第1話


「くそぉ……全然、街が……人工物すら見当たらねぇ」


 そう言って、額に浮いた汗をぬぐった。


 ……時間は少し前に遡る。



 俺は森の中を歩いていた……全裸で。

 

「しかし、何ともまあすがすがしい気分だ……」


 やはり人類という存在は、全裸でこそ輝くのだろうか……


「何アホなこと考えてんだろ」


 一人突っ込みして、俺は肩を落として考えた。


「はぁ……これからどうするかな。転生して、何も基盤も知識もない。あるのはこの全裸になったら最強な身と、鑑定チート、後はオリハルコンゴーレムの欠片。服も何も持ってない」


 もしこんな状態で人と遭遇したら、どんな反応をされるだろうか。

 間違いなく痴女と言われてしまうだろう。

 俺だって、全裸の女の子がいたら地上だと思うだろう。そしてその後スーハ―すはー……いや、違う違う今それはどうでもよくて。


「……まあ、色々問題はあるが、でも結局のところ物資とかがあるのは人の街だろうし。とりあえず街でも探してみるか」



 そして現在に至る……

 

 あれから半日近くずっと歩いているが、本当に街も、道も、人間の生活圏と言えるものが全く見つかっていなかった。


「そもそも、この世界に果たして人間の街という物が存在しているのか?」


 いや、女神の奴は人間がいるって言ってたし……言ってたし、たぶんいるだろ。うん。


「探す場所が間違ってんのかなー」


 そう思って、歩く方向を変えようとした時だった。


「……誰か助けてええ!」

「ん? 人の声?」


 突然森の中から女性の悲鳴が聞こえてきた。


「これは、もしや……異世界ものでよくある、女の子を助けるシチュって奴ですかい⁉」


 これは、これは燃える奴ではないですか。


「待ってろお嬢さん! この俺が助けに行くからな!」


 そう言って、声が聞こえた方へと走り出した、全裸で。



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