第19話 1-D、PT紹介
売店で購入した
……しかし、こうして武器を装備すると、本格的に"レガシオン"がスタートした気になって、テンションが上がってしまうなぁ。この世界に目覚めた時は気が滅入る様な事ばかり起こっていたけれど、漸く報われた気がするよ。
「武器を細剣にしたのは、何でだ? どうせなら片手剣を使った方がやり易くないか?」
「使い易さならそうかもね。ただ、細剣と片手剣では前者の方が重量が軽い。最軽量の武器種は短剣と手甲の2種類なんだけど、何方もリーチが短いのが難点。安全マージンと探索効率の了得で、細剣はバランスが良いって事さ。それに、20階層までは刺突攻撃に耐性のある魔物は少ない。上手く突けばクリティカルも狙えるし、個人的には片手剣よりもオススメだね」
「はぁー、随分と詳しいんだな……?」
おいおい。レガシオン・センスのトッププレイヤーを掴まえて、"随分と"とは心外だ。
「これくらいは基礎知識の範疇さ。レガシオンでは、こんなのは常識――ほわぁぁあッ!?」
「うぉぉ!? な、何だ!?」
いや「何だ」はこっちの台詞である。何だって、相葉総司が僕の隣にいるんだよ――ッ!?
しかも、お仲間まで一緒である!!
びっくりし過ぎて、変な声が出てしまった!
落ち着け――落ち着くんだ、石瑠翔真。
そうだ、素数を数えるんだ……!
冷静になる、おまじない……!!
「いきなり黙って、大丈夫か?」
「いや……総司が驚かせたんだろう?」
「自覚無しって怖いわね……」
ノリツッコミを行うとは、紅羽の奴、もう完全に相葉PTに馴染んでやがるな……!?
「ふ、ふん! どうやら意図せず助言をしてしまった様だね! まぁ、君達程度が僕の言葉を活かせるとは思えないけどぉ? 精々、トップの座を奪われないよう、頑張る事だね!」
「あ、ちょ――!」
「それじゃあ、さらばだ! フハハハハ!!」
捨て台詞を吐いて、僕はこの場から退散する。尚も言いたい事がありそうな相葉だったが、構ってやる義理は1ミリもないね!!
てか限界!!
マジで逃してェェ――ッ!!
僕は脱兎の如く逃げ出した。
◆
相葉達から逃走して――十分。
自由時間の終わりと共に、散らばっていた1-Dの生徒達が影山のいる転移石の真ん前へと移動して来た。各々が手に持つのはABYSS探索の為に"最適化"された武器である。見た目はただの木製武器だが、ステータス上昇の恩恵を持つ為、外から持ち出す真剣よりも威力は上だ。
――ま。そもそも外部からの武器や兵器の類は、転移対象から弾かれてしまう。世界各国がABYSS攻略に手を焼くのも、既存兵器が使えないという理由あっての事だった。
「全員、準備は出来ましたか?」
揃った生徒を見渡しながら、影山が皆へと確認を取る。殆どの生徒は木製武器を購入した様だ。安物買いの銭失いとは正にこの事。 防具まで揃えてる奴は目も当てられないね。……最も、僕が助言をしてしまった相葉だけは、鉄の片手剣のみを装備していた。紅羽、神崎、東雲の三人は、普通に木製武器を装備していると言うのに――律儀な奴。
「ABYSSに入る前に、PTリーダーの確認を行います。各自、挙手をして名乗り出て下さい」
影山が言うと、リーダー達はその場で挙手をした。……これって、ソロの僕も手を挙げなきゃいけないんだろうか……?
何だか、ちょっとやだな……。
思いつつ、僕は控え目に手を挙げた。
「生徒番号1番。リーダーの相葉総司です。PTは神崎、東雲、鳳の
「生徒番号5番。リーダーの
「オーッホホホホッ!! 生徒番号9番!
「チッ、面倒臭えなぁ……生徒番号8番。磯野浩介ェー。ツレは
「あ、私の番? え、え〜っと、生徒番号14番。
「生徒番号15番。
「……では、最後をお願いします」
やはり、僕も言わなければならないか。
「生徒番号25番、石瑠翔真。ABYSS探索はソロで行くけど、これは君達の様な足手纏いを連れてかない為の処置だからね! 決して! 誰も組んでくれなかった訳じゃないんだから、そこだけは勘違いしないで欲しいなぁ?」
ニチャアっと言った笑みを浮かべながら、僕は皆に対して宣言する。……再現度が高いのは良い事だけれど、真似する度に周囲から引かれるのは何とかならないものだろうか?
僕は、切実に悩んでしまう。
出来上がったPTは、以上7組だ。
便宜上、リーダー名でPTの名前を呼称する。
1-Dの最高戦力、"相葉PT"
No.2の優等生、"芳川PT"
色物お嬢様の、"武者小路PT"
ガラの悪い不良、"磯野PT"
陰キャの集まり、"三本松PT"
ギスパ筆頭の、"榊原PT"
そして――ソロの、"石瑠PT"
こいつが、1-Dの全生徒が組んだPTである。
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