ユーゲントキーファーの人々
4-1 心配
ミア・フローレス。
ユーゲントキーファーの駅近くでお店を開いている女性だ。
ミアのお店は魔界でも人気のお店で多くの人が日々利用している。
さらにミアはいつも穏やかで、誰に対しても優しく。そして店内もいつも花の良い香りがしているため。町の人はみんな癒されにミアのお店へと来ている。
――特に男性の多くがミアが独身ということもありアタックをしようとしているらしいが――今のところ成功したものはいないとか。そもそもミアのオーラに負けるとでもいうのか。アタックすらままならないとか――。
ある意味不思議な女性でもある。
そんなミアはここ最近町のこと――この魔界のことで悩んでいた。
同じ魔族の人何故攻撃しているのか。追い込んでいるのか。今のこの国のやり方はわからない――と。
そしてこのことに関しては、一番の友人とでもいうアイザックにも相談をしたりしていた――というかしたところだ。
◆
『――いっそのこと私行こうかしら』
『――――――――――どこへ?』
アイザックの表情はミアが今からいうことがなんとなくわかってはいるが――一応確認という様子でミアを見ていた。というか、できれば今その言葉は言わないでほしい。とでもいうような願いがあるような表情をアイザックはしていたが――。
『そりゃ、ヴアイゼインゼルへ』
ミアは特に悩むこともなく。すんなりと答えた。
その際にミアのお店に居た他のお客さんが少しだけざわついたが――このお店にミアの敵となる人は居ない。
そのため。みんな聞き間違え。または聞こえなかったふりをするかのようにすぐにそれぞれの食事や。雑貨を見ていた人は雑貨を再度見たり。宿を利用している人はそそくさに自分の部屋へと戻っていった。
そんな感じでミアのお店の中は、一瞬だけざわついたが――すぐにいつも通り。となったのだったが。
『………………は、はっ。はいっ!?!?』
ミアの話を聞いていたアイザックが一番驚いてしまったため。2度目のざわめきが起こったのだった。
でもここはミアのお店。再度となるがミアの敵は居ない。そのため2度もざわついたが。すぐにいつも通りの店内。静かでよい香りのする店内へと戻っていたのだった。
「ちょちょ。声が大きいってか。今その話題はこの町ではやばいから!」
声のボリュームを抑えつつアイザックがミアに声をかける。
しかしミアは何とも思っていない様子で――。
「アイザックさん」
「――うん?」
「友人の安否が不明になったらアイザックさんならどうする?」
「えっ。そりゃ――心配だし。探しに行くだろうな」
「それ。じゃ。お店閉めちゃいましょうか」
「……」
ミアの言葉にアイザックの目が点となった。
そしてそれと同時――いや、ワンテンポ置いてから――。
「「「「「「――――はい!?!?!?!?!?!?!?!?!?」」」」」」
ミアのお店に居た人がミアとアイザックの方を見つつ叫んだのだった。
「まあ聞こえちゃった?」
しかしミア本人は特に聞かれたことを気にしている様子はなかった。
むしろ――いい感じに事が進んでいる。よしよし。といった表情にも見えなくもなかった。
「皆さん。今のは秘密でねー」
すると、ミアがみんなの方を見つつ。スマイル――ミアの笑顔に男女問わず全員がやられた。
「「「「「「――はい」」」」」」
まるで口裏を合わせたかのように全員が返事をして、再再度みんながそれぞれの方へと視線を戻した――でもさすがにちらちらとミアとアイザックを見る物が今回は居たが――。
「――おいおい。勘弁してくれよ。もしこのことが漏れたら――ミアは有名人なんだから。おまけに魔王城のほぼ目の前のところでよー」
「アイザックさん。ちょっとだけ時間稼いでくれたらいいから。あとは勝手にするから。大丈夫よ」
「話を聞けよ!」
「あっ、アイザックさん。心配してくれてありがとう。でも、さすがにアイザックさんと一緒だと目立っちゃうから、今回は私1人で何とかするわ」
「だから話を聞け!」
「まあ」
アイザックの叫び声により再々再度くらいになるが。店内がざわついたのだった。
「ミア。今はまずいって。目立つ。少し時を待ってだな――」
「大丈夫。そんなすぐにはできないわよ」
「……心配しかないぞ」
◆
それから数日後。
ユーゲントキーファーのミアのお店。フローレスのドアには『長い間ありがとうございました』というメモだけが張られたのだった。
それを見つけた常連の人たちが騒ぎ出したのは言うまでもない。
そしてミアが行方不明になったことはすぐに多くの人の耳に入ったのだった。
もちろんそれは常連だったアイザックの耳にも――。
「めちゃくちゃ行動早いじゃねーか!」
魔王城で勤務中だったアイザックがミアのお店のことを耳にして叫び。少し周りをざわつかせたのは――いうまでもないだろう。
ミア・フローレス。ユーゲントキーファーの町から姿を消した。
なお、この段階ではミアが町の外に出たという情報は――なかった。
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