ガリ勉少女に惚れたわけ
タヌキング
第1話 気になるのです
高校生一年生の梅雨の時期、私こと佐倉 妙子(さくら たえこ)は一人の男性から告白された。
茶髪のゆるふわパーマのチャラい感じの割と目鼻立ちの整った彼に。
彼の名前は唐瀬 湊(からせ みなと)君。ハッキリ言って私とは完全に合わないタイプの男の子である。
というのも私はクラスでも地味で、俗に言うガリ勉タイプの女であり、眼鏡に黒髪のオカッパという如何にも冴えない女なのである。
そんな女にどうしてこんなチャラ男が告白するのだろう?クラスは同じだがロクに喋ったことすらないのに。
たちの悪いドッキリかと思って、キツめの言葉で詰め寄ってみたものの、どうやら彼は本気で私と付き合いたいらしく、彼の私を真っ直ぐ見る目に嘘は無いと思えた。
となると現実的に付き合うか?付き合わないか?を決めないといけないわけだが、私は何事も先を見据えた上で物事を決める質である。
なので、とりあえず彼に成績を聞いてみた。すると勉強をあまりしないでも、クラスの半分より上らしく、勉強すればその辺の大学には受かると私は予想。
その上、彼の夢が公務員というところもグッと来た。チャラい見た目に反して素晴らしい安定感を感じずにはいられなかった。ちなみに私の将来の夢は薬剤師である。
これなら将来結婚することになっても食いっぱぐれることはなく、尚且つ共働きで貯金も効率的に貯められると踏んだ私は、彼と付き合うことを了承した。
そうして付き合って早一ヶ月、図書館、水族館、遊園地と休みのデートは3回してみたが、それなりに楽しかった。雰囲気に飲まれて手なんか繋いだりしてみたりもしたが、うん、悪くない。
だが、私は気になってしまう。どうしてこんなに冴えない私と湊君は付き合おうと思ったのか?ということを。
初めのうちは小さな疑問だったのだが、付き合いを重ねるごとにドンドンと疑問が大きくなってきて、そろそろ手に負えなくなって、勉強にも支障が出始めたので、放課後の屋上にて彼に思い切って聞いてみることにした。
「どうして私と付き合おうと思ったの?」
仁王立ちスタイルで私は聞くと、湊君は困った風に笑う。
「え〜、言わなきゃ駄目?」
「駄目です。明確な理由を言ってくれないなら別れます。」
理由が分からないのに付き合いを続けるなんて、何だか気分が悪いじゃないか。彼に将来性があるとしても、そこをハッキリさせないことには、お付き合いを継続させることは出来ない。
「わ、分かったから、落ち着いて。まず好きになった理由を話すね。」
「はい、どうぞ。」
何だか慌てた湊君が少し可愛いとか思ってしまったが、少し可愛いぐらいで私からの追求から逃れられるなんて思わないことだ。
「勉強してる横顔が綺麗だなと思ってさ。気がついたら君のことを見てたんだ。」
「なっ!?」
よ、横顔が綺麗だと?そんなの言われたことない。というか私ごときの横顔で魅力されるなんてチョロいぞ、この男。
「それで気になってね。君のことをよく目で追ってたんだけど、それで体育でバレーをやってる時に君に告白しようと決めたんだ。」
「な、何でですか?」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。一体バレーの時間にどんな理由で私と付き合うことを決めたというのだろう?
「君の胸にバレーボールが当たった時、ぽよんと君の胸が揺れたのを見て、あー結構オッパイ大きいんだと思って・・・それで告白しようと決めたんだ。」
動機が不純!!
で、でも、不思議と嫌じゃない。ど、どうやら少し私は頭がおかしくなったみたいだ。
付き合うって人を狂わせる効果とかあったのかしら?
「それでね♪付き合ってからもドンドンと君のことを好きになってね♪この間、手を繋いだ時も顔を真っ赤にして俯いてさ♪もう可愛くて♪可愛くて♪」
「こ、コラー!!誰がそこまで言えと言いましたか!!」
・・・こんな風に辱められるとは予想外だ。
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