12本目
あれはまーくんだ、わたしは一目見たら分かった……きっと、まーくんもわたしを見れば気付いてくれるかも。よし、名前を呼んで気付いて貰わなきゃ。
「まー……「おうじさまあああああっっ!!」」「マクシスさまぁ!!」「おめでたい!!」
みんなが王子様にまーくんに向かって声を上げる。わたしの声なんてあっという間にかき消されてしまった。
「ねぇ、お父さん、お願い、もっと前に行けない?」
「アーリャ!? わ、わかった、頑張るよ」
お父さんは再び人垣を縫って進もうとするけど、みんな盛り上がってしまったのか先程よりも激しく動いている。お父さんも頑張って進もうとしてくれるけれど、むしろ人の波に押されて一進一退を繰り返している。
「ふぅ、ふぅ、ごめんよアーリャ、父さんもう限界だ」
「ううん、無理言ってごめんね」
そんなやりとりの間にまーくんは手を振るとお城へ帰って行ってしまった。わたしはそのまま、大好きな人がいた桜の木の下を見続けるしか出来なかった。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
「アーリャはどうしたの? あんなに楽しみにしていた王都観光にも行かないで部屋に籠もったきり……」
「それが王子様のお披露目に行ったあと、ずっとなんだよ」
部屋の外で両親の話し声が聞こえる。
わたしはベッドに顔を埋めながら何も出来ないでいた。あれは本当にまーくんだったんだろうか? 顔なんて全然似ていない。わたしのただの妄想なのかもしれない……あまりにも未練が強くて錯覚してしまったんじゃないのだろうか?
だったらなんで5年も経った今更なんだろう……もう、わけわかんない。
わたしの事を見ればまーくんはわたしだって気付いてくれるのかな?
今日はきっとわたしの事全く気付けなかったよね?
じゃあ、どうしたらわたしを見て貰えるんだろう?
多少、裕福な商人とは言え、一般庶民が王子様に会おうなんてどうすればいいのかな?
う~、考えても分からない!! もう悩むのはやめた!! こうなったら行動だ!!
「お父さん、お母さん!!」
バーーーンっとわたしは扉を開けると、テーブルで向かい合っていた両親がビックリしてこちらを見た。
「どうしたんだアーリャ? 具合はもう良いのか?」
「そうだよ、無理しちゃ駄目よ」
「心配かけてごめんね、わたしは大丈夫……それより聞きたい事があるの!!」
「な、なんだい?」
戸惑いながらもわたしの言葉に耳を傾けてくれるお父さん。
「一般庶民が王族の……王子様に会うにはどうすればいいの?」
「えええっ!?」
驚きながらも、その後お父さんはわたしの質問に真面目に答えてくれた。
商会が大きくなれば王族と取引する事もある……だが、それは領主様を飛び越えてとはなかなか無いらしい。
偶然にもお忍びでやって来た王族の人がお店に入って気に入ったから……なんてエピソードもあるらしいけれど本当に稀な話みたい。
でも、今回のように王子様に領主様を通して献上出来る物を用意した実績がある。地道にコレを繰り返していけば
他には爵位を買って貴族になる。貴族自ら催しを開いて王族を招いたり、その逆に招かれたり何てお話もあるけれど、王族と関われるようになる爵位なんて相当上らしく、男爵くらいじゃお話にならないらしい……でも、それですら相当なお金がかかるんだって。
あとは、王族が街で見初めた一般市民を……なんて話も過去にあったらしいけれど、それこそファンタジー過ぎて参考にならない。
駄目~すぐには無理。これは長期戦で行くしかないのかも?
「お父さん、わたしやりたい事が出来た!! わたし商人になる!! (あわよくば貴族になる!)」
「ええっ!? だけど、アーリャは末っ子で女の子だから……」
「うん、大丈夫、お父さんやお兄ちゃん達には迷惑かけない……自分の力でなるから!!」
残念だけど今すぐどうこうできる事じゃない、少しでも早く行動して、少しでも早く可能性を高めるんだ!!
生まれ変わってから何も目標がなかった……ただ、生きていた。
でも今は違う……まーくんが……大好きなあなたがいるって分かったから!!
わたし、まーくんに……あなたに会いたい!!
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信じられますか?
この作品勢いで「賢いヒロイン」コンテストに応募しちゃったんですよ……と言う事で、とりあえず賢くなるのはここからになります。
面白かったら★★★、フォロー、応援、レビューなどなどお願いします……物語を紡ぐ原動力となります。
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