僕の青春ラブコメの世界観を壊すな~ヒロインがアンドロイドと異世界転生者と魔法少女と殺し屋と幽霊なんですが~

嬉野K

僕の青春ラブコメの世界観を壊すな

別にヒーローではない

第1話 ヒーロー気取り

「なんだお前? そんなに弱っちいのに出てきたのか?」


 路地裏で僕を殴り飛ばした男は、ヘラヘラ笑いながらそう言った。口で言い訳することはできるけれど、なんだかしたくなかった。


「ご苦労なことだねぇ……ヒーロー気取りの男子高校生」男たちは5人で僕を取り囲む。「お前のおかげで……かわいい女の子を逃しちまったじゃねぇか。どうしてくれんだ?」

「……性犯罪者になるのを止めてあげたんですよ……」口から流れる血を拭って、「女子中学生を5人で襲う……そんな現場見たら、見逃せるわけない」


 言った瞬間、腹部を蹴りつけられた。背中から壁に激突して、激しい嘔吐感に襲われる。倒れてやるのはムカつくので、なんとか踏ん張る。


「それがヒーロー気取りだって言ってんだよ」男たちは指の骨を鳴らしながら、「俺はな……『女の子を助けてる僕カッコいい』なんて思ってるダサい男が嫌いなんだよ」

「そうですか……中学生襲おうとしてたあなたたちよりは、ダサくないと思いますが」

「あぁ?」どうやら彼らの逆鱗に触れたらしい。「俺たちがダサいって? お前より?」

「僕よりかは知りませんけど……少なくともあなたたち、カッコよくはないですよ」


 5人で女子中学生を無理やり襲う男たちの、どこがカッコいいのだろう。


「助けようとしてボコボコにされるやつも、大概ダサいけどなぁ!」


 そのまま、男の拳が僕の頬に叩きつけられる。また倒れそうになるが、変なプライドで倒れることは許されないと思っていた。


 というわけで僕は、しばらく男たちに殴られ続けた。入学式の日だというのに、いきなり遅刻だろう。


 あーあ……


 もっと器用に生きられたらいいのにな。

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