第2話 炎上覚悟
「私だって、普通の高校生みたいに恋愛したいよ。今まで青春なんて程遠い生活をしてきたんだから。高校生にもなれば、彼氏と遊園地とかでデートしたりしたくなるのは当然のことでしょ」
体育座りをしながら顔をうずくめる。
双葉がアイドルデビューをしたのは中学2年生の時から。
当時は他のジュニアアイドルユニットに所属しており、知名度はさほどなかった。
そこから『フォーリン♡エンジェル』を結成。一躍有名となったわけだ。
思春期真っ只中に恋愛禁止のアイドル生活。
普通の高校生とはかけ離れた生活だ。一度くらい、普通に過ごしたいと思っても不思議なことではない。
「その気持ちは分かるけど……いいのか? メンバーだったりファンのことは」
一番の心配はそこだ。
これは双葉だけではなく、周囲にも絶大な迷惑が掛かる。所属事務所、担当マネージャー。メンバー。その他大勢に。
「私は可児くんが居れば他は別にどうでもいいの……ファンもメンバーもどうせ『だ天使ちゃん』の私にしか興味ないんだから」
「日頃から愚痴を聞いてる俺だから納得できるけど、その考えをみんなが理解するのは難しいと思うぞ?」
「別に理解されなくていいんだよ私は。これは可児くんとの青春のために炎上覚悟でやったことだからね!」
と、ドヤ顔でサムズアップする。
そこ、ドヤ顔で言う所じゃないんだけどな……
ていうか本格的にマズいんじゃないのかこの状況。
さっきから双葉のカバンの中からスマホが鳴り止んでないし、こんな呑気にしてていいのだろうか。
「引退……俺とどうこうは一旦置いておいて、グループに未練とかはないのか? せっかく全国に認知されるくらい有名になったのに」
努力をすべて水の泡にするような行為だ。
少しの未練もなかったらおかしい。
「未練? そんなのないよ」
心配そうに聞く俺に、双葉はポカンとした顔を浮かべる。
「え、なんもないの?」
「だって、私が『フォーリン♡エンジェル』を有名にさせてあげたんだよ? 私のおかげでここまで有名になれた。それを自分で終わらせて何が悪いの? って私は思うんだよね」
「ぼ、暴論だ」
「美論でしょ」
「悪党の言うセリフにしか聞こえない……」
「それに、自分で作り上げたものは自分で壊さなきゃ楽しくないじゃん?」
「さらに悪党感が増したぞ」
双葉がここまで『フォーリン♡エンジェル』を有名にしたということは間近に居た俺が一番知っている。
俺達が出会ったのは2年前。高校の入学して1か月が経った頃だ。そして、フォーリン♡エンジェルが活動し始めたのが、高校一年の夏ごろ。
ずっとアイドル活動を双葉を通してだが追ってきたんだ。双葉の頑張りは誰よりも分かっている。
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