5-2 早々と失敗
ここはヴアイデの町の外れ。すでに日は暮れ暗くなっていた時の事。
ヴアイゼインゼルへと先行で向かうために送られた国王軍一部が集まっていた。数としては全部隊の3分の1弱。それでも数千を超える規模だ。魔王軍からしてみるとすべての戦力を集めても足りないという数が集結していた。
「いいか。この後来る本隊。フィンレー様の為にできる限り先にヴアイゼインゼル町を先に制圧するぞ!」
「「「「おおっ!」」」」
「よし。行くぞぉー!」
陣頭指揮を執っていた男性の声とともに部隊が動き出した。
――まさにその時だった。
目の前の暗闇から突然何かが迫って来た。
「――うん?なんだ?」
陣頭指揮を執っていた男性は、何か魔力?のようなものを感じすぐに足を止めた。そしてそれと同時だった。
ブッ――シャン!
男性の正面から凄まじい勢いで風――と、ともに水が襲ってきたのだ。
「「「「ぐあぁぁっ」」」」
先ほどまで威勢よく陣頭指揮を執っていた男性はじめ。その男性の後ろにいた数百人の国王軍部隊が後ろへとずぶ濡れになりながら吹き飛ばされる。もちろん陣頭指揮を執っていた男性はじめ多くの人が何が起こったのかわからない状況だったが不意に誰かが叫ぶ。
「敵襲!」
後方で、水と風を受けなかったものが慌てて魔術を発動し守りを固める。
「隊長!隊長!」
前の方では、致命傷とはなっていなかったが。それなりの威力のある攻撃を食らい意識を失い地面に倒れている人が多数。もちろんその中にはもろに攻撃を受けた陣頭指揮を執っていた男性も含まれていた。
指揮するものがいなくなった部隊は動くことができない。とにかく今は守りを固めていた。
ゴゴゴゴゴゴッ……。
すると今度は地面が揺れ出した。立っている人がわかる揺れ。足元が付き上げるように揺れ出す。
「な、なんだ!?」
「地震か?」
「いや。今攻撃を受けたんだ。敵の攻――」
ゴゴゴゴ……ドン!
「「「うわぁぁぁぁああ」」」
揺れとともに何人もの人がざわめき出した瞬間だった。彼らの居た場所から数百メートル先でいきなり真っ赤な火柱が地面から噴き出した。それはまるで壁のように国王軍が魔界へと入るのを拒む形で噴き出している。
すると揺れを感じたのか。多くの意識を失っていた人も何事かと目を覚まし――。
「ぬわっ――て。てててっ撤収!撤収しろ!死ぬぞ!早く行けー戻れ!撤収!!馬鹿!早く進め!」
目を覚ました陣頭指揮を執っていた男性が恐怖の表情で叫んだ。
そして足をもつれさせながらも引き返しだす。それを見たその他の人も慌てて意識を失っている人を担いだり。もちろん目を覚ましたばかりのものは何が起こったのかわからずとにかく周りに付いて行くなどし。先陣を切っていた先行部隊は大慌てで本隊の居るヴアイデの町の方へと引き換えしていったのだった。
◆
それからしばらく。
「敵襲です。こちらの奇襲行動読まれていると!敵の数不明。しかしかなりの数と!あれほどの魔術。数千は超える。魔王軍の可能性です!」
それからしばらく。先行部隊からの報告を受けた本隊の陣頭指揮を執っていた勇者フィンレー・ベルナルドは魔王軍が出たとの事で、一時撤退の指示を部隊に出したのだった。
「……何故だ。何故バレた――リリーからの報告ではヴアイゼインゼルには無能しかいない。だから落とすのは簡単だったのに――何故だ。何故バレた――」
この時不意打ちを狙った国王軍がヴアイゼインゼルへとこの時到着することはなく。ヴアイゼインゼルへの侵略一時見合わせとなったのだった。
なお。国王軍が攻めてきたことを魔王軍は一切知らない。そもそも不意打ちで攻撃を仕掛けられていたことすら知らなかったのだった。
そして国王軍は、まさかたった1人に追い返されたとは――知る由もなかったのだった。
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