質問ばかり

エリー.ファー

質問ばかり

 尋ねられたような気分になる。

 病と言えるのかもしれない。

 私は私の意思に呪われてしまっている。迷宮と私は同一となってしまったのだ。

 答えはない。

 応答だけが響くのみである。

 最初は、なんということのない疑惑だった。

 膨れ上がればなんということのない悲劇だった。

 もしも、私に似た誰かが同じ道を歩いていたら、私のような生き方を目指しただろうか。

 私は。

 私を見失わずに夢を追いかけることができるのだろうか。

 自問自答は私のための風見鶏である。

 打ち所の悪い悲劇がやってくる。

 もう少しだけ。

 ほんの少しだけ。

 私には質問が必要なのである。

 打ち損じた打球がヒットになっただけである。往々にして問題はその近くに転がっている。

 話題が欲しい。

 私のための言葉が必要だ。

 社会の中に私の椅子はあるのだろうか。あったとして、皆が私に座って欲しいと思っているのだろうか。

 平仮名が詰め込まれた夜と漢字が散乱している芸術では、あなたと私の違いを明確に語ることはできないだろう。

 真っ白がなくなる。

 黒が増えていく。

 水色がもう少し必要だ。

 青色が攻めてくる。

 黄色が泡立つ。

 銀が銀河に近づいていく。

 私の声を真似る星が、私を殺しにやってくる。

 完全に息の根が止まった時。

 心臓の音が聞こえなくなった時。

 私は私のことを信じなくなるだろう。

 その瞬間に、私は私の可能性を私以外の人に語ることができるようになるはずだ。

 昭和が終わり、平成も潰えて、令和がやって来た。

 もう、間もなく。

 不要であると烙印が押される。

 残念なことに、考えを巡らせるために積み重ねた時間に意味はなくなってしまった。

 さようなら。

 質問によって見える世界があると信じた信者共。

 さようなら。

 星々の輝きによって表現されるすべてよ。

 さようなら。

 君の笑顔のために命を燃やした私よ。

 さようなら。

 さようなら。

 さようなら。

 滅相もない。

 食塩。

 胡椒。

 花椒。

 ケチャップ。

 味噌。

 みりん

 マーガリン。

 日本酒。

 胡麻油。

 パセリ。

 フライドガーリック。

「質問をさせて下さい」

「質問は、この世で最も尊いものだ」

「質問の価値とはなんですか」

「質問することでしか得られぬ快感だ」

「質問とは人間の形をした武器であると思います」

「私も、そう思います」

「しかし、繰り返された質問に価値はありませんよね」

「ないでしょうね」

「ただ、繰り返されたとしても質問が持つ本質的な価値が地に落ちることはありませんよね」

「その通りです」

 質問でしか分からない世界の構造である。

 夢の中でしか、触れられない魂の会話である。

 質問する権利が奪われた状態で、私たちの影は霧散してしまうだろう。

 勘違いをしてはいけない。

 魂の問題だ。

 勘違いから物語を作ってはいけない。

 質問の精度が鈍ってしまう。

「怒りが襲い掛かる」

「悲しみに暮れるしかない」

「優しさなど無意味だ」

「我慢はほどほどに」

「今、私は何になろうとしているのだろう」

「質問者か、回答者か」

「あぁ。きっと両方だろう」

「悲しいね」

「少しだけ、自分を好きになれそうだよ」

「でも、質問に答えなければなりません」

「そう。そういうことだ。質問からは逃れられない」

「でも、答えない権利はある」

「言い訳だよ」

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