第14話 策略
「今から『フォーリン♡エンジェル』のセンター『だ天使ちゃん』による引退記者会見を始めます。本人の準備が整い次第、すぐに始めますので、いましばらくお待ちください」
「なんとか間に合った……」
お楽しみが終わり、急いで会場に向かうと既に会場内にはアナウンスが流れていた。
双葉のせいで時間を忘れてたっぷりと45分間楽しんでしまった。
でも、あんな誘われ方したら断われるわけないだろ普通に考えて……
ゴム咥えて上目遣いとかヤるしかないだろそんなの。
んで、今滑り込みで入場したと。
次からは誘われても時と場合を考えよう。たとえどんなエロい誘われ方をしても、欲望に勝たなければな。
そんなことを考えながら、会場の端の方へ移動する。
カメラ機材など何もないし、報道陣の邪魔にならないようにしないとな。
報道陣からしたらカメラも何も持たないただの邪魔者だからな。
実際は、この会見をする理由になっている超重要人物なんだけど。
それを知ってるのは双葉しかいないからな。
『今』はそうかもしれないが、『これから』はどうなるか分からない。
この会見が終わって、双葉は一般人へと戻る。仕事もないし、スクープされることもないから普通にデートとかも行く機会も増える。
まぁ元アイドルが恋人とデート、なんて記事を書かれる可能性もあるかもしれないが、アイドルをしているわけでもないので、仕事には支障はきたさない。
日常生活には障害が出るかもしれないが、なんとかなる問題だ。
俺が双葉の恋人とバレるのも時間の問題というわけだ。
「お待たせしました。準備が整いましたので会見の方を始めさせていただきます」
アナウンスが流れると、ざわざわとしていた報道陣が一瞬にして静まり、会場内にはシャッター音が響き渡る。
揃ってカメラを向ける先には、簡易舞台袖の方から双葉が頭を下げながら入場してきた。
先程の私服とは違い、キッチリとしたスーツに着替えている。
一度深々とお辞儀をして、着席をする。
マイクの電源を入れ、音が出ることを確認すると、
「この度は、私の為だけにお集まりして頂きましてありがとうございます。私が『フォーリン♡エンジェル』を引退する理由についてお話しますので、お聞きください」
普段とは違い、真面目な表情で淡々と話す双葉。
雰囲気が全く違うな。大人びてるというか、シャキッとしているというか。
「今回は質疑応答はありませんのでご了承ください。また私の発言にヤジを飛ばすなどもご遠慮ください。もし、そう言った行為が見受けられた場合、直ちに退席をお願いする場合があります」
暴動対策ってわけだ。
ヤジを飛ばしたりして会見が止まらないようにする策略。
要するに、双葉が言いたい放題言っても誰も邪魔をしないようにできているというわけだ。
双葉もやり手だな。
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