作者 武緒さつき♀
第18話 お出迎え
「ドリゼラ姉さーん!お疲れちゃーん! どうだった!?」
宮殿に戻ると、シーラちゃんの大きな声が出迎えてくれた。私たちの周りにはコンサドーレ様とマッツオ様の2人だけだ。
「シーラ様のご多忙が身に染みてわかりました。改めて尊敬致します」
周りの目もあって、私はかしこまった物言いをした。シーラちゃんも表情からそれを察してくれているようだ。
「ドリゼラ様、ありがとうございました。おかげで『天書写本ノルマ』もずいぶんと減らすことができました」
マッツオ様がこちらに向かって軽く頭を下げている。私はどう対応していいかわからず、誰にも負けないくらい頭を下げてお辞儀をしていた。
「そだよー。ドリゼラ姉さんのおかげでご写本もばりばり進めたよ、私も絶好調って感じ?」
シンデレラ様にも好不調とかあるんだ……?
シーラちゃんの方に顔を向けると、彼女は両手のひらをこちらに向けてぱたぱたと上下させている。なんだろう? 屈んでほしいってことかな?
私が中腰の姿勢になると、彼女は真横まで歩み寄ってきて耳打ちをしてきた。
『――で、どうよ? コンサドーレとなんか進展あった?』
――ええっ!?
私は左右に首を振って周囲を確認し、コンサドーレ様とマッツオ様との距離を確認した。よし、この距離なら小さい声は届かないだろう。
「なっ……なんの話よ? シーラちゃん?」
できる限り声をおとしてシーラちゃんに話しかける。
「なんの話って? ひょっとしてドリゼラ姉さん気付かれてないと思ってたの? 超ばればれなんですけど?」
――ええええっ!?
「えっ…とね、それってひょっとしてコンサドーレ様にもってことかな?」
「いやー、ワタシだけじゃないかな、気付いてんの? コンサドーレは『察する』ってのをどっかに落としてきてるから大丈夫だよ?」
なんか安心したようなそうでないような……。コンサドーレ様が気になっていること、うまく隠してるつもりだったのにシーラちゃんに早くも気付かれていたなんて、やっぱり双子の妹だから?
「公務のときはさ、コンサドーレそっちに行って、ワタシの方には官房長が付くみたいだからうまくやんなよ?」
「う…うん、がんばる」
「ドリゼラ様、お顔がずいぶんと赤いように見えますが、やはりお疲れではないですか?」
マッツオ様の声が飛んでくる。心中が穏やかでない私に代わってシーラちゃんが適当な言い訳をしてくれていた。
「ドリゼラ様の疲れがとれたら、コンサドーレは彼女を馬車のとこまでお送りするように。例の通路を使い、くれぐれも人目に付かぬよう注意するのだ」
「かしこまりました。マッツオ様」
マッツオ様はそう言って先にお部屋から出て行かれた。
当然だけど、私の存在は宮殿の中でもごく限られた人にしか知らされていない。王立図書館に入る際は、他の女性司書と同じ職衣を着用して入り、途中から目隠しをされてる。
出て行くときも同様に目隠しをさせられ、手を引かれるがままに歩いて行くと外にいて、目の前に馬車が待っているのだ。
帰りの馬車はいつもひとりで乗る。
御者の人とは会話を交わしたことがない。いつも同じ人だから、きっと私の秘密を知っていて余計な口を利かないように言われているのだと思う。
いつの間にか黄昏時になっていた。赤々とした夕日と黄金色の空がとても綺麗だ。気持ちのいい風も吹いている。
「ごめんなさい、街でお買い物をしたいの。途中で降ろしてもらってもいいかしら?」
馭者の男性はこちらを一瞥した後、軽く頷いてくれた。
風に当たって歩きたい気分になっていた。
ドリゼラ・トレメインと王妃シンデレラ様、今日から私は2つの顔をもってこの街で暮らしていくことになるんだ。
作者からの返信
コメントありがとうございます!
こっちの世界線、女神様だけは不在。
ふむふむ、コメント制御モードで遠慮なく、たくさん読めました ”(´・∞・` )いい感じ
今後も、このペースでジャンジャンいきます! \(´・∞・` )
作者からの返信
コメントありがとうございます!
ゆるい話が少しずつ様相を変えていきます!
また是非続きをお楽しみください!