第41話 気付き

『エスメラルダ・グリンウェル。高位神官の息女。15歳で聖女に選ばれ、以後10年間務める……』


 エスメラルダ様って15歳から聖女やってたんだ、ワタシより歳下じゃんかよ……。次は、と――。



『モルガナ・ナイトレイ。商人ナイトレイ家の一人娘。20歳で聖女に選ばれ、以後5年間務める……、か』


 モルガナ様まではなんとなく記憶にあるなぁ、顔とかはっきり覚えてはいないけど。そいえば、最初の聖女様ってどんな人だったのかな?



『アレキサンドラ・ライトン。記録上残っている最初に選ばれた聖女。出自や細かい任期は不明……、ふーん』


 この人ってあれよね? 首都サンドラの名前の由来になった人。すっごく昔の話だし「記録上」って書いてあるから、ひょっとしたらもっと前にも聖女様はいるのかもしれないけど、どうなんだろ?



 過去の聖女様についての記録を見ながらワタシは考え事をしていた。聖女は女神様が選んでいる。なにか共通点とかあったりしないかと思ってみたけど、さっぱりだ。


 若い人か幼いくらいの人からいつも選ばれているけど、年齢はみんなばらばら。出自にも共通するとこは全然見当たらない。ワタシみたいに孤児院育ちの親なしもいなかった。



 ワタシが聖女様についてや国の歴史について調べているのは、突然「聖女」の自覚をもったからじゃない。


 この前、ご神託の間にてワタシは自分のを女神様に問い掛けた。お悩み書きを介していないし、こんな個人的なことをして許されるかもわからなかったけど、ノワちゃんを救う方法がそれしか思い付かなかった。


 ワタシが空洞に問い掛けた後、長い沈黙があった。やっぱりダメかと諦めかけたとき、女神様の声が届いた。


 それは決して、ノワちゃんの居場所という直接的な答えではなかった。ただ、女神様は2つ、ワタシの問いに対して言葉をくれた。



『あなたの大切に思うノワラは、心配しなくてもすぐに見つかり、無事に帰ってきます。ご安心なさい』



 1つはこれだった。それを聞いたとき、最初はとても嬉しかったけど、やや遅れて、女神様も他の人間たちと一緒で「気休め」の言葉しかくれないのかと思った。


 だけど、2つ目を聞いたとき、考えが変わった。女神様はやっぱり他の「人間」とは違う、と……。



 実際に、ノワちゃんは一晩明けた翌日の昼間に無事救出されたと聞いた。ワタシは飛び上がるほど喜んだ――というか、ホントに飛び上がっていた。

 あとからノワちゃんと顔を合わせたときは、泣きそうなほど嬉しくて、体当たりするみたいに抱き着いちゃったくらいだ。


 ノワちゃんとたくさん話してスッキリした後、ワタシは女神様の教えてくれた「2つ目」について調べようと思った。そして、女神様と聖女についても、もっともっと知りたいと思うようになっていた。

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