配置したから問題は無い。ヒーラーがいないのが欠点だが、そこは杉山にタンクと一緒に兼任して貰おう。基本的には神崎・高遠のダブルアタッカーでダメージを追う前に敵を殲滅する運用となるね? 低階層ならば行ける筈だ。
「磯野に葛西だって!? 冗談じゃない! 何で僕がこんな連中と……ッ!?」
「あぁん!? 騒いでんじゃねぇぞ林ィー!?」
「テメェは注文付けられる立場じゃねぇべ!? あんまふざけた事抜かしてっと、磯野君に代わってこの俺が――」
「この俺が――なに?」
「え? あ……」
「し、東雲……?」
「続けていーよ? ――で、なに?」
「……な、なんでもねぇべ……」
「そう? なら良いんだけど。折角の新PTだもん。皆で仲良く行きたいもんねー?」
『……は、はい』
「――林君」
「ひっ!? ななな、何だよ東雲っ!?」
「……あんまり輪を乱す様な事を言っちゃ駄目だよ? 次、同じ事をしたら――分かるよね?」
「……………はい」
「ふふ、良い子良い子♪」
騒いでいた三人が、東雲の圧により静まり返ってしまう。馬鹿だね〜コイツら? 擬態してるけど、本当の東雲はLV.20越えの猛者だからね? 逆らう事なんて出来る筈が無いんだよ。厄介な男連中は纏めて東雲に預けておこう作戦は大成功だ。後は猛獣の機嫌を損わぬ様、磯野達の健闘を心の中で祈ってやろう。
内心で、三人の事を笑っていたら――
「――翔真君」
「え」
「後で覚えておいてよね♪」
東雲の奴に、しっかりと釘を刺されてしまった。……問題児を押し付けたのがバレたのかなぁ? 知らない! 僕は知らないぞォォッ!!
思わず、現実逃避を始める僕だが、他にも険悪なムードを放つPTが存在した。
「……何よ?」
「貴女がリーダー、ねぇ……?」
鳳紅羽と榊原冬子だ。
どちらも気が強い女同士。互いにバチバチと視線で火花を上げていた。そんな二人とは関係無く、PTメンバーの新発田は席に座りながらネイルの手入れをしている様である。何というか、危惧した通りのバラバラ加減。ワンチャン上手く纏まってくれないかと思って配置したんだが、これは少々不味ったたかなぁ……?
僕が思った、その時だ。
「……仲良く、する……」
物静かな木之本詩織が仲裁に入った。意外な光景に驚く二人。だが、そう簡単に矛を納める様な手合いでもないだろう。榊原は鼻で笑いながら木之本へと視線をやった。
「……なぁに? 木之本さん? こっちは大事な話をしてるんだけど?」
「何が大事な話よ!? ただ因縁付けてるだけじゃない! 馬っ鹿馬鹿しい……!!」
「因縁? 私はただ相葉君のPTに居ただけの人が、ちゃんとリーダーを務められるのか心配なだけよ? ABYSSは遊びじゃないわ。貴女の間違った指揮で危険な目に遭うのは御免よ?」
「協力的じゃない人がいたら、そりゃあ上手い指揮なんて出来ないわよ! 足を引っ張るのは楽しい!? 私はもっと強くなりたいの!! 貴女の安いプライドに関わってる暇はないわッ!!」
「なん、ですって……!?」
「気に障った? あーそう? 事実だものね? 翔真の時だってそう、貴女は不満を言う事しか出来ない女!! 私はそういう口だけの女が――」
「――呪う、よ?」
「………………あ、え?」
「仲良くしなきゃ――呪う」
「き、木之本さん?」
「お前も呪う」
「――」
「お前も」
「――え!? あ、アタシ!?」
木之本に指差され、慌てふためく新発田。周囲の連中もこの騒ぎに気付いたのか、騒然とする紅羽達を遠巻きにしていた。
「ば、馬鹿馬鹿しい……! 何が呪いよ!? たかだかLV.2の貴女に一体何が――ぁっ」
「榊原さん!?」
……即死?
突然、威勢の良かった榊原の奴が泡を吹いて倒れてしまう。木之本の手には五寸釘と藁人形が握られていた。……もしや、アレで榊原を呪ったのか? それにしても、何とも酷い。
陸に打ち上げられた魚の様に、ビクンビクンと身体を跳ねさせる榊原。その光景を見た紅羽と新発田は、一様に顔を青くした。
「仲良く……しない?」
『ひぃ!? するするぅ――ッ!?』
木之本の脅しに心底震え上がる二人。互いに抱き合っちゃってまぁ……この場面だけを切り取ると、木之本の【呪い】は効果的に作用したのかも知れないね?
「――翔真、少し宜しいですか?」
武者小路が、僕に近寄って話し掛けてくる。
一体何だろう?
取り敢えず、話を聞いてみるか。
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