第3話 ビシっと!
「でも、今発表しなくたって、いずれは私たちが付き合ってることはバレてたと思う」
「なんでだ?」
「マスコミって怖いんだよ~? どこで何を撮ってるか分からないし、有名人にプライベートなんてないんだよ~」
手をひらひらと動かしながら眉をひそめる双葉。
「マスゴミって言われるわけだ」
芸能人にプライベートはないとはよく聞く話だ。いつ、どこで、誰に見られてるか分からないと言うのは、世間に顔が知られている時点で必然的な事だ。
いくら本人がバレないように気を遣ってたとしても、マスコミにはお見通しなんて話はよくある。
「そう! だからバラされる前に自分から辞めた方がダメージは少ないかなーて思ったりもしたの」
ビシっと言い張る双葉。
「まぁ、スクープで報道されるより自分からの方がダメージは多少少なくなるとは思うけど……ゆうて変わらない気もする」
衝撃の種類が違うからな。
それにどちらにしろ問題の矛先は双葉に来るだろうし。
「そうかな~? 私の気持ち的にはバラされるよりは自分から公表したようが何億倍も気が楽なんだけどね~」
「双葉はそうだろうな、てかそれは俺もなんだけど」
だとしても、こんないきなりするものではない。
ワンクッションどこかに置いてからするもだろ。どこかではなく、俺にして欲しかったけどなそこを。
もっと事前に知らされていればこれからの行動だったりを考える時間があったが、今知らされた以上、もう考える暇などはない。
流れに身を任せる……というよりかは、もがくしかない。
「とりあえず、引退会見は開くからその時に全部説明かなーとは思ってるよ」
「え、会見するの」
「うん、マネージャーにそれだけはしろって言われたから仕方なくねー」
と、バッグに入っていたスマホを取り出しとある画面を見せてくる。
そこには、つい2時間前に行われていたマネージャーとのやりとりが表示されていた。
『双葉ちゃん引退は考え直してくれない?』
『いえ、無理です』
『彼氏が居てもアイドル活動続ける方法はいくらでもあるから。ファンは少し減るかもしれないけど、それ以上に双葉ちゃんがアイドルを続けるのを望む人がいっぱいいるから!』
『ファンなんてどうでもいいんですよね。私には彼氏が居れば地位も名声も要らないんですよ』
『そこをなんとか!』
『諦めてください』
「……なんとも辛辣な」
「考え直してとかしつこいんだよね~。私の意思はもう決まってて変える気は無いのにさぁ」
グーンと背伸びをしながらため息を吐く。
「だから私は引退会見でビシっと言ってやるんだ!」
「何を」
「キモイファンに媚びを売るんじゃなくて、可児くん一筋だって!」
「大炎上不可避だぞそれ」
そんな事言ったら大荒れ間違いなし。
ファンが荒れ狂い大パニックになりそうだ。
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