姉妹バトル勃発?

2-1 甘えたいお年頃?

 ヴアイゼインゼルの町が少しずつ元の日常を取り戻しつつあるある日のこと。


「……」


 ルーナは魔王城の離れからとある光景を面白くなさそうな表情で見ていた。


 ちなみに、日常を取り戻しつつと言っているが。ヴアイゼインゼルの町のまだ遠くは瓦礫の山のままとなっている。

 今のところ綺麗になっているのは、魔王城の離れ周辺だけだ。

 でも魔王城の離れ周辺には今まではなかったものが多くできていた。

 その1つがヴアイゼインゼルの町の人が住む新しい家が建ち並んだことだ。

 今までの魔王城の離れは町から離れていたこともあり。建物内から町の様子。家がはっきり見えることはなかったが。それがはっきり見えるようになったのだ。あと、数日前からお店などもできてきたらしく。少しずつ町が戻っている。それに伴い魔王城の離れは以前よりにぎやかになってきていた。

 町が復興していくのはそれはそれはとてもいいことだ。いいことだが――今のルーナは町のことではなく。ちょうど今いる場所から見えているとある施設をジーっと見ていた。

 

「ふふふっ」


 そして今ルーナの後ろ。部屋の入り口でそんなルーナを見てニヤニヤしているソフィが居るのだが――ルーナ本人はソフィの存在に気が付いていなかった。


 この後ルーナの着ていたワンピースが派手にめくり上げられ。ルーナが悲鳴を上げるまであと21秒――だが。こちらはいつも通りの時間が流れているのでそっとしておこう。

 そうそう、現在のルーナは実は勉強の時間だったりするが。今のルーナは勉強を1人でしていた。いつも隣にいてくれた彼はというと――。

 それがルーナの見ている先にあった。


 するとぶわっとルーナの着ていたワンピースがめくれ上がり――。


「――勉強サボって締まりのないお尻をこちらに向けているとは。叩かれたいのですね」


 バシン!


 ルーナのお尻にそこそこ強めの衝撃と良い音が部屋に響く。


「ほぎゃあああああ!?!?馬鹿ソフィ!!!!なにすんのよ!!!!」

「油断しきっているので叩きたい放題ですね」


 バシンバシンバシン。


「ちょ、きゃ。ちょっと!!やめんか―――!!変態!!」

「ほらほら」

「ってか。ちょ。こんなことより仕事しろ!」

「ならルーナ様は勉強してください。また魔術の暴走でもされたら。ですからねー。セルジオ様が居ないとこのだらけよう、ほんとまあ」

「うっさい!それはもう大丈夫だから!」

「どうでしょうね?」

「あー、もう!そこ!黙る!」

「ふふふっ」

「笑うな!」


 魔王城のとある一室も大変にぎやかだった。


 ◆


 ところ変わって、ルーナが見ていたところに場所は変わる。

 ここは魔王城の離れ内に新しく作られた場所だ。平屋でそこそこの広さがある建物だ。何をする場所。何の建物かというと。孤児院である。

 ヴアイゼインゼルの町が攻撃を受けた際。多くの犠牲者が出た。そしてその中には親を亡くした子が多くいた。そのような子供たちを集めた場所だ。

 この場所を任されているのは、高齢のおじいちゃんおばあちゃんが中心。そして、その高齢のおじいちゃんおばあちゃんをさらにまとめている。この孤児院をまとめているのが――セルジオだった。


「――うん?何か悲鳴が聞こえたような――気のせいか」


 そのセルジオはというと。今何か声が聞こえたような――と、思いつつ魔王城の離れを一瞬見たが。


「お兄ちゃんお兄ちゃん。こっちこっち」

「あっ、ごめんごめん」


 すぐに小さな女の子に声をかけられたセルジオは小さな女の子の方を見た。

 そして小さな女の子に手を引かれて――みんなが居る孤児院の建物近くへと移動していった。


 どうしてセルジオが孤児院の担当となったか。

 それはセルジオがルーナの世話係。主に魔王城内の雑用しかしていなかったということもあり。余裕があったから。

 あと――もう1つ。あのヴアイゼインゼルの町が攻撃されたときのこと。セルジオは1人の少女を助けた。その少女が――。


「あっ、セルジオお兄ちゃん」


 すると、再度セルジオを呼ぶ声が聞こえてきた。

 小さな女の子に呼ばれて孤児院の近くへとセルジオが行くと。建物内から姿を現したのは金髪碧眼の少女。

 ルーナより少し身長低め。多分ルーナより年下だろうと思われる見た目。あと、現在も詳細不明の人間と魔族のハーフの謎多めの少女である。ちなみにまだ名前すらもわかっていない。けれどセルジオたちのところで元気に生活しており。今では体力などもしっかり回復し。元気な少女となり。またこの孤児院のお手伝いとして、みんなのお姉さん的ポジションとなっている。

 ということで、これがもう1つの理由。本来は金髪碧眼の少女が誰も知り合いがいないところに放り込まれたような状態だったので、それを心配したセルジオがソフィに相談して、自分も孤児院を手伝いつつ。金髪碧眼の少女が馴染めるよう。ということで今の状態となったのだった。

 

「あっ、セルジオさん。ちょっと後でよろしいでしょうか?」

「あっ、はい。あとで伺います」

「セルジオー。見てみて」

「セルジオお兄ちゃん私が先ー」

「セルジオー」

「セルジコー」

「お腹空いたー」

「はいはい。喧嘩しないで」

「おばあちゃん」


 そしてここ最近のセルジオ。孤児院に居ると大変人気となっていた。

 孤児院に居れば常に声を掛けられまくっている。時たま間違った名前で呼ばれるのは――仕方ない。小さな子も多くいるからだ。

 そうそう、後、高齢のおじいちゃんおばあちゃんが主に面倒を見ているということを言ったが。ここは魔界。人間界で言うと――それはそれは本当に超高齢のおじちゃんおばあちゃんが子供の面倒を見ているという状況なのだが。魔族の高齢のおじいちゃんおばあちゃん数百歳でもまだまだ元気。下手をすると子供たちと一緒に走り回っている人も居たりするくらいだ。

 とまあ、そんなにぎやかなところに居るセルジオ。気が付けば子供に囲まれているような生活。そして魔王城の離れに戻ったあとも金髪碧眼の少女が居るため。ここ最近のセルジオは忙しい日々を過ごしていた。

 

 ◆


「小さな子にやきもちのルーナ様グッドです」


 そしてここはまた魔王城の離れ。

 ちょうど孤児院の様子が見える部屋。なのだが――今は孤児院の方を見ている者はいなかった。

 なぜなら――。


「ちょ、意味わかんないこと――言ってないで――きゃっ。し、仕事戻れ!」

「ならルーナ様は早くパンツ丸見え状態から逃れては?ちなみに今日は――」

「そんな報告いらないわよ!ってか、なんなのもう!って――前が見えないのよ!馬鹿!やめろ!!!!馬鹿ソフィ!!!!ちょっと!」


 こちらはこちらでにぎやかな生活?が戻って来ていたから。いや、特に変わっていないかもしれないが――とにかく。現在ルーナは必死にソフィの魔術から逃げ出そうとしていた。しかし、油断していたルーナはすっぽりとソフィの風の魔術に飲まれ――今はワンピースが頭上までめくれ上がるという。なかなかな状態となっていた。


 なおこの後、何とかルーナはソフィの魔術から抜け出すことに成功するが――そこそこ部屋が散らかることになり。子供たちの相手をして疲れた様子のセルジオが帰って来るなり――ため息をつくまで数時間だったりする。


「セルジオ様に私も甘えたい!と言えばいいものを。離れたところでうじうじ見ているだけとは」

「へ、へ。変なこと言うな!ってか――ちょ、ぬ、脱げるから――」

「いっそのこと脱いだら前が見えるのでは?」

「馬鹿!って、ぎゃあああぁぁぁ――――」


 再度ルーナの悲鳴が魔王城の離れに響いたが――聞こえたのは魔王城の離れ近くで作業をしていた少しの人くらいだったとか。

 でも、いつものこと、と。もうわかってるヴアイゼインゼルの町の人だったりする。

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