プロローグ
人間界の今
人間界の町。フラッハライスフェルトシュタットは今日も多くの人が行きかい。にぎわっていた。
町の様子からは、ここ最近大きな戦いがあったようには微塵も感じない。
実際。戦いに関わっていなかった町の人は何があったのかを正確には理解せず。今この時を過ごしているだろう。
しかし、少し違うところを覗いてみると――。
「いででででぇぇぇ」
「治療が終わるまで我慢してください」
「もっと優しくしてくれー」
「次の人ー」
「こっちの人重症。先に」
「俺を先に見てくれー」
「元気な人は待っていてください」
多く怪我人が運び込まれているところもあった。
しかしここは病院ではなく。臨時に作られた治療場。町の人が目にすることはほとんどんなかった。
そして、病院ではないため。治療に当たっている人は、秘密裏に集められた人たちで、数が少なく。まるで今はここが戦場のような状態となっていた。
なぜ病院で診ないのか。
答えは簡単。
何もできずにただ戦いから逃げてきたなど言えないからだ。
そしてそれは国王からの命令により厳重に情報が漏れないようにされていたので、わざわざ人目に付かないところに臨時の治療場を作っていたのだった。
ところ変わって、国王城。
ここでは重い空気に一室が包まれていた。
「何がどうなっているんだ」
頭を抱えつつ。情報を整理しているのは、ベレンジャー・ベルナルド。元王であり。今は後ろから王である息子を支える父である。
「――どこかから情報が漏れていた――いや、それは……」
そしてその隣で同じように、考え込んでいるのはフィンレー・ベルナルド。人間界の王であり。勇者だ。
2人が何故このような空気の中に居るのかというと。計画が全く計画通りに進まず。むしろ。大敗と言ってもいい状況だったからだ。
今のところ町の人にはこの情報が一切漏れないようにしているため。問題ではないが。でも大敗。今頃は魔界の一つを新たに得ているはずだった。
失敗するはずがない作戦だったが――現実は失敗。いや、失敗と言っていないので失敗はしていないということになっているが――である。
「フィンレー。どうする」
「――今は体制を整え。敵の状況をしっかり再確認する必要があるかと。あれほどの魔術を使うものが――複数もヴアイゼインゼルに居るとなると――得ていた情報と違いすぎます」
「うむ。いつの間にか魔族が力をつけていたか」
親子の話はそのあとしばらく静かに続いた。
その後自室に戻ったフィンレーは彼女と接触するために秘密裏に動き出すのだった――。
「次こそ――」
彼女との夢をかなえるため――フィンレーはまた動き出した。
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